2022/05/14

海のロボ

知床沖の事故で、沈んだ船の調査に無人潜水機が使われているのだ。
100mを超える深さだと、ダイバーが潜って探ってくる、というのが難しいんだよね。
そもそも潜水や浮上をゆっくりやらないと潜水病になってしまうし、酸素タンクの容量にも限りがあるので、活動時間も相当限られるわけ。
そこで、ロボットに代わりにやってもらおう、というのは自然な発想。
もともとヒトがある程度以上の深さの海中に潜ろうとすると、耐圧や酸素確保の問題で制約が大きいので、だったらロボットをさっと沈めて調べてもらおう、ということなのだ。

今回の事故で使われているのは「ROV(Remotely Operated Vehicle)」と呼ばれるもの。
一般的には「遠隔操作型潜水機」と言われるもの。
海中では電波で信号を送れないので、有線で母船につながっていて、水上で操作するのだ。
正太郎少年が鉄人28号を動かしているのと同じ。
マリアナ海溝を潜ったことでも有名な海洋研究開発機構の「しんかい6500」は中に人が乗るのでガンダム型だね。
ところが、このケーブルが問題で、ケーブルの長さの分しか活動できないのだ。
深さも広さもどうしても制限が出てくるんだよね。
かといってケーブルを長くすればいいというものでもなく、あまりにケーブルが長いと絡んだりするのだ。
今回の知床の調査でもケーブルが絡んでしまって操作不能に陥っていたよね・・・・。
水上でヒトが操作できるので、その状況に応じて臨機応変にいろんなことができるのが魅力だけど、この短所は大きいのだ。

そこで出てくるのが、自律型の無人潜水機。
「AUV(Autonomous Underwater Vehicle)」と呼ばれるものだよ。
こちらはあらかじめ与えられたプログラムどおりに動くロボットで、ロボット掃除機のルンバのようなものを想定すればよいのだ。
ケーブルが不要なので、深さや広さには自由度があるんだけど、逆に、ケーブルを介しての電力供給ができないということなので、バッテリーの容量から来る活動限界があるのだ。
将来的によい蓄電池我ができれば連続潜行時間は伸ばせるど、これがひとつのネック。

もう一つは運用の自由度には限界があるのだ。
自分で周囲の環境を認識して動作を変更することはできるのだ。
これは障害物を回避するルンバと同じ。
さらに、必要に応じて音波で多少の通信はできるのだけど、それでもROVのようには自由自在には動かせないんだよね。
このあたりは小惑星探査機のはやぶさに似ているかな。
はやぶさの場合はあまりにも遠いところにいるので通信に制約があるのだけど、リアルタイムで自在に動かせない、という点では似ているのだ。

でもでも、技術の進歩は著しくて、最近では、複数のAUVが互いにコミュニケーションを取りながら編隊で活動する、なんてこともできるようになってきているみたい。
宇宙でも小型衛星が相互にコミュニケーションをとって編隊飛行(?)する「コンステレーション」というのがあるけど、宇宙では電波や光で高速・大容量の通信が可能なのにたいし、海中では音波による低ビットレートの通信しかできないので、なかなか難しいみたい。
それと、電波信号を受信するGPDが使えないので、位置情報をリアルタイムで更新するには別の手立てを考える必要があるのだ。
これには、海底に「海中灯台」のような形で位置情報を音波で発信してくれる装置を設置するなどを考えているみたい。
調査海域があらかじめ決まっていないと使えない手だけど。
でも、こういうのができると、「海のドローン」的に、ちょっと小さめのものが複数機で調査する、みたいなことができるようになるので、今回の事故調査なんかにも大きく役立ちそうなのだ。
広い海域でつぶさにローラーで調べなくちゃいけないなんて場合は有用だよね。

このようにROVもAUVも長所短所があるので、用途に応じて使い分けられているのだ。
もちろん、もっともきめ細やかな対応ができるのは「人の手」なわけで、そこは有人でやる必要があるんだろうけどね。
それでも、ルンバのように無人でできることが増えればそれだけ効率的なのだ。
もうすぐ、海の中でロボットが活躍する時代がやってくるね。

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