2020/05/09

虫下しが効く?

新型コロナが日本でも落ち着きを見せつつあるよね。
もちろん、ここで油断するとまたぶり返すので、しっかりと収束させることが必要。
そのためにノーベル賞科学者の山中先生なんかもPCR検査の増強などの提言をしているのだ。
もちろん、現状では確立した治療法がないのでむやみに検査すればいいというわけではないのだけど、重要なのは、ウイルスのキャリアをしっかりと隔離する体制を作ることのようなのだ。
新規感染者数が減ってくればこれも現実的なわけで、PCR検査数を増やして可能な限り感染者(無症状を含む。)を隔離し、新たな感染を発生させないようにしよう、ということみたい。
それならやっと意味が通るよね。

で、隔離だけだと対症療法や自然治癒だけで治してもらうしかないわけだけど・・・。
「軽傷」と言いつつ、人工呼吸器を使わないだけでインフルエンザ並みの症状が出たり、間質性肺炎で修復不可能な傷が肺に生じたりするので、そうもいかないわけで。
そうなると、やっぱり効果的な治療法がほしいわけ。
今はアビガンがすっごい期待されていて、政府としては、米国で緊急に承認されたレムデシビル(抗エボラ出血熱薬)の特例承認が大きく報道されているよね(先進国で一度承認された薬剤はより簡便な審査で国内承認がとれる制度があるのだ。)。
その中で、全く毛色の違うものも注目を集めているのだ。
それが、駆虫薬のイベルメクチン。

イベルメクチンは、やはりノーベル賞受賞科学者の大村智先生は発見した抗生物質をもとに作られた、マクロライド系の経口駆虫薬。
静岡のゴルフ場にいた放線菌で発見した抗生物質がもとになった、とノーベル賞受賞の時に話題になったもの。
抗生物質でありながらいわゆる通常の細菌(バクテリア)にはほぼ抗菌活性がなかったんだけど、線虫や回虫、糸状虫などの寄生虫駆除には非常に有効だったのだ。
なので、最初は動物医薬として使われ、犬のフィラリア予防薬なんかでブレイクしたんだよ。
その後、ヒトにも使われるようになり、熱帯地域の寄生虫に由来する様々な風土病に有効だったことからノーベル賞につながったのだ。
で、豪州のグループが試したところ、この薬が新型コロナに効くかもしれない、ということなんだよね。

イベルメクチン自体はわりと大きめの化合物で、寄生虫駆除に機能していると言われているのは、無脊椎動物の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性塩化物イオンチャネルに特異的かつ高い親和性を持つことにゆらいしているのだ。
常にスイッチがオン状態になることで神経や筋肉が麻痺してしまうようになるんだよ。
でも、ウイルスへの作用はこれとはまた違ったもので、あまり詳細はわかっていないのだ。
でも、もともとHIVやインフルエンザのようなRNAウイルスに対して抗ウイルス活性がある、という報告があって、それで豪州のグループが試してみたらしいよ。

例えば、アビガンはRNAウイルスの増殖の根幹となるRNA合成酵素の働きを阻害するんだよね。
レムデシビルも同じような感じだよ。
これはウイルス活性がわかりやすい。
よくわからないけど効いてそうと言われているのがBCGワクチンや抗マラリア薬のクロロキン。
これらは、自然免疫を活性化するからでは?、と考えられているのだ。
なので、治りが早くなるかも、重症化しないかも、というもの。
さらに、ドイツでは、カモスタットとかナファモスタットというセリンプロテアーゼ(活性中心にセリン残基を持つタンパク質分解酵素)の阻害薬が試されているよ。
コロナウイルスは細胞内に侵入するときに宿主側のセリンプロテアーゼをうまく利用することが知られていて、これらの薬剤はそれを阻害するので、感染を邪魔すると考えられているのだ。

イベルメクチンについてはよくわからないのだけど、細胞内に侵入したウイルスが細胞核内へ移行するのを防ぐのではないか、と一部で考えられているようなのだ。
コロナウイルスはやっぱり宿主の細胞内にあるタンパク質の力を借りて核内へ入っていこうとするんだけど、このウイルスがくっつくタンパク質に先にイベルメクチンがくっついてしまうことで、ウイルスが細胞核内にたどり着けないようにしている、ということ。
核内まで行けなければ自分のウイルスゲノムRNAを複製したり、ウイルスタンパクを合成したりできないので、ウイルスが増えないというわけなのだ。
とはいえ、そもそもイベルメクチンの各種作用はよくわかっていないので、なんとも言えないのだけど。

いずれにせよ、すでに使われている薬で副作用もわかっているものなので、イベルメクチンが新型コロナに効くとなれば福音なのだ!
作用機序はよくわからなくても使われている薬はあるし(特に古い薬)、とりあえずは治療の手段が持てると言うことが大事だよね。
もちろん、効くメカニズムがわかれば、もっと
抗コロナウイルス活性に特化した薬剤が作れる可能性があるので、そっちの研究も大事なんだけど、まずはイベルメクチンが使える薬なのかどうかが大事だよ。

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