2021/04/10

まみれたものたち

ネットで、ダイソーの油漬けカキの缶詰が話題になっているのだ。
110円(税込)でおいしいんだって、中国産らしいけど。
日本ではあまりなじみがないけど、欧米では油漬けってわりとメジャーな保存方法なんだよね。
肉や魚介だけでなく、野菜やキノコなんかもあるのだ。
日本でもっとも家庭に浸透しているのはシーチキンの油漬けかな?

日本では江戸後期になるくらいまで植物油は貴重品。
すでに平安時代にはゴマは伝わっていたけど、ごま油は高級品だったのだ。
当時は明かりのための燃料としても重要で、そのためには安価なものだと鰯の魚油なんかがつかわれたんだけど、なにぶん燃えるとくさいので、むしろ良い香りがする植物油は高級品だったのだ。
江戸時代に合って、菜種油が普及してきて、ゴマやワタの栽培が盛んになると食用油として植物油が使われるようになり、天ぷらのようなファストフードも生まれるんだよね・
それまでの日本式の保存食は、天日乾燥(干物や干し柿、かんぴょうなど)、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、ぬか漬け等々。
乾燥させるか高濃度の塩分で水分を吸い取ったものか、発酵系のものに漬け込んで腐敗じゃない、人間にとって都合の良い微生物を繁殖させたもの。

一方、欧州ではかなり早い段階でオリーブから油がとられていたんだよね。
紀元前数千年という古い時代からっちちゅうかいちいきで栽培が始まり、ローマ帝国の拡大によって、欧州、北アフリカ、アラブなどにも広まっていくのだ。
新約聖書の世界では何かと油をぬる、かける、なんて描写が出てくるけど、これらの油はオリーブ油だと考えられているよ。
日本との大きな違いは、むかしから食用油としても利用されていたこと。
そいう背景の中で、保存食を作るときにあぶらにつける、という発想が出てくるのだ。

最大のポイントは、油自体は腐らないということ。
油の中では腐敗性の微生物は繁殖できないんだよね。
おそらく、むかしから油は腐らないことはわかっていたので、その中に食べものを入れておけばいいんじゃね?、というのは自然な流れなのだ。
基本、水分があると腐りやすいのだ。
なので、乾燥させたり、塩分で水分を吸い取ったりして保存性を高めるわけだけど、水に触れないように油に入れるのでもいいわけなのだ(あまり水分が多いものをそのまま入れるとドレッシングのように水と油が分離するので、ある程度水気を切ったもの、すなわち、軽く干したものや塩漬けにしたものを油漬けにすることが多いのだ。)。
かつ、油には様々な香味成分が溶け出すんだよね。
香辛料やハーブを入れた油は良い香りや味がつけられるのだ。
それが漬け込む過程で食べ物にも移るんだよね。

では、油漬けに弱点がないかというと、そういうわけでもないんだよね。
油は腐敗しないけど、参加して劣化するのだ。
透明でさらさらな油が濁ったり粘ついたりするのだ・・・。
紫外線、空気(酸素)、熱の3つが劣化の要因。
なので、冷暗所で密閉して保存するのが油を長持ちさせるこつ。
イコール、油漬けをおいしく保つこつなのだ。
オリーブ油が多くの場合濃い色の瓶に入っているのは酸化を防ぐため。
おしゃれな油漬けの野菜なんかは透明な瓶に入っていることもあるけど、これを明るいところに置いておくとどんどん油が酸化してきて、味が落ちるよ。
要注意!

ネットで調べると、様々な油漬けレシピが見つかるのだ。
ジャムと違って、原理的には瓶を煮沸消毒しなくてもよいのだけどできるだけきれいなものをつかうのは言うまでもないとして、できれば色のついた瓶の方がいいわけ。
透明な瓶のバイ愛は光の当たらない場所で保存が原則。
漬け込む前に水分が多いと油もしみていかないので、野菜やキノコなら軽く干してから、肉や魚なら軽く火を通したり、燻製にしたり、塩漬けにしたりして水分をあらかじめ抜いておくとうまくいくみたいだよ。
ネットのレシピでは余ったお刺身を「ヅケ」ではなく油漬けにしましょう、なんてのがあったけど、そのまま切り身を油に入れてもおそらくそんなにうまくいかないのだ。
塩をしてしばらく放置してからキッチンペーパーでよく水分をふきとってから漬け込むと良いよ。

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