2019/05/11

パリの道

日本の住所表記は「街区方式」という世界的には珍しいもので、街の名前の後に丁目と番地が続くのだ。
つまり、まず、「町」として一定の範囲が指定され、その中で番号が振られているわけ。
「町」の名前さえ聞けば大体どのあたりに住所があるのかがわかりやすいのが特徴。
でも、「町」の中での丁目と番地の振り方には規則性はあるとは言え、わかりづらいんだよね。
特に昔ながら狭い路地があるところだと特に。
でも、この住居表示が一般化する前は、登記簿と同じ地番で管理していたので、もっとわかりにくかったんだよね・・・。

一方、フランスをはじめとして、欧州各国は基本は「道路方式」。
建物の正面玄関が接している道路の名前と番地で指定するのだ。
「○○通り××番地」という感じ。
この場合、「道路」の長さにもよるんだけど、住所を聞いただけではどのあたりに住所があるのかはっきりとはわかりづらいんだよね。
ま、その「道路」をずっと行けばいつか行き着くわけだけど(笑)
パリ市内の場合は1区~20区まで区割りもあるので、それも会わせるとそれなりには絞れるのだ。
でも、「町」という割と狭い範囲での指定になれている日本人には正直わかりづらい。
最寄りのメトロの駅とか目立つ建物とかとあわせて聞かないとぴんとこないんだよね。

その住所表記に使われる「道路」にはいくつか種類があるのだ。
基本は「rue(ルー)」。
これは道の両側に建物がある通りのことで、通常はそこまで道幅は広くないのだ。
フランスの場合は路駐が基本なので、日本で言うところの二車線の幅はあるんだけどね。
行き止まりになると「impasse(アンパス)」、少し広くなった広場に面しているところは「place(プラス)」になるよ。
建物の「中」を通るようなものは「passage(パッサージュ)」、これは「抜け道」という意味。
それにしても、この住所表記を維持するためには、どんな狭いものでも、すべての「道路」に名前をつけないといけないんだよね・・・。

で、広い道路になると、「avenue(アブニュー)」や「boulebard(ブールバール)」というのがあるのだ。
これらはともに街路樹が植えてあるような広い道。
「avenue」はもともと大通りのことで、語源は、ラテン語の「a(英語で言うto)」+「venue(近づく)」ということで、「~へ至る道」ということのようなのだ。
家々が並んでいる道と言うよりは、街中の基幹的な道ということなんだろうね。
パリの場合、オスマン知事による再開発後は、基本的には放射状の街路を「avenue」と呼ぶことになっているのだ。
シャンゼリゼ通りは凱旋門から放射状に伸びる道の一つなので「avenue」だよ。
江戸市中で言うと「街道沿い」がこれに近いのかな?
東京で言うと、靖国通り(旧青梅街道)、本郷通り(旧日光街道)、玉川通り(旧大山街道)などなど。

もうひとつの「boulevard」は環状の街路。
もともとは街区を囲む城壁を壊して、その跡地を道にしたところを指していたのだ。
パリの街は何度も拡張されていて、そのたびに城壁も外へ外へと広がっているんだよね。
最終的な城壁後は「périphérique(ペリフェリック)」という、パリの外周を回る高速道路になっているよ。
その内側にも古い城壁後の道があって、それが「boulevard」なのだ。
でも、現在「boulevard」と呼ばれている道の中には、必ずしも城壁があったわけではないところもあるみたい。
こういうのがややこしいよね。
東京の場合、ご存じのとおり城壁なんかなかったのでぴったりと当てはまるものはないんだけど、イメージ的に近いのは環状の主要道路だね。
内堀通り、外堀通り、外苑東通り・三ツ目通り、外苑西通り・四ツ目通り、明治通り、山手通り、環七、環八、東京外環・・・ってな感じ。

ボクが1年だけ住んだことのある米国の首都、ワシントンDCなんかは何もないところに計画して作られた都市なので、かなり「道路方式」でも住所がわかりやすいんだ。
連邦議会議事堂(US Capitol)を中心としてNE(北東)、SE(南東)、NW(北西)、SW(南西)の4つの地区にわけ、そのそれぞれで、東西方向の道はA、B、C、D、・・・と、南北方向は、1、2、3、4、・・・と道の名前を振っているのだ。
格子状の構造なので、どの地区のどの道とどの道の交差するあたり、と指定されればすぐに住所が特定できるシステムだよ。
札幌に近いのかな?
ちなみに、放射状の道もあって、それは州の名前がついているのだ。
大統領官邸のホワイトハウスは「ペンシルバニア通り1600」だよね。

ただし、これとは別に、古い地区名も残っていて、ヴァージニア州のアーリントン郡とポトマック川を挟んだ向かい側にあるあたりはジョージタウン、その先はフォギー・ボトムなどなど。
これらは植民地時代の小さい街だった頃の名残みたい。
今でも地下鉄の駅名なんかに残されているよ。
これはパリも同じで、モンパルナスだとかモンマルトルだとかはそういう古い地区名なんだよね。
「道路方式」の住所表記を使うと言っても、やっぱりそういうのがあった方がわかりやすいから残っているんだろうなぁ。

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