2020/04/11

エマージェンシー、これは訓練ではない

ついに一都一府五県に非常事態宣言が出たのだ。
これで生活も大きく変わるのか?
といっても、実際問題として何が変わるかいまいちよくわからないんだよね・・・。
というわけで、少し調べてみることにしたよ。

まず、今回の「非常事態宣言」は2009年の新型インフルエンザの感染蔓延を契機に制定された「新型インフルエンザ等特別措置法(新型インフル特措法)」の第32条に基づくもの。
もともとこの法律の対象は、新型インフルエンザ等で、その対象は、同法第2条の定義において、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)」第6条第7項に規定する「新型インフルエンザ等感染症」及び同条第9項に規定する「新感染症」なのだ。
前者の「新型インフルエンザ等感染症」は単純で、新型インフルエンザと再興型インフルエンザのこと。
後者の「新感染症」は未知だけど脅威のある感染症を広く対象にできるように規定されているもので、「人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの」となっているのだ。

ところが、ここで問題が発生。
今回の「新型コロナウイルス」については、この感染症予防法が対象とする「新感染症」とするのは難しい、との法解釈があったので、そのままでは新型インフル特措法の対象にならないとされたのだ。
これは総理も厚労大臣も国会で答弁しているようだよ。
そこで、改めて、「新型コロナウイルス」が新型インフル特措法の対象になるように法改正が行われたんだよね。
それにより、最大2年間、「新型コロナウイルス」は新型インフル特措法における「新型インフルエンザ等」とみなす、ということになったんだ。

この改正法が通って施行された後、いつ「非常事態宣言」が出るかでメディアがさわがしかったわけだけど、実は、「非常事態宣言」が出ずとも、「新型インフル特措法」の対象になればこれまでできなかったことができるようになっているのだ。
例えば、政府は総理を本部長都市、全閣僚を構成員とする、法定の対策本部を設置し、新型コロナウイルス対策に関する基本的対処方針を定めることになるんだよね。
加えて、政府対策本部が設置された場合は、各都道府県にも都道府県対策本部が設置されることに安るんだよね。
これで全国規模の指揮命令系統が確立するのだ。
そして、医療関係者に対する優先的な予防接種の実施や、感染症発生国からの船舶や航空機の検疫を強化する「水際措置」が発動できるようになるよ。
で、しばらくはこれで対応していくわけ。

いよいよ切羽詰まってくると、「非常事態宣言」が出されるのだけど、その際に2つの要件があるのだ。
これは新型インフル特措法の施行令第6条に規定されているよ。
ひとつは、対象感染症の範囲で、「当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められる」とされたいるのだ。
今回の新型コロナウイルスは微妙ではあるけど、肺炎のリスクが高いと判断されているわけだね。
もうひとつは感染・流行の態様で、ざっくり言うと、調査等を行っても感染経路がとどれないなど感染拡大のおそれが疑われる場合、ということ。
これは完全に当てはまるよね。
というわけで、今回の新型コロナウイルスもこれら要件を満たしたとされて、「非常事態宣言」が出たのだ。

「非常事態宣言」は最大2年間の期間(更なる1年間の延長は可能)に、特定の範囲(都道府県単位)で出されるもので、これが出ると更なる措置が可能となるのだ。
体系的には、都道府県対策本部に加えて、市町村対策本部も設置が義務化されるよ。
対象範囲となっている都道府県知事は「特定都道府県知事」、市町村長は「特定市町村長」となり、各種要請の主体となって対策を講じていくんだ。
実際に「非常事態宣言」が出た場合にどういうことができるかは法律で決まっているんだけど、この内閣官房の概要資料が比較的わかりやすくまとめられているよ、。

代表的なもので言えば、すでによく話題になっているけど、外出の自粛要請。
そして、補償問題で騒がれつつあるのが、人が集まる施設等の使用制限に関する要請。
こちらは、施行令第11条でより細かく範囲が規定されていて、学校、保育所、介護施設、劇場、映画館、演芸場、集会場、公会堂、展示場、百貨店や物販販売業(食品や医薬品などを除く)、ホテル・旅館、体育館、水泳場、ボーリング場、博物館・美術館、図書館、遊興施設(キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール等)、理髪店、質屋、貸衣装屋、自動車教習所、学習塾等々。
これは各都道府県知事が各都道府県の実情に応じてそれぞれ要請するのだ。
ちなみに、法律上は制限の要請をしても国又は都道府県がその損失を補償することにはなっていない、というのが騒がれているポイント。

これとは逆に、補償されるものもあるんだよね。
それは、医療のように供するために土地や建物を使わせてもらう場合。
原則所有者の同意を得るんだけど、同意下得られなくても強制的に使用することができる、というのが特別な措置。
例えば、今進められているのは、軽症患者を収容するためにホテルを使わせてもらう、なんていうやつだよ。
この場合は国や都道府県がそのお金を支払ってくれるのだ。
これは法律に規定されているんだよね。

というわけで、政府対策本部が「非常事態宣言」を出した後は、対象範囲に入った都道府県の特定都道府県知事が各種要請をどのように出すかがポイントになるわけ。
それによってだいぶ生活の仕方も変わってくるのだ。
東京都はすでに要請先を公表、大阪とかは週明けだって。
感染拡大を未然に防ぐのはこれからが本番。
これがうまくワークすればよいのだけど、新型インフル特措法に基づく「非常事態宣言」って今回が初だから、なんとも言えないんだよね・・・。

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