2020/11/14

「生」の意味

すごいニュースがあったのだ。
船橋の30代男性が、スーパーで購入した「秋鮭(生)」を生食して食中毒になったというもの。
この男性曰く、「(生)」と書いてあったので、生食できると思った、らしい。
っていうか、これはどう見ても「冷凍じゃない」という意味だよね。
普通にスーパーで買い物をしたことがあればわかりそうなものだけど・・・。
でもでも、よくよくこのニュースを見てみると、ちょっと怪しい記述も。
それは、「ルイベ風に食べようと、買った切り身をしばらく冷凍庫に入れてシャリッとさせた後、調味液に浸し、一口大に切って食べた」という部分。
サーモンの刺身のようにしたわけではなく、「ルイベ」風に、というところがあやしいのだ。

ルイベとは、ご存じ北海道の名物料理で、鮭の身をいったん冷凍して「から薄切りにしたもの。
普通の刺身とは違ってしゃりしゃりとした食感があるのだ。
でも、このルイベで大事なのは冷凍の度合い。
市販されているものは、-20度いかにある業務用冷凍庫で凍らせたもの。
家庭用冷蔵庫の冷凍庫の場合、だいたい-15度くらいまでしか冷やせないので、温度が高いのだ。
すると、鮭の身の中にいるかもしれない寄生虫(アニサキス)を死滅させるには、相当長時間冷凍保存しないとダメみたい。
この人の場合、ちょっと凍らせただけなので、それでは寄生虫は死滅していないのだ!


もともとルイベは、サケ・マス類の魚を冬のさなかに屋外に釣るし、冷凍と乾燥を繰り返すことで保存食としたもの。
夜のうちに凍ったものが昼間少し融けるときに、水分が少し抜けるので、一夜干し程度の乾燥度合いになって、味が濃くなるのだ。
そして、そのとき余分な脂も落ちるので、よりさっぱり食べられるようになるそうだよ。
そういう伝統的なルイベが今も流通しているのかどうかはよくわからないけど。
凍み餅とか凍み豆腐みたいな作り方なのだ。
この場合、じっくりと長時間かけて冷凍されるので、寄生虫は死滅させられるよ。
欧米だと魚の保存食は主に燻製だけど、同じような気候の土地は北欧にもあるから、魚を生で食べたい、という意識の違いが出ていおるのかもしれないね。

鮭の場合、えさとなるオキアミにアニサキスなどの寄生虫が潜んでいるので、それを食べて寄生虫を持つに至るわけ。
鮭が生きている間は主に内臓にいるわけだけど、死んでしまうと身の方にも移ってくるんだって。
とはいえ、いくらとりたてであってもリスクはあるので、寄生虫対策はしないと危ないのだ。
同じアニサキスでも、鯖の場合は酢締めにして「シメサバ」にされるけど、実は、酢締めに使う程度の酢の濃度ではアニサキスは死滅しないので、シメサバであっても当たることはあるらしいよ・・・。
鯖は傷みやすいから酢締めにするわけだけど、新鮮な状態ですぐに酢締めにしたものでないと危険なんだって。
こうなると、バッテラ著利焼き鯖寿司の方が安全ということか(笑)

一方で、現在はノルウェー・サーモンなどの生食できるものが売られているのも事実。
普通に切り身の刺身も売っているし、寿司ネタでも好まれているよ。
でも、これは完全養殖で管理された状態で育てられたもの。
アニサキスはえさから入ってくるので、そこを気をつけているのだ。
なので、名称も「サーモン」という表記で、生食のものは「鮭」とは表記されないのだ。
この辺はリテラシーの問題なんだけど、このあたりの食品の知識はきちんと持っていないと危ないよね・・・。

ちなみに、サケマス類は、海に下って大きくなって川を遡上するものと、そのまま川にとどまるものがあるよね。
例えば、イワナとかヤマメ、サクラマスなどなど。
これら陸域でしか生息していない「陸封型」のサケマス類は、海で寄生虫を持っているえさを摂取しないので、寄生虫がいることはまれ。
でも、完全にフリーというわけじゃないみたい。
渓流で釣ったイワナはその場でおろして刺身に、なんてのもたまに見るけど、リスクはあるみたいだよ。
養殖物なら問題ないんだけどね。

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