2020/08/29

和ハーブ

 海外でも注目されている和のハーブと言えばシソ。
ユズやサンショウなど、和のフレーバーがかなり市民権を得てきているんだよね。
欧米の人からしたら「エキゾチック」なものなのかも。
日本人からすると、この時期にはそうめんやそばの薬味として大活躍するし、刺身や冷や奴にも欠かせないよね。
実は、葉物として食べるシソは春の終わりから夏にかけてが旬なのだそうだよ。
ほぼ1年中買えるけど。

シソは、もともとはヒマラヤやミャンマー、中国南部あたりが原産地。
日本にも相当早い時期に伝わっていて、縄文時代の遺跡で見つかっているほか、平安時代には本格的に栽培していた、というような記録もあるとか。
古くから親しまれてきたようなのだ。
香味食材というよりは、薬用植物としての扱いだったみたいだけど。
こうした背景の一つには、シソが極めて生命力の強い植物種である、という事実があるんだよね。
繁殖力ではミントも有名だけど、シソも劣らないものがあって、すぐに増えてしまって、駆除しようとしてもなかなかできないみたい・・・。
独特の清涼感のある香りは虫を寄せ付けない効果がある、というのも大きいみたい。
薬味に使うのもシソの精油成分に殺菌力があるためで、口中をさっぱりさせるだけでない、実用的な意味合いもあるのだ。

当たり前のことだけど、シソには大きく2つの種類があって、それが赤じそソと青じそ。
名前のとおり、葉が赤い(実際には村先っぽい色)なのが赤じそで、普通の緑色のものが青じそ。
実は、赤じそが基本で、青じそは変種だそうなのだ。
赤じそは酸性条件下にする(例えば、酢の中に入れる)とアントシアン系の赤橙色のシアニジンという色素が真っ赤に発色するのだ。
梅干しの赤はこの色で、塩漬けにした梅からしみ出てきた梅酢(主成分はクエン酸)によって発色したもの。
京都の柴漬けの場合は発酵して出てくる乳酸で発色したものだよ。
ただし、強いアクもあるので、いったん塩もみしてアクを抜いてから使う必要があるみたい。

青じそのうち、特にわかめの柔らかい葉を摘み取ったものが「大葉」。
シソという植物は花や実も食用になるので、わざわざ「葉」ということを強調しているわけだよね。
戦後になって愛犬の農協が販売時の名称で使ったものが一般名詞化したものなのだ。
一般的に薬味に使われるのはこの大葉を刻んだものだよね。
そのままでもにおいはするけど、刻むことで香りが強くなるのだ。
これは細胞がつぶれて中から香り成分である精油が揮発しやすくなるため。
でも、すぐに香りは飛んでしまうので、直前に刻む必要があるよ。
シソチューブなんてのもあるけど、あれはその香り成分が飛ばないようにペーストに練り込んであるのだ。

似た形の葉ものに「エゴマ」があるよね。
こちらは独特の香りがないのだ。
やはり東南アジアの方の原産で、むしろ、東南アジアではシソではなく、エゴマが薬味としてよく使われるようなのだ。
韓国料理の薬味にも出てくるよね。
エゴマも縄文時代には日本にあったようだけど、葉を使うというよりは、実から油を取るのがメインだったみたい。
もともとの植物名は「え」で、ゴマのように種子から油を摂るから「エゴマ」なのだ。
逆に、シソは古代には「イヌエ」と呼ばれていて、「え(=エゴマ)」に似て非なるもの、という語源なんだよね。
おそらく、縄文時代だと葉ではなく実の方が重要で、油がとれるエゴマがより重要であったからなのだ。
現代日本ではシソの方がはるかにメジャーになっているけどね。

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