2020/11/21

発酵豆は世界を渡る

よく、納豆は日本独自の食品、みたいなことを言われるよね。
実際にボクもそう思っていたのだ。
韓国には、ひきわり納豆に似た「チョングッチャン」というのがあるのは知っていたんだけど(ドラマ「孤独のグルメ」でたまたま見た。)、それも戦前に持ち込まれたものが韓国で独自の発展をしたのだと思っていたんだよね。
でもでも、どうもそうではないらしいのだ。
ダイズなどの豆を発酵させた食品はもっとグローバルで、アジアを越えてアフリカまで広がっているらしい!
っていうか、欧米以外にはあるようなのだ。

豆を発酵させたものの最も古い記録は中国のもの。
今でも中華食材として使われている「豆豉(とうち)」だよ。
刻んだものが麻婆豆腐の味付けに使われたりするよね。
黒いつぶつぶのやつ。
あれは、乾燥黒大豆を戻したものに塩と麹を加えて発酵させ、さらにそれを天日干しした保存食品なのだ。
そのままポリポリかじってもいいし、刻んで調味料のように使ってもいいしい、というもの。

これは古い時代に仏教徒とも似日本にも伝わっていて、それが本来の「納豆」だったようなのだ。
今で言う「寺納豆」や「塩辛納豆」という糸を引かない方。
おそらく、鑑真和上が壊れてやってきたくらいのタイミングで伝わってきたもの。
ところが、どうも室町時代くらいの今のいわゆる納豆、糸引き納豆が出てきて普及した結果、「納豆」という名前をとられ、いったん忘れられてしまうようなのだ・・・。
その後、もう一度中国から留学僧たちが持ち帰り、また寺院を中心に作られるようになり、「寺納豆」と呼ばれるようになったのだ。
すでに「納豆」の名を取られていたので「寺納豆」という名称が改めてつけられたのはこのため。

この豆豉とか寺納豆は、塩蔵の上で麹で発酵させたもの。
なので、原料的には味噌や醤油に同じなのだ。
中国では、肉や魚、穀物などを塩に漬け、麹で発酵させた保存食をよく作っていて、それがペースト状になったものを「醤(ひしお)」と呼んでいたのだ。
豆を原料にした醤醢が味噌・醤油の源流。
豆豉を作る途中で、乾燥させずに豆をつぶせば味噌になるのだ。
そして、味噌を造っている途中に出てくる液性成分だけ集めると「たまり」。
この液性成分だけを効率よく作るようにすると醤油になるんだよね。

で、おおもとの中国のものは麹で発酵させるんだけど、どうも東南アジアやアフリカまで広がっている「納豆的な食品」は、日本の納豆と同じく、枯草菌の仲間で発酵させたものみたい。
ご存じのとおり、納豆は納豆菌で発酵させるわけだけど、納豆菌は常在菌で、もともとそこら中に付着しているもの。
他の雑菌との違いは、芽胞を形成しているときは熱に強く、一度煮沸したくらいでは死滅しないこと。
なので、蒸し大豆を稲わらで包むと納豆ができるのだ。
まだ豆が熱いうちに包むので、周りの雑菌は死滅し、生き残った納豆だけが後で増えるわけ。
これと同じようなことを東南アジアでもやっているみたいで、東南アジアの場合は、バナナの葉など、そこら辺の大きな葉っぱで包むみたい。
菌の違いがあるからか、日本の納豆ほどは粘つかないものが多く、乾燥させるものもあるみたい。
発酵の過程でタンパク質が分解されてうまみ成分であるグルタミン酸が豊富に含まれるので、昆布、チーズ、トマトなどに含まれるうまみ成分がたっぷりとあるんだよね。
なので、調味料的に使われることも多いみたい。

おそらく、こっちの系統の納豆はどこかが製法を編み出して、それが広がっていったというより、多くの地域で同じようなことをした結果、同じようなものができあがった、ということだと思うんだよね。
豆はかたくてゆでたり蒸したりしないと食べられず、それを何らかの形で保存しようと包んで置いておいたら発酵した、みたいな。
欧米の人にはそのねばりとにおいで嫌われることの多い納豆だけど、アジアやアフリカでは、その味が好まれ、それぞれ独自の発酵食品として親しまれてきているみたい。
これはなかなか興味深い。
アフリカの納豆ってちょっと食べてみたい。

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