2020/06/06

古代小麦

日本でも「古代米」というのが健康食品として注目を受けているけど、欧米でも「古代小麦」というものが同じように健康食品として注目されていると聞いたのだ。
「スペルト小麦」と呼ばれるもので、日本でもネットなどで買えるみたい。
これらは完全な野生種というわけではなくて、かつては主要穀物として栽培されていたんだけど、その後に現在栽培・流通が主流になっているコムギ種にとってかわられたもの。
もちろん、そうなる理由はあるんだよね。

いわゆる「コムギ」として流通しているものの主流は、パンコムギとデュラムコムギ。
パンコムギは名前が示すとおり、パンに使われるコムギなんだけど(笑)、一般に「コムギ」と言えばほとんどこれ。
他のコムギ種よりも耐寒性に優れて冷寒地でも栽培でき、かつ、脱穀がしやすいという特徴があるのだ。
これらの特徴は農業上は極めて重要なアドバンテージなので、現在主流になっているのだ。
スペルトコムギはパンコムギの近縁なんだけど、比較的脱穀しづらいので、食べるのに手間がかかるのだ。
デュラムコムギは言わずと知れたパスタに加工されるコムギ種。
タンパク質が青くて粘りが少ないのが特徴。
イタリアでは、乾燥パスタはデュラムコムギから作らないとダメなんだよね。
逆に、このコムギはあまりパン作りには向いていないのだ。

スペルトコムギの場合は、パンコムギと同じように、粉にしてから使われるんだけど、パンコムギとは少し性質が違うんだよね。
大きく違うのはグルテンの質。
時々「スペルトコムギはグルテンフリー」なんて書いてあるけど、それは嘘で、グルテンの質が違うので、いわゆる「グルテンアレルギーが出づらい」ということはあるみたいだけど、それ以上でもそれ以下でもないようなのだ。
スペルトコムギの場合は、グルテンが水になじみやすく、水と混ぜるとそんなにこねなくてもグルテンができる一方、ちょっとだれたような生地になるとか。
ふっくらしたパンにはなりづらいので、工夫が必要らしいよ。
その他、お米と同じように粒のまま食べることもあるみたい。
イタリアでは、中粒のスペルトコムギは「ファッロ」と呼ばれていて、それをゆでたものがスープの具や付け合わせに使われるようなのだ。
ぷつぷつした食感がおいしいみたい。

健康食品として注目されたのは、パンコムギより少しアミノ酸スコアがよく(必須アミノ酸の含有量が高い)、ミネラルも多いとか。
パンコムギが主要穀物として選ばれ、品種改良されていく過程では、カロリーベースで栄養価が高いことが重要だったんだよね。
つまり、炭水化物として食糧不足だから、そっちが大事で、実際にスペルトコムギはもみ殻が厚く、同じような大きさの粒でも胚乳(=デンプンの貯蔵庫)が少ないのだ。
より小麦粉が多くとれるもの、と選んでいくと、胚乳が大きくなるものが選ばれるわけ。
逆に、そこから取り残されることで、必須アミノ酸やミネラルが豊富、という特徴が残るのだ。
これって実は日本の古代米でも同じような話なんだよね。
カロリーベースの栄養価や食味を考慮するとどうしてもデンプン質が多いものが選ばれていってしまうのだ。

ほかには、独特の風味があるとか、消化によい、というのもあるのだ。
風味は雑味成分でもあるので、パンコムギからは消えてしまったものが残っているというもの。
これは好き嫌いが分かれるけどね。
消化によい、というのは、どうもグルテンの質の違いから来るものみたい。
グルテンアレルギーではなくとも、グルテンを摂取しすぎると消化しきれなくいておなかを壊すことがあるんだよね・・・。
いつもうどんを食べているうどん県の住人なら問題ないのかもしれないけど。
上にも書いたように、スペルトコムギのグルテンは水に親和性が高いので、より消化しやすいみたい。
かつ、デンプンの分解とその後のブドウ糖の吸収を緩やかにすることも知られていて、いわゆる「低GI」というやつなのだ。
これって健康食品が好きな人が求める性質だよね。

というわけで、ボクはあんまり認識していなかったんだけど、日本でもけっこう広まってきているみたい。
今度「意識高い系」のスーパーとかに行ったときに探してみようかな?
フランスにいた頃は見た覚えはなかったんだけど、ひょっとしたら健康食品などを扱う店なんかにはあったのかも。
でも、フランス人はとにかくバゲットにこだわるから、あまり普及はしていないだろうけど(笑)

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