2018/02/17

伝来の墨

パリにはあまりおいしいイタリアンはなんだけど、お気に入りのところがあって、そこはサルデーニャ料理の店なんだよね。
東京でもあまり食べられないような料理もあって、よいレストランなのだ。
で、そこの名物料理はいくつかあるんだけど、ボクのお気に入りは、カラスミ(ボッタルガ)のパスタ。
粉末状に下ろしたものと薄くスライスしたものと両方が入っていて、濃厚な魚卵のうまみが味わえるよ♪

日本のカラスミと言えば、長崎産が有名。
肥前のカラスミは、越前のウニ、三河のコノワタ(ナマコの内臓の塩辛)と並んで日本三大珍味とも言われるんだ。
国産カラスミだと、お茶漬けに少し入れたり、薄くスライスしたものを大根と一緒に食べたりするけど、高級品だよね!
イタリアではそこまで高級な感じではないようだけど。
手のかけ方かな?

日本でのカラスミの原料は多くの場合はボラの卵巣。
傷つけないように丁寧に水洗いした後、塩を塗りつけて数日塩漬けにするのだ。
それを水洗いしてから真水につけて塩抜き。
ここでの塩抜きのあんばいは味の決め手になるそうだよ。
塩抜きしたら板の間に挟み、それを斜めに立てかけておいて一晩水抜き。
その後陰干しして10日間ほど熟成させるんだって。
熟成の最中にも、表面に浮き出る脂を拭き取るそうだから、手がかかっているのだ・・・。
それで高級なわけだ。

実は、カラスミは地中海が本場。
ギリシアやエジプトで魚の卵巣を塩漬した後に乾燥・熟成したものが作られていて、それが中国(当時は明朝)経由で安土桃山時代に本に伝来したとか。
大陸から伝来したのはサワラを使ったもので、今でも香川ではサワラのカラスミを作るらしいけど、長崎で盛んに作られるようになった際、豊富に漁獲されるボラが使われるようになったみたい。
「カラスミ」という名前も、肥前唐津の名護屋城を訪れた太閤秀吉公がこれは何かと訪ねた際、長崎代官の鍋島氏が、形が似ているからと「唐墨(中国の墨)」と答えたことによる、なんて言われているよ。
実際、日本のカラスミは熟成が進んでいて中身はオレンジ色、表面が茶褐色で、墨に似てなくもないのだ。

一方、イタリアで作られる地中海産のカラスミは、ボラだけでなく、マグロなんかも使われるみたいで、色も黄色っぽいんだよね。
材料の違いもあるのだろうけど、製法の違いも大きいんだろうなぁ。
なにより、日本のものほどは高くないので、そこまで手をかけていないはずなのだ。
たぶん、形を整えたりとか、表面に浮き出る脂を拭いたりとか、そういうのがないんだろうね(笑)
サルデーニャの特産品なんだけど、おとなりのシチリア島でも名物。
ボクもシチリアでマグロのボッタルガを使ったパスタを食べたけど、濃厚でおいしかった♪

ちなみに、台湾にもカラスミはあって、基本はボラのもの。
膜を破って表面をあぶってからスライスするみたい。
でも、台湾にはボラだけでなく、もっと巨大なアブラソコムツのカラスミ「油魚子」というのがあるのだ。
アブラソコムツは身に人間が消化できない脂肪分(ワックスエステル)が大量に含まれているため、食べるとひどい下痢をすることが知られている有害魚。
でも、その身は全体が大トロのようでおいしいとも言われているのだ。
日本ではアブラソコムツを食用に販売することは禁止されているんだけど、台湾ではその卵巣を使ってカラスミを作るみたい。
はたして、それは食べても大丈夫なんだろうか・・・。
やっぱり、大量には食べてはいけないのかな?

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