2018/02/10

御墨付きの技

先週フランス第二の都市のリヨンに行ってきたのだ。
 「ガストロノミーの街」と言われるだけあって、おいしものがいっぱい!
 かなり食い倒れのたびになったよ(笑)
そんな中、よさそうなお店を選ぶときに出くわすのが、「MOF」。
 和訳では、「国家最高職人章」と言うらしいよ。

 「Meilleur Ouvrier de France」のことで、「フランス文化の最も優れた継承者たるにふさわしい高度な技術を持つ職人に受章されるもの」なんだって。
フランス文化省が所管している制度で、受章者は、フランスの大統領官邸であるエリゼ宮で授与を受けるんだって。
大変な栄誉なのだ。
日本には文化勲章があるけど、 かなりの大御所がもらうイメージだよね。
だけど、フランスのものはけっこう毛色が違うようなのだ。

まず文化勲章は文化庁で文化功労者の中から候補者を選定していて、受賞分野も、科学、芸能、美術、文学、音楽など伝統的な文化、というものが多いよ。
文化功労者自体は、将棋やアニメ・マンガ、服飾、スポーツとジャンルが広がってきているので、文化勲章もそのうち拡大するかもだけど。

MOFは、フランスの文化制度だけあって料理分野が有名なんだけど、工芸やガーデニングなど、かなり幅広い部門があるのだ。
かつ、芸術家というよりは、熟練の、或いは、神業の職人を顕彰する制度。
 日本で言えば、戦前の帝室技芸員の方が近いのかも。
 帝室技芸員も、美術界の大御所が選ばれていたけど、漆工、彫金、陶工、七宝、刀剣、篆刻、工芸など、職人も選ばれていたのだ。
今でも皇居東御苑の三の丸尚蔵館に行くと その優れた作品が見られるよ。
日本の優れた美術品・工芸品の売り込みの目的もあったと言われるのだ。
万国博覧会に作品を出すのと同じだね。

ところが、ここからがもっと違うのだ。
それは、MOFは認定制度で、三年に一度のコンクールを勝ち残った人が得られる称号であるということ。
まさに料理部門では 「料理の鉄人」みたいなことが行われているわけ。
実際には、実績を持っている人だけが書類審査をクリアできて、その後筆記試験と実技審査があるようなのだ。
フランス文化の正当継承者という意味合いもあるので、フランス語の筆記試験を通らないとダメ。
それでも、数人の日本人は受賞できているんだよね。

難関をくぐり抜けると、料理部門なら、フランスのトリコロールの襟のコックコートが着用できるんだって。
そう言えば、リヨンの偉人、ポール・ボキューズさんもそれを着ていたっけ。
驚いたことに、リヨンにはけっこうMOF取得者のお店があるのだ。
さすがだいにのとしというか、職の都というか。
やっぱりリヨンは食い倒れの街なのか。
街の雰囲気だけで言えば、パリの方が大阪っぽいけどね(笑)

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