2019/02/16

光あれ

フランスに来て2回目の歯医者にかかっているのだ。
東京で作った高級な歯のクラウンが割れてしまったんだよね(>_<)
なかなかこわれない、というから高い買い物をしたのに・・・。
でも、割れてしまったものは仕方ないので、現在修復の最中。
で、こういうことがあると、いろいろと歯科治療について調べちゃうんだよね。

そこで気になったのが、レジンによる修復法。
日本では公的保険適用なんだけど手間がかかるということであまりつかわれないみたいなんだけど、欧米では一般的のようなのだ。
いわゆる「銀歯」はアマルガム合金を歯の穴につめたものだけど、その詰め物をプラスチックに代えたもの。
見た目が白くできるので、修復の跡が目立ちにくいんだ。
それで好まれるみたい。

つめものに使うのは、コンポジットレジン(複合材合成樹脂)で、とろっとした液体状のものを穴に流し込み、その後、紫外光を当てると固まるという仕組み。
光を当てるまではかたまらないし、熱などをかけて乾燥させる必要もないので、わりと簡便に固められるのだ。
それも魅力の一つ。
ただし、紫外光を当てる装置が届かないところだと使えないんだよね。

ここで使われるレジンは光で固まる光硬化樹脂。
特に紫外線で固まるものなので、紫外線硬化樹脂というものが使われているよ。
固まる前はモノマー(一つ一つの分子が独立した状態)で、光を当てると重合してポリマー(多くの分子がくっついて大きな構造を作っている状態)になるのだ。
多くの場合、不安定な炭素・炭素二重結合があって、そこにエネルギーの比較的強い紫外線が当たると、その二重結合のうちの一本がきれ、となりの分子の同じようにきれたところと新たな結合を作ることでつながるのだ。
もちろん、もとのように自分の中で二重結合が復活することもあるけど、確率的に、まわりにいっぱいフリーの結合の切れている分子がいるので、他の分子とくっつくことが多くなるよ。
こうして一つの大きな分子につながっていくのが重合反応。

紫外線硬化樹脂の場合、この結合の切れ方に大きく分けて二通りあるのだ。
一つは、両方の炭素がそれぞれ電子を一つずつ持って電気的な中性な状態できれるもの。
これはラジカル型と言うよ。
電子対になっていない中性的な電子は非常に不安定で反応性が高く、似たようなラジカルを見つけるとすぐに反応するのだ。
もう一つは、片方が電子を持っていってしまって、2:0の割合で電子が分かれてきれい場合。
つまり、電子対をそのまま持って行ってしまうのだ。
切れ方として、真ん中できれいに切れるのか、片方は端から切れてしまうのかの違いかな。
この場合、電子対がある方はわりと安定的で、まわりの水素イオンと水素結合して電気的に中性になるんだけど、電子を全てとられてしまった方はとても不安定。
負の電荷を持っているものとすぐに反応しようとするのだ。
で、たまたまとなりに別の分子で電子対ごと持っていった切れ端が来ると、そこに新しい結合を作ってしまうわけ。
このときは、反応の中心が正の電荷を帯びているので、カチオン(陽イオン)型と呼ばれるよ。

いずれにしても、二重結合のうちの一本が切られ、そのままでは不安定なので、近くにいる同様に切れたものとくっつくという寸法。
紫外線を当てるとどんどん切れていって、すぐにまわりの同じようにきれたものとつながっていくのだ。
歯の修復に使うレジンの場合は十数秒ほどで固まるよ。
歯の型を取るときよりもはるかに楽なのだ。

でも、このレジンにも弱点はあるんだよね。
それは、割れやすいことと着色しやすいこと。
つまり、もろくてすぐに見た目が悪くなるのだ・・・。
でも、高くないものなので、定期的に入れ替えればいい、という意見もあるよ。
あまりに詰め物が固すぎると歯のかみ合わせに悪いから、詰め物の方が摩耗する方がいいんだよね。
それと、銀歯(アマルガム修復)の場合、どうしても水銀を使っていてそれが唾液中に微量に溶け出すという問題があるし、それ以外の金属イオンも溶け出して金属アレルギーの原因にもなるから、レジンの方がその点でも優れているのだ。
でも、日本だと高価なセラミックのクラウンを勧めてくるんだよね。

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