2021/06/19

蒸し米を炊いて祝おう

 むかしから「おこわ」が好きなんだよね。
基本的にはごはんはあたたかいものが好きなんだけど、それは、冷めた白飯はどうしても固くなって食感が悪くなるから。
でも、お赤飯やおこわは冷めてももっちりとしていて食感がそこまで損なわれないんだよね。
逆に、あたたかい状態で食べると違和感があるくらい。
妙に柔らかすぎるというか。

これは、「糯(もち)」と「粳(うるち)」の違いなんだよね。
お赤飯やおこわはもち米を蒸して作っていて、お釜で炊いたものではないのだ!
十分に水気をすわせてからせいろで蒸すんだよね。
お赤飯の場合はササゲ(又はアズキ)を煮た赤い汁につけておいいて、それでお米に色がついているのだ。
実は、崎陽軒のシウマイ弁当の俵ごはんはおこわで、冷めてもおいしく食べられるように、と蒸したもち米を使っているのだ。
とはいえ、もち米はむかしは贅沢品だったようで、お祝いの人か、いわゆる「ハレの日」に食べるものだったみたいだよ。

でもでも、歴史的に見ると、今のように白飯を炊き始めたのは江戸時代から!
古くから行われていて、「甑(こしき)」という土器は甕(かめ)と一緒に使ってお米を蒸すためのものだったんだよ。
おそらく、最も古い食べ方は単純に「水で煮る」という方法で、そのまま雑炊のように食べていたと思うんだけど、器に水気の少ない飯粒を盛り付けるようになる頃にはこの「蒸す」という方法が考案されたみたい。
大量にごはんを用意するときには工業的にも優れた方法で、業務用炊飯器の中には高温蒸気で蒸すタイプのものがあって、一般家庭で使われている炊飯器と方式が違うものがあるのだ。

時代が少し下ると「湯取り」という炊飯方式がとられるんだ。
これは長粒米を食べる東南アジアでも行われている方法だけど、大量の水で一端にてゆでこぼし、その後にせいろなどに入れて表面の水気を飛ばすのだ。
東南アジアの方では特に米の粘りけが嫌われるのでパスタのようにお米をゆでるイメージに近いよ。
平安期以降の古代日本も似たような感じで、いったんお米を似てザルなどでこし、それを蒸らして仕上げたようなのだ。
ゆでたお湯は米の粘りけが溶け抱いた「重湯」になっているので、そのまま廃棄せずに、そのまま飲んだり、他の料理に活用したりしたらしいよ。
そして、ザルに上げたゆで米をそのまま天日乾燥させたものが「干飯(ほしいひ)」で、携帯用保存食にしたのだ。
伊勢物語の「東下り」、八つ橋のところで出てくるやつだよ。

今のように、水にひたひたにして炊き始めて、仕上がりには水分が飛んでいる状態にするのは「炊き干し」と呼ばれる方法で、これは江戸時代以降に出てきたのだ。
いったんお湯の中に溶け出したデンプンを最後は米にすわせる形で炊きあげるので、炊きあがったごはんはふっくらとしていてつやが出るのが特徴。
炊くのは少し難しいけど、おいしく仕上がるのでこれが主流になっていったのだ。
ただし、「炊き干し」をうまくするにはお釜やかまどのような道具や技術の発達も必要だったんだよ。
江戸時代には、水から米を炊くのではなく、お湯の中にといだ米を入れて炊きあげる「湯炊き」という方法が一般的だったようだよ。
いわゆる時短で、早く炊けるんだけど、仕上がりはちょっとかためになるのだ(それだけ湯に触れている時間が短くなるから)。
寿司飯なんかにはちょうどよいので、寿司屋では今でもこの方法で炊いているところがあるみたい。

もち米の場合は蒸す方法が根強く残っているのは、性質の違いなのだ。
もち米は吸水性が高いので、炊く前の浸漬時間は短くて良いんだよね。
というか、長すぎると炊きあがりがぐちゃぐちゃ、場合によっては粒がつぶれて固まり常になってしまうのだ。
一方で、水をよく吸う性質であるためにすぐに水気がなくなってしまうので、「炊き干し」で多幸とすると、新までに火が通らないうちに水気がなくなってしまうわけ。
今の炊飯器は優れていてもち米モードもあるから簡単だけど、手動で火加減を調節して炊こうとすると相当難しいみたい。
なので、昔ながらの高温蒸気で「蒸す」という方法が残っていたようなんだよね。

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