2020/06/20

まとめて処罰

先の参議院選挙における選挙違反事件が大きな展開を見せたのだ。
最初はウグイス嬢への法定上限を超える報酬が支払われた、という話だったんだよね。
ところが、さらに事件の捜査が進むと、地元有力者への金銭をわたしていたのではないか、という買収事件になったのだ。
地検特捜部がいまもっとも力を入れている政治スキャンダルなんだよね。
で、今般、ウグイス嬢への違法な報酬の件で担当秘書に実刑判決(懲役1年6月、執行猶予5年)が出たので、次の焦点が、連座制の適用の有無になってきたんだ。
とはいえ、この「連座制」というのがいまいちよくわからないので、少し調べてみたよ。

一般的に「連座制」というと、罪を犯した本人のみならず、その関係者も合わせて処罰することのようなのだ。
でも、近代の罪刑法定主義の世界では、原則的に行為者の恋又は過失があった場合のみ犯罪が成立するものとしていて、関連する集団に属していると言うだけでその周りの人が処罰されることはないのだ。
日本国憲法でも、第31条で「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と罪刑法定主義の大原則を掲げていて、法律上定められている罪を犯さない限りは処罰されないのだ。
なので、関係者だからといってついでに処罰なんてもってのほかで、共犯であることがきちんと証明され、当該犯された犯罪に対して一定の責任を持って何らかの行為が行われた、という認定が必要なのだ。

このため、一般的に日本の刑法の世界には連座制の適用はなく、あくまでも共犯かどうかという観点で見るんだよ。
ただし、明確に法律上監督責任が定められていて、その責任を十分に果たし切れていなかったという責任に対して刑法上の罪に問われる場合はあるよ。
これも法律上定められているものなので、民法で言う一般監督義務とか善管注意義務とは少し経路が違うのだよ。
例えば、会社の部下が強盗をしたからといって、その上司は形状上の責任は問われないよね。
詐欺集団の組織的犯罪における上司部下関係だったら別だけど、これは上司も罪を犯しているのだ。

そんな中、公職選挙法だけは連座制が適用されるのだ。
候補者本人だけでなく、その塩田で選挙運動を取り仕切る人や、会計・出納の責任者、親族、秘書などが買収などの違反行為をした場合、党外候補者も罪に問われ、当選が無効となるとともに一定期間の立候補禁止などの罰が与えられるよ。
これがニュースでよく言われている連座制で、秘書に有罪判決yが出た場合、連座制が適用されれば当選が無効になるので、ここが正念場になるというわけ。
でも、国政選挙の場合、そこまで連座制が適用される例は多くないのも事実。
今回は検察が頑張っているので、「くび」をとろうとしていると思うけど。

公職選挙法上、連座制が適用される場合については第251条の2から第251条の4に規定されているんだ。
で、これに該当するような事件が発生した場合、一定の手続きを経て、連座制の適用の可否について判断が行われるのだ。
具体的には、次のようになるそうだよ。
①秘書等に有罪判決が出る。
②当該有罪判決について控訴・上告がない、或いは、控訴/上告があったが棄却されて裁判手続きが終了し、刑が確定する。
③検察が刑に処する旨の通知を申し立てる。
④最後に審判を行った裁判所が、有罪判決が出た旨を候補者に通知する。
⑤候補者は通知の費から30日以内に、「違反者は公職選挙法に定める連座制適用の範囲には該当しないこと」又は「公職選挙法に定める免責事項に該当すること」を理由に、立候補禁止や当選無効に当たらないことの確認を求める訴訟を高裁に提起する。(提起しなかった場合は自動的に連座制が適用される。)
⑥高裁で候補者の敗訴が確定すると連座制が適用される。

今は①に来たわけだけど、その後上告されればもう一度秘書の裁判をするし、そうでない場合も、候補者(現議員)が訴訟を起こして裁判所の判断を仰ぐことになるのだ。
つまり、まだまだ時間はかかりそう。
今回のケースでは、離党はしても議委員辞職はしないみたいだから、連座制が適用されることになるとしても、まだしばらく議員では居続けられることになるよ。
参議院であれば人気が6年なのでさすがに次の選挙まで引っ張ることはないんだろうけど、衆議院の場合は、連座制の適用を争っているうちに次の選挙に突入なんてこともあり得るんだよね・・・。
なんて考えていたら、議員本人の買収疑惑がいよいよ濃くなって逮捕、という流れになったね。
もはや連座ではなく、本人の罪が問われることになるよ。
こっちが検察の本命なんだろうけど。

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