2020/05/29

DEMAE

コロナによる自粛ムードの中、よく見かけるようになったのが各種デリバリー。
マックやKFCはドライブスルーも好調のようだけど、そういう専用の設備を持っていない場合は、店に来てもらえない以上は、届けるしかないよね。
そのむかしは、そば屋や寿司屋なんかの特定の業種で、いわゆる「出前」や「仕出し」が行われていて、その後、宅配ピザを皮切りに中華や弁当屋、ファミレスなどのデリバリーも増えてきたのだ。
そして、今やUber Eatsによって、それこそ多種多様なお店の料理が自宅で食べられるようになったよね。

日本における出前の歴史は江戸中期頃までさかのぼれるらしいんだよね。
もともと江戸という年は、そのほとんどの土地が武家の屋敷で、商人を含む町人が居住できるスペースは限られていたのだ。
で、すでに江戸時代に百万都市で、それにもかかわらず、基本的には平屋建築しかないわけで、とかなり込み入った都市だったんだよね。
そんな都市で繁栄したのが、露店や行商という業態。
露店としては、そばや天ぷら、寿司なんかがメジャーで、人が集まる場所・時間にそこにお店を開いて商売するんだよね。

さらにサービスがカスタマーよりになっているのが行商で、これで居住場所近くまで売りに来てくれるのだ。
当時は「棒手振り(ぼてふり)」と呼ばれて、豆腐や納豆のような昭和の時代まであったものから、野菜、魚、惣菜なんかもあったようだよ。
当時の江戸は妻帯者が少なく、とういうより、男性人口が圧倒的に多かったので独身男性が多く住んでいたんだよね。
かつ、長屋なんかの場合は居住スペースもせまく、さらに、便利な家電もないから、ごはんを宅だけでもかまどに火を入れないといけないという状況。
そんな中で独身男性が自炊するのは非常に厳しいわけで、外食産業が発達していたのだ。

そして、やっぱり店舗の外食は高いので、露店でそばや寿司を立ち食いしたりするファストフード形態が人気。
とはいえ、これらはあくまで軽食なんだよね。
家でごはんを炊くにしても、おかずだけ買うことが多くて、そのときは行商人から買うことが多かったのだ。
納豆なんかは味をつけた上でネギも混ざっていて、ごはんにのせればすぐ食べられるような状態で売られていたみたい。
このほかにも、煮豆や佃煮なんかも売りに来たようだよ。

そんな外食文化の中江生まれたのが、できた料理を家まで運んでくれる「出前」。
おそらく庶民にはなかなか手が届かないもので、ある程度余裕がある人だけだけどね。
ウナギの蒲焼きなんかはすでに江戸時代に出前がなされていて、その際、ウナギが冷めないように炊きたてのごはんの中にうずめて運んだらしいのだ。
そのときのウナギのたれのしみたごはんがおいしいというので鰻丼が生まれた、という説もあるよ。
また、花街には「仕出し」があって、遊郭で遊ぶ際は酒や料理はその店舗内で用意されているわけではなく、料理屋からの仕出しだったのだ。
こうして、料理を運ぶ文化が築かれてきたわけ。

昭和になるとそばや寿司、ラーメンなんかの出前はかなり庶民にも浸透しているんだよね。
カブで運ぶ際に揺れないようにする専用の装置まで開発されるくらいに。
おそらく、あんまり欧米ではない状況なんだよね。
無効は食べに行くか、持ち帰るの2択だったわけで。
そこで状況が変わってくるのが、「デリバリー」という概念。
べいこくでもおそらくピザが最初なんじゃないかと思うけど、家に料理を届けてもらう、という業態が出てきたのだ。
もともと「ケータリング」という形で料理を外注することはあったんだけど、「ケータリング」の場合はできた料理を持ってくる、というシンプルなものではなく、サーブする人や料理人も混みでやってきて、その場で仕上げや盛り付けをするようなものだたんだよね。
なので、持ってきて終わり、というのはなかったようなのだ。

これが日本にやってくると、日本でもピザに始まって様々なデリバリーが生まれたわけ。
それまでは店舗でも食べられるし、出前もできるし、という業態が多かったけど、ここに来て「デリバリー専門店」というのが出てくるんだよね。
ただし、これらの業態においては自前でデリバリー・スタッフを用意する必要があって、誰でもが手を出せるものではなかったのだ。
だからこそ専門店という形態をとったんだろうけど。

さらに自体が大きく変わるのが、配達行為のアウトソーシングという発想。
もともとUberは、携帯アプリを通じていわゆる白タクの斡旋・仲介を行うサービス形態を始めたわけだけど、それをデリバリーの配送部分に当てはめたのがUber Eatsなのだ。
これまでの出前やデリバリーは配達に要するコストがあらかじめ原価に乗っていたわけだけど、配達の外注によって別途配達料を取ることにしたんだよね。
で、手数料を除いて配達をした人に対価として支払うシステムにしたのだ。
欧米ではもともとかなり普及していたんだけど、独自の出前文化もあり、また、コンビニやスーパーに行けばすぐに弁当が手に入る日本においてはあまり広まっていなかったのだ。
それが、コロナによる外出自粛要請で一気に広まったんだよね。
テイクアウトするにも家から出ないといけないわけで、全く家を出ないのなら届けてもらうしかないわけで。
これまでの出前やデリバリーと比べると配達料が上乗せになるので割高感があったんだけど、既存の出前やデリバリーだとやっぱり食べられるものが限られるので、自由に外食できなくなったこのタイミングで火がついたと考えられるのだ。

自粛ムードが終わった後にどこまで根付いているかはよくわからないけど、確かに便利は便利なんだよね。
その一方で、配達をする人たちは完全に出来高制なので、配達数をかせぐために無茶な運転をしたりして事故なども増えているようなのだ・・・。
そうなると、規制やらなんやらという話が出てきて、抑制方向にいくんだよね。
とはいえ、育児や介護などの理由で家から離れられない人には非常に便利なサービスでもあるわけで。
ポスト・コロナの中でどこまでUber Eatsが生き残っていくのかはなかなかおもしろそうなのだ。

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