2019/09/14

たたいて闘魂注入

高知名物と言えば、「土佐造り」。
すなわち、厚切りの鰹のタタキ。
カツオのサクを藁火で表面をあぶってさっと氷水で冷やし、分厚く切って、薬味をたっぷりのせるのだ。
ショウガだけでなく、ニンニクをきかせるんだよね。
これは確かにうまい!

なぜ「タタキ」と呼ばれるようになったのかは定かでないらしいのだけど、あぶった後にたれや塩をなじませるために身をたたいたため、という説もあるのだ。
本当に「たたく」から「タタキ」なのか・・・。
実は、英語でも「タタキ」で、フランスでは「マグロのタタキ(Tataki de Thon)」をよく見かけたよ。
あぶることで香ばしさが出て、生臭みが薄れるから外国人に食べやすいのかな?
皮ぎしの脂もとろけてうまみが活性化する効果もあるんだよね。
あぶりトロとかと同じ。

なんで表面をあぶるようになったのかもよくわからないみたいなんだけど、刺身を食べることを禁じられたので表面だけあぶったとかいう説もあるんだ。
個人的には、表面についた雑菌を焼いて滅菌することで食中毒を予防したのではないかと思うんだよね。
当時は流通にも限界があるし、鮮度良く運べなかったので、刺身は取れたての魚のみでできる贅沢な料理。
多くは醤油ベースのたれで漬けた「漬け」や酢や昆布で「〆(しめ)」たものだったんだよね。
雑菌は基本的に表面についているので、そこをあぶってしまえばけっこう食中毒は防げそうなんだよね。
ユッケの場合は表面を削るわけだけど、結局表面を削るときに包丁に雑菌がついてしまうので、それだと食中毒が防ぎきれないこともあるのだ(>o<)
でもでも、最終的には、単純にそうやって食べた方がおいしいから、料理法として広まったんだろうけどね。

今ではカツオのみならず、牛肉でもたたきがあるよね。
肉の場合は、表面の滅菌もさることながら、脂の活性化が大きいと思うけど。
牛の脂は馬の脂ほど融点が低くないので、体温により口の中でそのまま油がとろける、ということはないのだ。
なので、ちょっと火を通して最初に融かしてあげるとおいしいんだよね。
マグロのトロやトロサーモンをあぶるのも同じような理由だよ。


一方、東京のおとなりの千葉で「タタキ」といえば、味などの青魚のみを刻んで薬味とまぜたもの。
味噌で味をつけると「なめろう」になるよね。
こちらは見た目どおり、まな板の上で包丁でたたきように刻みながら作るから「タタキ」。
もともとは「タタキなます」と呼ばれていたものが「タタキ」になったのだ。
「なます」は大陸から伝わった料理法で、肉や魚、野菜などを細かく刻んで作るものの総称。
現在の日本ではお正月に食べる紅白なますのように野菜の酢の物が「なます」の代表になってしまっているけど、中国では肉でも魚でもなんでも刻んで薬味やたれと混ぜて食べる料理法だったのだ。
「なます切りにする」というのはここから来ている言葉だよ。
日本に伝わってからは、仏教の影響で肉食が禁じられたので、魚と野菜が残ったわけで、魚の方は「タタキ」と呼ばれるようになり、野菜の方だけが「なます」になったのだ。
ただし、山口の郷土料理の「ちしゃなます」(ほぐした焼き魚とレタス=ちしゃを酢味噌で和えたもの)のように、魚が入っている「なます」も当然あるよ。

そして、さわにまぎらわしいのは野菜の「タタキ」。
こっちはたたくことで野菜の繊維質を柔らかくする調理法のこと。
タタキゴボウやキュウリのタタキがそれ。
たたくことで繊維がほぐれてタレともよくなじむんだよね。
野菜の場合は刻んだものが「タタキ」とよばれることはまれなようなのだ。

カツオにしても、アジにしても、タタキの場合はたっぷりの薬味とともに味付けされたものを食べるんだよね。
やっぱりこれは鮮度の問題が大きかったんじゃないのかなぁ。
カツオはなまり節や鰹節に、アジはヒラキに、と加工すれば長期保存できるのだけど、生のものも食べたいというところから初田牛反じゃないかと思うんだよね、。
とにかく日本人の食に対する欲望は尋常じゃないから(笑)
なぜか食べるものだけには異様なこだわりを見せるんだよね。

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