2020/05/02

特効薬か?

コロナは少し収まってきたようなデータになっているけど、緊急事態宣言は延長されそうだね。
ここで気を抜くとぶり返すおそれもあるし、第二波も来るかもしれないからね。
特に、自粛の反動で連休中に外出が増えるとまずそうなのだ・・・。
今年はもう我慢するしかないよね。
そんな中で、大きな希望となりつつあるのが、特効薬として期待されるアビガン。
これは富士フイルムの子会社の富山化学工業が富山大と共同で開発したインフルエンザ用の抗ウイルス薬。
タミフルよりも治療効果が高く、薬剤耐性も生じないと言われている薬だよ。
これが新型コロナウイルスにも効くかもしれない、ということで世界中で期待されているのだ。

アビガンというのは登録商標で、化合物名は「ファビピラビル」。
これはリボ核酸(RNA)のプリン型の核酸(アデノシンやグアノシン)に形が似ていて、RNA合成を阻害するのだ。
インフルエンザウイルスやコロナウイルスはRNAウイルスと呼ばれるもので、遺伝情報をRNAの形で保存しているんだよね。
で、感染した後、そのRNAを鋳型に複製を作らせるんだけど、この世の生物の遺伝情報はのきなみデオキシリボ核酸(DNA)の形で保存されていることもあって、そのまま感染した生物(宿主)の中に元来あるメカニズムでは複製できないのだ。

そこで出てくるのが、ウイルス特有のRNA依存性RNA合成酵素というやつで、これはRNAウイルスにとって非常に重要な遺伝子となっているよ。
まず、この合成酵素を宿主に作らせ、自分を複製していくことになるのだ。
つまり、この酵素が働かなくなれば、ウイルスは増殖できなくなる、ということで、それがこの薬の抗ウイルス作用のもとになっているよ。
もともとはインフルエンザ用に開発されたわけだけど、ノロウイルスのような他のRNAウイルスにも有効だという知見がもともとあって、それで今回の新型コロナウイルスにも使えるのでは?、と試されるようになったわけ。
まだ十分に科学的な証拠が集まっているわけではないけど、なんとなく効きそうなんだよね。
実際に石田純一さんや宮藤官九郎さんはアビガンの服用で治ったと言われているよね。

かなり細かい話になるんだけど、RNAウイルスには、どのような形で遺伝情報としてのRNAを持っているかでさらに分類されるのだ。
まず、二本鎖なのか、一本鎖なのか。
一本鎖の場合はさらに分かれて、+か-かというのがあるのだ。
これはRNAのオス・メスみたいな話で、+というのは、そのままタンパク質の設計図になる配列を持つRNAのこと。
逆に、-の方は、自分自身は鋳型にはならず、それに相補的なRNAが設計図になるもの。
つまり、+鎖を持っている場合はそこからいきなりタンパク質が作れるんだけど、-鎖の場合はいったん相補的RNAが作られないとタンパク質の合成はできず、何よりもRNA依存性RNA合成酵素がないと何もできないんだよね。
なので、インフルエンザウイルスのような一本鎖-鎖RNAウイルスの場合は、最初からウイルスの中にこの酵素が入っているんだよ。
+鎖だと感染してから作らせればいいんだけどね。

なお、+鎖はさらに二つあって、コロナウイルスやノロウイルスはそのまま自分のRNAをタンパク質の設計図にも使うし、遺伝情報の総体(ゲノム)にも使うんだけど、中には、逆転写と言っていったんゲノムRNAに相補的なDNAを作り、そのDNAからmRNAを作らせてタンパク質を合成するものもあるのだ。
この逆転写を行うものをレトロウイルスと呼ぶんだけど、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)なんかが代表例だよ。
逆転写させる場合は、ゲノムRNAに相補的なDNAを作った後、それを二本鎖にし、さらに、宿主のゲノムDNAの中に挿入するのだ。
こうすることで、宿主のゲノムにコードされている遺伝子制御領域なんかを転用できるわけ。
そして、プロウイルスとしてサイレントに細胞内に潜伏するのだ・・・。
HIVの潜伏期間が異様に長いのはこのためだよ。

で、ノロウイルスはコロナウイルスと同じ一本鎖+鎖RNAウイルスなので、ノロに効くならコロナに効くかも、という発想が出てくるわけだよね。
インフルエンザの場合は、上で見たように最初にRNA依存性RNA合成酵素が働かないと感染が成立しないから、本当の入口を押さえるわけ。
でも、+鎖の場合は、最初にすでに設計図のRNAを持っているので、それをもとにウイルスタンパク質は多少は作られてしまうんだよね。
これが感染・症状にどこまで影響を及ぼすのか、というのがおそらく鍵なのだ。
でも、+鎖でも、RNA依存性RNA合成酵素さえ阻害してしまえばそこまで増えないので、有効ではあるはずなのだ。
これが本当に特効薬だとよいのだけれど。

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