2021/11/20

酸化で劣化

けっこうレバーって好きなんだけど、ちゃんと下処理していないやつはなんか臭みがあるよね。
血なまぐさいというのもあるけど、そうではない独特の臭みが。
それは、レバーに豊富に含まれる脂肪酸が酸化されることによって出てくるもののようなのだ。
中高齢者のいやなにおいと言われる「加齢臭」も皮脂が微生物により酸化されて出てくる物質が原因なんだよね。
たいていの場合、脂は酸化されるとくさくなってくるのだ。

レバーの場合、中に含まれる不飽和脂肪酸のアラキドン酸が、血液の中に含まれる鉄イオンが触媒となって酸化されてしまうのだ。
なので、レバーの臭み取りには「血抜き」が重要。
臭みができるのをできるだけ回避するわけだね。
牛乳につけるのは、すでにできてしまった臭み成分を牛乳中の粒子成分(乳タンパクや乳脂肪)に吸着させて除去指定るんだよ。
これらの粒子は表面がでこぼこで、そこににおいのもととなる成分がくっつくのだ。
さらに、ショウガやハーブなどにより、より強い風味でごまかす、というのもやるんだよね。
いわゆる「ベルサイユ方式」で、よりにおいの強いものでごまかす、マスキングという手法なのだ。

なので、レバーをおいしく食べるためには、調理前にしっかりと血抜きをする。
ちょっと鮮度の落ちているものはすでに臭み成分ができているので、牛乳につけてその臭み成分を取り除く。
取り切れない分はショウガなどのにおいの強いものでごまかす。
という三段階方式になるよ。
どれか一つをすればいいというわけでもなく、それぞれ原理が違うので、組み合わせが大事なのだ。


油脂が酸化して品質が落ちるのは一般的なことで、俗に「酸敗」と呼ばれる現象。
炭素鎖の中に二重結合のない飽和脂肪酸は酸化されにくいんだけど、二重結合を持つ不飽和脂肪酸は、その二重結合のところに酸素が結合しやすくて、酸化されやすいのだ。
でも、いわゆる「必須脂肪酸」はみな不飽和脂肪酸なので、ヒトは摂取しなければいけないという宿命もあるんだよね。
ビタミンE(トコフェロール)のような脂溶性の酸化防止剤を使うこともあるけど、大事なのは、しっかり遮光すること。
食用油の場合、肝臓で起こっているような金属イオンが触媒となって酸化が起こることは少ないのだ。
というのも、金属員は基本的には水溶液の中に存在しているけど、食用油の中にはほとんど水は存在していないので、作用しようがないのだ。
では、なぜ酸化が起こるのかというと、紫外線が悪さをしているんだよね。

酸素の存在下で不飽和脂肪酸の二重結合炭素のところに紫外線が当たると、二重結合の一本がきれて、不対電子(ラジカル)ができるのだ、
ここに酸素がやってくると、二つの酸素原子が炭素鎖に結合した「過酸化脂質」というおのができあがるよ。
ところが、これは非常に不安定なので、徐々に分解していくんだけど、そのときに、臭気物質であるアルデヒドやケトンが発生するんだよね。
これが「自動酸化」と呼ばれるもので、空気にさらしておくだけで起こってしまうんだ!
現象的には、火は出ていないけどゆっくりゆっくりと油が燃焼して言っている状態だよ。
実際に酸化熱という形で発熱もしていて、場合によっては自然発火現象も起きたりするのだ。
なので、窒素充填とかで酸素を排除して、さらに光をあまり通さない容れ物に入れておきでもしないと、使わなくてもどんどん油は劣化してしまうのだ。

そして、この酸化反応は熱により促進されるんだよね。
なので、加熱されうると劣化が早いのだ。
揚げ油を使い続けると劣化していくのはこのため。
さっき見た反応でいやなにおいが出てくるんだよね。
これが悪い油を使った揚げ物のいやなにおい。
そして、過酸化脂質はより低分子のアルデヒドやケトンに分解されるだけでなく、となりの過酸化脂質と重合してより高分子になることもあるのだ。
重合した脂質は黄色~褐色に着色し、粘度も高くなるんだ。
換気扇のしつこい油汚れがそれ。
質の悪い揚げ物の色が悪くなって油ぎれが悪いのもこれだよ。

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