2019/05/04

五月待つ祭り

日本では5月1日は即位・改元の日だったけど、おフランスでは労働者の権利要求の日であるメーデー。
モンパルナスからイタリア広場までデモ行進が行われたんだけど、まじめに示威活動をしながら行進している人々の横で暴れている連中が・・・。
警官隊と衝突し、車を破壊し、発煙筒をともし、何かに火をつけ、とやり放題!
さんざん毎土曜日に「黄色ベスト」で暴れているのに、まだ暴れるか、とあきれるよ。
今回は左岸がメインだけどね。

フランスは長らく社会党が政権を担っているだけあって、メーデーは「労働者の日」として祝日なのだ。
なので、デモ行進が行われるわけ。
もともとは、欧州全域で行われていた「五月祭」が起源で、夏の訪れを祝うものなんだとか。
確かに、欧州は冬が長く、くらい時期が多いから、明るく、あたたかくなってきた5月くらいにお祝いをするのもうなづけるよ。
で、このお祭りは割と重要な位置づけだったらしく、近代に入ってからは、労使双方が休戦し、このお祭りの日だけはともに祝う、という感じになったんだって。
それが転化して、「労働者の祭り」、現在のメーデーになったようなのだ。

そのきっかけは、1886年にシカゴで行われた労働者のストライキ。
国際的な連携を持って労働者の権利を訴えようと欧州にも広がり、1890年には欧米で一体的に第1回国際メーデーが実行され、今に至るようだよ。
で、おそらく欧米の各地で労働者のデモは行われるんだけど、毎年のように逮捕者が出るのはおそらくフランスくらいではないのかなぁ。
なんか過激に暴れるんだよね。
日本はそもそも祝日でもないから、日比谷公園でデモ集会があるくらいのイメージしかないけど。

実は、欧州において5月頃に夏の到来を祝う、というのには、もうひとつ大きな意味があるのだ。
それは、麦の収穫。
古代ローマの5月祭は、豊穣の女神マイアに供物を捧げ、夏の豊穣を予祝するお祭りだったようだよ。
小麦も大麦も、基本は秋に種をまき、越冬の後に初夏に収穫するのだ。
だから初夏のこの時期のことを「麦秋」と呼ぶんだよね。
なので、5月1日はちょうど実が実り始める頃。
しっかり実るように神に祈っていたわけなのだ。
今となってはまったく関係のない日になっているような・・・。
でも、この頃の習俗も欧州各地に残ってはいるようだよ。

ちなみに、日本の場合は主に秋祭りがメインだよね。
これは稲の収穫が終わった後、神に今年収穫した稲を捧げ、来年もまたよろしくと更なる豊穣を願うのだ。
なので、「収穫祭」に当たるもので、収穫の前に豊穣を願う5月祭とは少し毛色が異なるよ。
夏祭りもあるけど、こちらはどちらかというと無病息災を願うもの。
京都の祇園祭がその最たるものだけど、かつては「御霊会」と呼ばれ、疫神を退け、健康を願うものだったのだ。
衛生状況のよくなかったむかしは夏場に疫病が流行りやすかったのがあるんだろうね。

一方、地方にこの疫病払いの習俗が広がって行くにつれ、一部では、秋の収穫に向けて豊穣を願う、というのも混ざってきたようなのだ。
米作には、梅雨と夏の台風による降雨がマストでもあり、リスクでもあったから、適度な降雨をお願いします、っていうのにちょうどよい時期でもあるんだよね。
田植えも終わり、その労をねぎらうとともに、これから上げしくなる農作業に備えることも重要だったのだ。
青森の「ねぶた」や弘前の「ねぷた」、秋田の竿灯、なんかは、夏期に襲ってくる眠気を払い、厄災を水に流す、という意味合いらしいけど、ちょうど疫病払いと秋の収穫に備える、というのが混ざり込んでいる感じだよね。

ちなみに、欧州にも秋の収穫祭はあって、果物や木の実の収穫を祝ったり、ワインやビールのできを祝ったりとそれぞれの地域でいろんなお祭りがあるみたい。
古代ローマでは、11月1日に果物の女神ポーモーナを祝う祭りがあって、リンゴをシンボルとしていたようなのだ。
これがケルト人に伝わると、ケルトにお新年祭りと習合し、ハロウィンが生まれるんだよね。
ハロウィンの方も全くもって収穫祭のイメージはなくなっているけど。

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