2020/05/23

HEROの世界

なんだか一気に検察庁への注目度が高まったよね。
検察庁法改正を含む「国家公務員法等の一部を改正する法律案」は今国会ではこれ以上審議されないことになったのだ。
そして、最後の最後で黒川さんが文春砲で辞任するとは思わなかったけど・・・。
でも、これって多くの人がそうだと思うけど、そもそも検察庁法ってなんだ?、という疑問があったので、少し調べてみたよ。

霞が関の中央省庁の中で、各省の下に設置されている「○○庁」や「○○委員会」という組織の多くは「外局」と呼ばれるもの。
国家行政組織法は、内閣補助機関(内閣官房や内閣府、復興庁など)を除く行政機関の在り方を規定している法律だけど、その第3条の第1項~第4項までに省、庁及び委員会の基本的な考え方が示されているよ。
別表第一には各省に外局としておかれる庁及び委員会の一覧が示されているんだけど、その中には「検察庁」は入っていないんだ。
文部科学省の下の文化庁や、国土交通省の下の海上保安庁、環境省の下の原子力規制いい内なんかは外局なので、しっかりと入っているよ。
では、「検察庁」の位置づけは何か、というと・・・。
国家行政組織法第8条の3に来ている「特別の機関」なのだ。
同条では「第三条の国の行政機関には、特に必要がある場合においては、前二条に規定するもののほか、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律の定めるところにより、特別の機関を置くことができる。」としているよ。

「特別の機関」としてどんなものがあるかというと、外務省の在外公館、文部科学省の日本学士院、国土交通省の国土地理院などなどだよ。
これらは、専門的な行政実務を担う「準外局」的な位置づけの組織。
「庁」とするまでもないけど、一定の独立性を持って業務を行うと言うことのようなのだ。
一方で、総務省の中央選挙管理委員会のような合議制機関の特別の機関については、外局である原子力規制委員会ほどではないけど、格が高いもの、ということで「特別の機関」になっているみたい。
いずれにせよ、「外局」より下に位置づけられているのだ。
でも、「検察庁」の場合はこれらと少し色合いが違うんだよね・・・。
「外局」だと完全に「省」の下部組織になるんだけど、法務省と検察庁の関係はそれとは少し異なるのだ。
「外局」よりさらに下の下部組織的な位置づけの他の「特別の機関」との並びで言うと据わりはよくないのだけど、「特別の機関」になっているみたい。
そのあたりは、「検察庁法」の中にも明確に表れているのだ。

まず、法務省設置法第14条に検察庁についての規定があって、第1項で別の法律で検察庁を設置することを定め、第2項で検察庁については検察庁法の規定によることが規定されているのだ。
つまり、検察庁の設置も検察庁の業務のやり方もすべて検察庁法によるとされているのだ。
で、検察庁法の方に様々な検察組織の規定があるんだよね。
今回問題になった定年に関する規定は第22条だよ。
ここで定年を過ぎても必要であれば業務を継続させる云々の話があって、直前に行われた黒川さんの定年延長の特殊事例との関係が問題視されたのだ。

検察庁法の話に戻ると、まず、ボクがあまり認識していなかったのは、「検察庁」というのは各種検察組織の総称であって、文化庁やら資源エネルギー庁のような組織体があるわけじゃないこと。
検察庁は、各種裁判所に対応する組織で構成されていて、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁及び区検察庁になっているのだ。
で、これら全部をまとめて「検察庁」と呼ぶのであって、「検察庁」の下に地方組織がぶら下がっているわけではないんだね。

検察官で一番偉いのが検事総長で、この人は最高検察庁の庁でもあって、すべての検察官の指揮監督を行うよ。
その下が次長検事で、各高等検察庁の長となるのが検事長、各地方検察庁の長となるのが検事正なのだ。
で、法務大臣との関与で言うと、第14条に規定があって、大臣は一般的な指揮監督権限は持っているのだけど、捜査や処分に関する指揮監督権は検事総長のみが持っているのだ。
これにより、行政機関の中でも内閣と一定の独立性を持って業務の遂行ができることになっているよ。
騒動の時には「三権分立が」なんて話もあったけど、検察はあくまでも行政の一部で、司法ではないのだ。
でも、政治からは独立性が必要なのでこういう規定が存在しているわけ。
本当に内閣が恣意的に検察幹部の人事に介入することこことの関係が問題になる、というのが本質だよ。

ちなみに、検事総長は英語で「Attorney General」なんだけど、米国だとこれって「司法長官」なんだよね。
つまりは閣僚級の政治任用ポスト。
大統領は検察のトップを任命しているのだ。
ただし、米国の場合は政治任用ポストの任命には上院の承認が必要なので、そこで「恣意的」な人事はできないように睨みをきかせているのだ。

というわけで、おそらく秋の臨時国会ではもう一度この検察庁法改正案を含む「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が審議予定。
こうやってちょっと中身を知ると、より理解しやすいはずなのだ。
夏休みを挟んで覚えていなくちゃいけないけど(笑)

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