2018/09/01

見分け方

マドリッドのプラド美術館に行ってきたのだ。
世界三大美術館のひとつ。
すごい規模だよね。
で、ここの特徴として、敬虔なカトリック国であるスペインのお国柄を象徴してか、宗教画が多いのだ。
でも、キリスト教文化にあまり普段触れていない日本人からするとわかりづらいことも多いんだよね。
特に、聖人の絵の場合、それが誰で何をした人なのか。

そのときにヒントになるのが「アトリビュート」と呼ばれるもの。
西洋美術の場合、神話の登場人物や宗教画の聖人などは、その人の特定につながる「アイテム」と一緒に描かれていることが多いんだ。
もともと誰も顔や姿を見たことがないわけで、そういうのがないと区別がつかないのだ。
逆に、その「アトリビュート」を見れば、その絵が誰の絵なのかがすぐにわかるというわけ。
便利なシステムなんだよね。

例えば、十二使徒の場合、ペドロは多くの場合「天の国の鍵」を持っているのだ。
福音書記者ヨハネなら、ドラゴンの入ったカップを持っているよ。
聖人で言えば、竜退治で有名な聖ゲオルギウスは竜と一緒に、ライオンの足からとげを似てあげたと言われる聖ヒエロニムスはライオンと一緒に描かれるよ。
アレクサンドリアの聖カタリナは壊れた歯車と剣が一緒に描かれるんだけど、これはひどい話で、歯車にくくりつけて拷問されそうになったときに奇跡が起きてその歯車が壊れたので、剣で斬首されたのだ・・・。
で、その伝説をもとに、聖カタリナを描くときは壊れた歯車と剣を一緒に描いているんだ。
なんだかひどいよね。

殉教している聖人の場合、その殉教に関係したものがアトリビュートになることが多く、体を拘束されて無数の矢で射られた聖セバスティアヌスは、「矢鴨」のように必ず体に矢が刺さった図象で描かれるよ。
十二使徒の一人、ペトロの弟にアンドレは、X型十字に貼り付けになったんだけど、自分でそれを持っているのだ。
同じく十二使徒のバルトロマイは、皮剥の系で殉教したと言われていて、その皮剥に使われたナイフと皮を持って描かれるよ。
なんだかグロいはなしだけど、絵画を信者に見せながら、その聖人がどういう人でどういう功績があったのかというような話をする場合には、その方が好都合なのかもね。

実は、これと同じような半紙が仏像・仏画にもあるのだ。
仏像・仏画も素人目には同じように見えるんだけど、手の「印相」の形や、持っているものである程度区別がつくんだよ。
明王はたいていの場合鬼のような怖いかををして、筋骨隆々になっているんだけど、弓矢を持っているのか、金剛杵を持っているのか、剣を持っているのか、手は何本か、三ツ目か、などなどの要素を組み合わせて、それがどの明王か特定するのだ。
でも、実は必ずしも「これ」という決まりもないようで、推測の域をでないこtもあるらしいんだけど。

一方で、ある地域で古い仏像・仏画が見つかったとき、それが「誰」であるかは重要な意味を持つんだよね。
キリスト教の聖人も「○○の守護聖人」とかいって特定の職業や事物、都市の「守護神」になっているんだよね
仏教の世界も同じで、それぞれの「神」に特定の御利益というのがあるので、当時の人々が何を求めて信仰していたのか、という情報になるのだ。
なので、仏像・仏画においてもそれが「誰」なのかを特定するのは結構大事なことなんだよ。
アトリビュートくらいわかりやすければよかったんだけどね。

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