2022/01/22

数字はうそをつかない

 有名な数学の確率論の問題で、モンティ・ホール問題というのがあるのだ。
何も難しくて解けない、というものではなくて、わりと単純な確率の計算で答えは出るんだけど、直感的に頭に思い浮かぶ答えとそれが異なるので、なんだか違和感を感じる、というもの。
モンティ・ホールさんが司会を務めていた米国のゲームショー番組に由来するものだよ。
その中で行われていたゲームでは、3つの扉があって、そのうちひとつの扉の後ろには商品の新車があって、1/3の確率でもらえる、というもの。
でも、ただ3つのうち一つを選ぶだけでは面白くないので、挑戦者がどれか扉を選んだ後、正解を知っている司会者が残った2つの扉のうち片方を開くのだ。
もちろん、ここで当たりを開いちゃうと面白くないので、はずれている方を開くんだけど、それを見た後、挑戦者は一度だけ扉を選び直すことができるんだよね。
このルールの中で、挑戦者は選んだ扉を変えない方が有利なのか、変えた方が有利なのか、というのがこの問題。

直感的には、司会者がひとつはずれを明けてくれているので、残る扉は2つで、当たりかはずれ。
すなわち、1/2の確率なので、最初に選んだ扉から変えようが変えまいが当たりの出る確率は変わらない、というように見えるよね。
ところが、実際には扉を変えた方が当たる確率が2倍になるのだ。
これがなかなか理解しづらくて、大きな騒ぎになったんだよね。
でも、ちょっと落ち着いて場合分けで考えてみるとそれがわかるのだ。

まず、挑戦者がそもそも当たりの扉を選んでいた場合。
この場合は扉を変えなければそのまま当たり、変えてしまうとかえってはずれ。
変えるか変えないかは1/2なので、もともと当たりを当てていた場合はどちらの選択をしても当たる確率は1/2になるよ。
当たり前だけど。
逆に、最初ははずれを選んでいた場合、やはり残る扉は当たりとはずれなので、この場合もどちらの選択をしても当たる確率は半々なのだ。
そうすると、やっぱり扉を変えようが変えまいが当たる確率は変わらないんじゃないの?、って思うよね。
でも、実際には、最初の選択をするとき、はずれの扉は2つあるので、最初にはずれを選んでいる確率は当たりを選んでいる確率の2倍になっているんだよね。

最初に挑戦者が当たりを引いていた場合(確率は1/3)は、残る二つの扉は両方ともはずれで、選択を変えるとはずれ(確率は1/2)。
最初に挑戦者がはずれを引いていた場合(はずれの扉は2つあるので確率は2/3)は、選択を変えると当たり(確率は1/2)。
よって、はずれの扉が司会者によりひとつ開けられた後に選択を変えた場合は、1/6ではずれ、2/6で当たりとなり、選択を変えると当たる確率が2倍になる!
ポイントは、当たりの扉はひとつなのに対してはずれの扉は2つあるので、最初の時点で非対称になっている、ということ。

これと似たようなすっきりしない話が、今まさにコロナで話題持ちきりの感染症の陽性判定。
多くの検査は制度100%というわけにはいかず、精度という概念があるのだ。
例えば、99%の精度で判定できる検査があった場合、陽性の人に対しては99%の確率で陽性判定、1%の確率で偽陰性になるのだ。
逆に、陰性の人に対しては99%の確率で陰性、1%の確率で偽陽性が出るよ。
ここまではよいのだけど、実際に数に当てはめると変なことが起こるんだよね。
1000人の人がいて、そのうち0.5%の人が感染していた場合、この集団に99%精度の検査をやってみると、陽性の人は5人、陰性の人は995人なので、この検査を実施して検査で陽性判定が出るのは、
5×0.99(真の陽性)+995×0.01(偽陽性)=4.95+9.95で、約15名と言うことになるわけ。
でも、上野式で内訳を見てみると、新の陽性者はほぼほぼ補足できているのに対し、その倍くらいの数の偽陽性がいるのだ・・・。
99%という一見すごい精度の高い検査であっても、感染率が低い場合はこうなってしまうわけで、流行初期の頃のコロナはきっとこんな感じで、偽陽性の人を隔離していた可能性が高いのだ。
ま、偽陰性の人が野放しになるわけではないからよいのだけど、思った以上に判定ミスの数字が大きくなるというのが驚きだよね。

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