2022/02/19

壁ドンしたら手に色がついた

 最近テレビCMでよく見かけるようになったのだけど、家の外壁の塗装は古くなると粉状のものが浮き出てくるのだ。
それに気づかずに壁に触れると手に色がつく!
学校とかの公共の建物で古い壁なんかを触ると経験があるよね。
これが「チョーキング」という現象で、樹脂塗料の中の顔料の粒子が表面に浮き出てきているものだよ。
もともと壁に塗っている塗料は、この顔料を樹脂に溶かし込んだものなんだけど、なんらかの理由で樹脂がなくなることによって、表面に出てくるようになるのだ。

樹脂がなくなる原因はずばり経年劣化。
永久によい状態が保てるわけではなくて、どうしても耐用年数があるんだよね。
で、その耐用年数こそがまさにこういうチョーキング現象が出るくらいなわけで、そうなると、塗料を塗っている意味がなくなってくるので、塗り直しが必要なのだ。
テレビCMはその塗装の会社のCMなんだよね。
手に粉がついあら塗り替え時だよ、ということ。

樹脂の劣化の原因はいろいろあるけど、メジャーなのは、太陽光に含まれる紫外線による影響。
樹脂は高分子で、ポリ塩化ビニルなら塩化ビニル、ポリエチレンならエチレンと基本単位となる構造があって、それが長く繋がっている構造なのだ。
その結合部分に紫外線が当たるとそこが切れることがあるんだよね。
多くの場合、紫外線が当たってエネルギーが加わるとそこで酸化反応が起きて酸素がくっつくんだけど、それは不安定な状態なのでその結合が切れて安定化するのだ。
これは高分子の脱重合という現象で、高分子である樹脂は水に溶けないことが甥のだけど、重合する前の基本単位の分子は水に溶けるものも多いのだ。
で、紫外線で結合が切れて脱重合が起こっているところが雨にさらされると、樹脂だったものが雨に溶け出してなくなってしまう、ということになるよね。
そうすると、樹脂層が薄くなってしまって、そこに混ぜ込んであった水に溶けない顔料だけがそこに残ってしまって、樹脂がなくなった分、顔料が表面に出てきたようになるんだよね。
これがチョーキングの正体。

樹脂にはいろんな種類があるので、壁塗りをする際は状況に応じて適切なものを使うわけで、乾燥/湿気に強いもの、高温/低温につよいものなどを選んでできるだけ劣化を遅らせようとはするけど、それでも経年劣化はするんだよね。
多少劣化が見えてきた段階でさらに表層に透明なコーティングをしてしまう、というのもあるけど、これもちょっと時間稼ぎをするだけだし、見た目がちょっと汚くなるんだよね。
ちゃんとやろうと思ったら、一回前の塗装をはがして、新たに塗装し直さないとだめなんだよね。
色落ちで見た目が悪くなるから塗り直せばよい、という簡単な話ではないのだ。

これはなんでそもそも塗料を塗っているのか、というところから来るんだよね。
色をつけて見た目をきれいにするため、というのも当然あるのだけど、もっと大きな理由は、壁面の保護。
壁面がむき出しだと、風雨や直射日光にさらされて壁材自体が傷んでしまうので。
そうならないように、表面に保護膜を作って保護しよう、というのが塗装。
そういう意味では、塗装が経年劣化で傷むのはある意味当たり前っていうか、そもそもの役割で、壁材そのものではなく、表面の塗料が傷むようにしているということなんだよね。
特に鉄材だと、参加してさびるともろくなってしまうので、表面をコーティングすることに大きな井mがあるのだ。
コンクリート剤なんかだと、雨に濡れると徐々に溶け出してしまうので、直接雨水に触れないようにすることも必要なんだよね。
そうやって保護膜を作ってあげるのが塗料で、その「バリア」が弱まってきたらはり直すのが必要だよね。

同じような保護膜は他のものにもあるよ。
日本の伝統工芸品でいえば漆器のうるし。
漆を塗ることで強度を上げるとともに水をはじくようにして、木製の食器が長持ちするのだ。
見た目がきれいになる以上に実用的なメリットがあるからこそ、かぶれながらもクロウしてうるしを集め、職人技でなんども塗って仕上げる技術が生まれたんだよね。
もう少し身近なものだと、健在にも使われるトタン。
トタンは薄い鉄板を亜鉛メッキしてコーティングしたもの。
鉄がそのまま外気にさらされているとどんどんさびてしまうけど、亜鉛で表面を覆うことで鉄の腐食を防止しているのだ。
これは、亜鉛の方がイオン化傾向が大きい=酸素と結合しやすい性質を利用したもので、鉄がさびるのは酸素と結合するからなので、先に亜鉛と結合しちゃえば鉄はさびないよね、ということ。
これにより、軽く加工しやすくってさびづらいという便利な建材になっているのだ。
といっても、むき出しの鉄よりはましだとしても時間が経てばトタンもさびるけどね。

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