2020/03/07

生活必需品品薄対策


新型コロナウイルスの影響で全国的にマスク不足に陥っているのだ。
さらに、ツイッターなどのSNSを機転としたデマの流布により、トイレットペーパーなども品薄状態が続いているのだ・・・。
で、よく目にするのが、「石油ショックの時と国民の行動が変わっていない」というもの。
昭和48年(1973年)の第一石油ショックの際は、やはり「トイレットペーパーや洗剤が供給不足になる」とのデマが流れ、全国的に買い占め行動が行われてしまったんだよね。
中には、そのときに買ったトイレットペーパーがまだ実家にある、なんて報告も!
すごい大騒動だったんだよね。

そんな社会情勢を受けて出てきているのが、すでにある法律によってきちんと対応すべきというもの。
特に、マスクの転売については、法律で厳しく取り締まるべき、なんて意見を見るよね。
でもでも、その法律ってけっきょくどんなものかよくわかっていなかったので、少し調べてみることにしたよ。
で、見つかったのは、ともに消費者庁所管の2つの法律で、どちらも昭和48年に制定されたものだよ。

一つ目は、「国民生活安定救急措置法(昭和48年法律第121号)。
まさに第一次オイルショックを受けて制定された法律で、先に加藤厚労大臣が政府がマスクを買い取って緊急事態宣言が出ている北海道の特に感染の多い地域に配布する、というのは、この法律に基づく指示だよ。
この法律には、「国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資(生活関連物資等)」について、その価格と需給の安定を図るための措置が定められているのだ。
価格の安定については、「価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがある」ときには、生活関連物資等のうち特に価格の安定を図る必要のある物資を政令で「指定物資」として定め、その標準価格を定めることになるのだ。
その後、小売業者等に対しては、標準価格で販売するよう指示するんだけど、正当な理由なく従わない場合は、その旨を公表することができる、となっていて、社会的な制裁が加えられることになるんだよね。

それでもなお価格の安定が図れない場合は、さらに「特定物資」として指定を行い、全国的或いは地域ごとに「特定標準価格」を定めることになるんだ。
こちらについては、「特定標準価格」を超えて小売業者が販売を行った場合、その超過分について課徴金として国庫に納付するよう命じることができるんだ。
つまり、「標準価格」を定めてもなお価格のつり上げなどが横行している場合は「特定標準価格」が定められることとなり、そうなったら、「特定標準価格」を超える文の利益は国に取り上げられることになる、というわけ。
転売についてはこれが適用できないか、という話だったわけだけど、ついに総理がこの法律でマスクの転売を禁止する、と言明したよね。

厚労大臣の指示の根拠になっているのはまた別の規定で、「物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合において、生活関連物資等の供給が不足することにより国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営が著しく阻害され又は阻害されるおそれがあると」は、特定の物資を指定した上で、生産や保管、売り渡しなどを事業者に指示することができることになっているんだ。
今回のマスクの場合は、第22条第1項の「主務大臣は、特定の地域において生活関連物資等の供給が不足することにより当該地域の住民の生活の安定又は地域経済の円滑な運営が著しく阻害され又は阻害されるおそれがあり、当該地域における当該生活関連物資等の供給を緊急に増加する必要があると認めるときは、当該生活関連物資等の生産、輸入又は販売の事業を行う者に対し、売渡しをすべき期限及び数量、売渡先並びに売渡価格を定めて、当該生活関連物資等の売渡しをすべきことを指示することができる」という規定をもとに行われているものだよ。
この「売り渡し、輸送または保管に関する指示」は、条文にあるとおり「特定の地域」で需給が逼迫している場合にも使えるよ。
つまり、西日本では足りていても、東日本で圧倒的に不足していたら、この指示が出せるのだ。
ただし、これも罰則があるわけではなく、指示に従わない場合はその旨が公表されるのみだよ。

もう一つの法律は、「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和48年法律第48号)」。
実は、この法律は第一次石油ショックの3ヶ月前に制定されたもので、当初は、「生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」という名称だったのだ。
もともとは田中内閣の「日本列島改造論」に触発された地価高騰に端を発する物価高騰の対策としてできたもの。
石油ショックを受けて、先の「国民生活安定緊急安定措置法」の不足で一部改正が行われ、石油ショックの影響への対応としても使われるようになったものだよ。

こちらの法律では、生活関連物資等(定義は「国民生活安定緊急措置法」と同じ。)について、「買占め又は売惜しみが行なわれ又は行なわれるおそれがあるとき」は、政令で「特定物資」を指定し、価格の動向及び需給の状況に関し必要な調査を行っうのだ。
その上で、「生産、輸入又は販売の事業を行う者が買占め又は売惜しみにより当該特定物資を多量に保有していると認めるとき」は、その事業者に対して売り渡しを指示することができるんだ。
で、この指示に従わない場合は、罰則(三年以下の懲役又は百万円以下の罰金)付きで売り渡しを命じることができるようになっているよ。
不当に過剰な在庫を抱えつつ売り惜しみをして価格をつり上げようとする場合に適用できるのだ。
こっちはあんまり転売対策には向かないんだよね。

政府においては、さらにコロナ対策として緊急措置法を検討しているとの報道が出ているけど、生活必需品等の安定供給についてはこの二つの法律でなんとかなる部分が多いから、それ以外の部分、例えば、休業等による損益への保証、中小事業者への支援の拡充等々があるじゃないかと思うんだよね。
場合によっては、マスク等の需給調整や配給制なんかもあるかもしれないけど、そこまでしないとダメということでもない気がするんだよね。
いずれにせよ、これらはあまり抜かれない「伝家の宝刀」で、いざとなったら使える、というものなんだけど。

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