2020/08/01

酵素を飲む?

ネットで、衝撃的なことを知ったのだ。
どうも、「酵素シロップ」なるものがはやり始めているらしい・・・。
一時期はやった「酵素ジュース」というのは、これを少し薄めて飲むもののようなのだ。
それを自家製で作るんだって。
っていうか、「酵素」ってただのタンパク質だから、口から摂取しても胃の中で胃酸により分解されるし、その後、各種消化酵素によりアミノ酸まで分解されてから吸収されるんだけど。
つまり、そのまま飲んでもあまり意味はないはず。

大根おろしと一緒するともちや揚げ物がさっぱりと食べられるけど、これは大根おろしの中に含まれる酵素の力で、一緒に食べている間にデンプンやタンパク質、脂質をあらかじめ分解してくれて消化を助けるため。
こういう意味であれば酵素を摂取する意味はあるんだけど。
どうも、はやっているのはそういうのではなく、とにかく「酵素」なるものは体によいので、それを接種すれば健康になるはず、という短絡的な思考。
コラーゲンやヒアルロン酸をサプリで摂取してお肌つるつる、なんていうのと同根だよ。
似非科学の餌食になっているのだ(>_<)

ネットで調べて出てくる「酵素シロップ」の作り方は簡単で、砂糖と果物を交互にして瓶に詰め、時々かき回しながら日の当たらないところに置いておくだけ。
すると、酵素がシロップの中に溶け出してくるんだそうだよ。
ぷつぷつと泡が出てきたらちょうどよいころで、あまり長い時間置いておくとよくないので、後は冷蔵庫で保存なんだそうな。
これって、微量にアルコール発酵しているだけで、冷蔵庫に入れようというのはアルコール度数が1%を超えると密造酒になるからなんじゃ?

まず、砂糖漬のようにする理由は、おそらく、果物の細胞壁を浸透圧で壊して、中のものを溶かし出すため。
これは漬け物のときの塩と同じだよ。
よくあるレシピでは砂糖を1.1倍量とあるけど、こうすることで果物の実から水分と各種成分を外に溶かし出すのだ。
その中には、ビタミンやミネラル(カリウムやマグネシウム)なんかがあるわけだけど、果物細胞中にもともと入っている「酵素」も入っているはずだよ。
ただし、これは出てくるだけで増えはしないし、果物中の酵素を摂りたいなら生食したり、生ジュース(プレスジュース)にすればいいだけだけど。

これを適宜かき混ぜながらしばらく放置するわけだけど、ぷつぷつと泡が出てくる、と言うので、おそらく何らかの発酵が起こっているのだ。
泡が出るということは、二酸化炭素が発生しているはずなので、アルコール発酵が起こっていると思われるよ。
乳酸菌もアルコール発酵させる場合もあるけど、この場合は、もともと果物に付着している酵母じゃないかな。
ワインもブドウにもともとついている酵母で発酵させるし。
酵母によるアルコール発酵は嫌気性条件下、つまり、酸素が少ない状態で起こる反応なので、時々かき回すというのは、アルコール発酵がどんどん信仰しないように、ブレーキを踏みつつちょっとずつ発酵させるためだと思うんだよね。

この発酵過程では、アルコールのほかにもいろんな成分が出てくるんだけど、重要なのは香気成分。
エステル系のいわゆる果実系芳香成分が作られるので、さわやかな香りになるのだ。
それと、酵母が中で育って増えていくので、必須脂肪酸や必須アミノ酸、各種ビタミン類なんかも少量増えるはず。
このほか、果物がもともと持っている酵素が外に出てくることで、糖質やタンパク質、脂質が分解され多ものも出てくるよ。
出てくるのはやっぱり脂肪酸やアミノ酸なんかだけど。
お酒でいうところの、香り成分やうまみ成分が出てくると思えばよいのだ。
なので、ただのジュースや砂糖漬にした後に煮詰めるジャムに比べてこの部分で味・風味が違うはず。

ただし、どうも見ていると密造酒にならないようにほとんど発酵させないみたいだし、そこまで劇的に変わるとも思えないんだよね。
かつ、酵母由来の栄養成分にしても、栄養補助食品として売っているビール酵母や英連邦ではおなじみのマーマイトやベジマイトのようなビール酵母由来の食品を食べた方が栄養は豊富だよ。
これらはおいしくはないし、むしろくさいけどね(笑)
かといって、香りを強めようと発酵を進めれば果実酒の密造になるので、アウトなのだ。

ここで気をつけたいのは、かなり怪しいレシピも出回っていること。
まず、砂糖を極力使わない、というものがあるのだ。
健康志向の人にはとても魅力的だけど、砂糖を大量に加えることで雑菌の繁殖を抑えつつ発酵をさせているので、砂糖を加える量を減らせば腐敗するリスクが高くなるよ。
ぶくぶく泡は出てきたけど酸っぱいにおいがする、とか。
同じ真菌でも酵母じゃなくてカビが生えるのだ(ToT)
そして、素手でよくかき回して、手の常在菌で発酵させましょう、というかなりやばいレシピもあるのだ。
よく手を洗っていればいいわけじゃなくて、どんな細菌がついているかもわからないのに、というのが驚き。
乳酸菌があればちょっと酸味が出る程度でいわゆる馬乳酒のような乳酸とアルコールが同時にできる発酵につながるけど、普通に腐敗するだけの方が多いんじゃないかな。
納豆をよく食べている人なら納豆菌が入るかもね。
それならまだよいけど、大腸菌とかだと食中毒のおそれもあるので要注意。

そういう意味では、自家製で作るというのはけっこう危険。
ぬか漬けほど手法が確立しているわけじゃないから、自家製ヨーグルトとか自家製天然酵母くらいのリスクかな。
ヨーグルトならヨーグルトメーカーがあるし、基本は種菌を使うのでよいのだけど、健康志向の人たちがあがめる天然酵母と同じようになると事故もそのうち起こるんじゃないかなぁ。
おなかを壊しても、「健康によいはず」の酵素シロップが原因とは思わないのかもだけど。
摂取できる栄養は他で完全にカバーできるものなので、あえて挑戦するものでもないと思うんだよね。
果実酒未満の微発酵ジュースがどうしても飲みたい場合以外は。

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