2019/07/13

サメにあらず

出張で東欧某国に行ったのだけど、キャビアが有名なんだって。
ま、出張で行くようなときは冷蔵が必要なキャビアは持って帰れないのだけど。
でも、一応名物ということで、一回は食べたのだ。
その際、チョウザメの肉もいただいたのだ。
これが白身でぷりぷりしていてなかなか美味。

チョウザメは、「サメ」という名前はついているけど、いわゆる軟骨魚類の「サメ」ではなく、硬骨魚類。
形態が似ているので「サメ」という名前がついているだけで、「サメ」とは全く異なる種類の魚なのだ。
ただし、古代魚ではあって、3億年くらいまえから生息しているとみられているみたい。
シーラカンスみたいなものなのか!

「サメ」の場合、えらがむき出しで、浮き袋がないので肝臓の油で浮力調節をしていて、体の構造的には「チョウザメ」と大きく異なるのだ。
でも、食べる場合のもっと大きな違いは、「アンモニア臭」。
「サメ」は、体液の浸透圧の調整に尿素を使っているので、鮮度が落ちるとそこからアンモニアが発生するんだよね。
それでものすごく身がくさくなるのだ。
そのため、鮮度が悪くならないうちに加工する必要があって、多くの場合、かまぼこやはんぺんのような練り物に使われたり、煮こごりにされたりするのだ。

でも、アンモニアは発生して臭くなるけど、それは腐っているわけではなく、むしろ日持ちはするので、日本の内陸部では臭いを我慢しつつ食べる習慣が残っているんだよね。
栃木の「モロ」なんかがまさにそうだよ。
腐らずに運べる「サメ」の白身は貴重だったのだ。
ただし、そうやって食べられるのは比較的アンモニア臭の少ないネズミザメなどだよ。

ちなみに、その全く逆に突き抜けているのが、韓国料理のホンオフェ。
世界に冠たる臭い料理の一つだよ。
ガンギエイの身を壺に入れて発酵させたものなんだけど、その発酵過程で実の中の尿素がアンモニアに分解され、ものすごい臭気になるのだ。
アジアでは最強のくささで、スウェーデンのシュールストレミングに匹敵すると言われるよ。
最初にこの方法で食べた人は何が目的だったんだろう?

一方で、チョウザメの方は普通の白身。
天然のチョウザメが絶滅危惧種になって養殖が進んでいることもあるんだけど、その身も食べようという動きが活発になってきているみたい。
さすがに卵巣だけとってキャビアに加工し、残りは廃棄物というのはもったいないよね。
種類によっては身もおいしいし、しかも、くさみの少ない白身なので重宝するのだ。
刺身でも食べられるんだそうだよ。

日本国内でも養殖が広まってきていて、国産キャビアというのもあるらしいのだ。
個人的にはキャビアはそこまで好きじゃないけど、チョウザメの身はおいしかったから、これが新たな食幼魚として広まったらいいと思うけどなぁ。
鮭に匹敵するような食材になれる可能性はあると思うけど。
キャビアだけじゃなくて身も売れるようになれば養殖事業ももっと盛んになるよね。
ただし、キャビアがとれるようになるまでには10年以上かかるんだって・・・。
チョウザメの養殖はけっこう息の長い話なんだね。

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