2022/05/21

謎の湯

この前ひさしぶりに出張に行ったとき、温泉憑きのホテルに泊まったのだ。
ちょっと高いけど、せっかくなら、ね(笑)
朝晩と湯を堪能したよ。
そんな温泉だけど、日本は火山列島と言われるだけあって、ほぼ全国的に存在しているのだ!
温泉というと、火山のイメージがあるよね。

有名どころだと、草津、箱根、別府なんかは、火山の特徴である硫黄の香りが漂っているよね。
火山活動のあるところでマグマに地下水が温められて高温になって湧出するのだ。
これは非常にわかりやすいもの。
でも、一見近くに火山がないのに温泉がある場合があるのだ。
メジャーなのは、岐阜の下呂温泉。
でも、この温泉は活断層の上にあるのだ。
つまり、地下には大きな応力ひずみがあって、そこに蓄えられているエネルギーが熱(摩擦熱)の形で放出されるとまわりの地下水を温めるのだ。
断層にはひずみがあって住み魔も多いので、水がよくしみこんでくるんだよね。
これが「温泉脈」となるのだ。
一気にエネルギーが解放されると地震になるわけ。
そして、愛媛の道後温泉なんかは、過去の火山活動の余熱で地下水が温められたもの、と考えられているよ。
k大は四国にも活火山があったんだとか。
その熱がまだ残っているというのもすごいけど。
いずれにせよ、これらは地下にある高エネルギーにより地下水が温められているものなのだ。
そして、同じような成分が溶け込んでいるので、泉質も似ているよ。

一方で、東京なんかでもいくつか「天然温泉」と言われているものがあるけど、これは火山にも断層にも関係なさそうだよね・・・。
こういうのは、よくよく見てみると、地下かなり深くからくみ上げられているものなのだ。
地表の場合、高度が高くなると100mごとに0.6℃気温が下がるけど、地下の場合、地球の中心は熱いので、100m深くなるごとに2~3℃ほど温度が上がるようなのだ。
なので、地下深くの地下水はこの原理で自然に温度が高いわけ。
これが自然に湧き出る場合は、地表に出てくるまでにすっかり冷めてしまうのでお湯ではなくなってしまうのだけど、ボウリングで地下深くまで人工的に穴を掘って、そこからポンプでくみ上げてしまえば、温かい地下水を地表に届けられるのだ。
これが東京なんかで見られる「天然温泉」のお湯。

ちなみに、温泉法の定義では、第2条で「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義していて、温度要件か溶存物質の含有量要件を満たせば「温泉」になるのだ。
別表においては、温度要件は「25℃」となっているので、けっこう冷めていても法律上は温泉になるよ。
また、もっと低温でも、この定義は「又は(or)」になっているので、一定量以上の溶存物質があれば温泉を名乗れるのだ。
こういう低温の温泉(なんか矛盾しているけど・・・)の場合は加温するんだよね。
逆に、草津のように超高温で湧出する場合は「湯もみ」したり、加水して冷ますのだ。
人間にとってちょうどよい温度のお湯が出てくる場合ばかりではないということ。

しかしながら、これらにも属さない温泉があるのだ。
それが、和歌山の南紀白浜温泉や兵庫の有馬温泉。
万葉集の時代から知られる温泉だけど、そもそも近畿地方には活火山なんてないのだ。
活断層はあるけど、そこまで大きなものはなし。
ましてや、地下から無理矢理くみ上げているわけではないのだ。
長らく謎の温泉とされてきたんだよね。
ところが、ごく最近になって、ひとつの仮説が出てきたのだ。
それは、南から来るフィリピン海プレートが四国沖の南海トラフでユーラシアプレートの下に沈み込んでいるところで発生している高温の水が滲出してきているのではないか、ということ。
プレートには水も含まれているんだけど、沈み込む場所付近で軽いものはそこで放出されてしまって、高温の水が出てくると見られているんだ。
それがしみてきてわき出してきているわけ。
確かに白浜や有馬の湯は塩分濃度が高くて、他の温泉と泉質がかなり異なるんだよね。
この沈み込みの場所から離れてくると、プレート境界面の熱でマグマが発生し、そのマグマで地下水が温められ、という形でスタンダードな温泉ができるのだ。
これが多くの九州の温泉。

でも、まだ不思議なこと。
有馬温泉は活断層のちょうど上にあるのだ。
なので、南海トラフ付近のプレート境界面で放出されたもともとフィリピン海プレートに含まれていた高温の水が、その活断層の隙間にしみこんで地表まで出てくるんだよね。
しかしながら、南紀白浜にはそういう活断層はないのだ。
和歌山の活断層は中国・四国の間の中央構造線だけど、そこからははるかに南。
よくわからないけど、和歌山南部でそうしてできた高温の地下水が湧出しているっぽいんだよね。
というわけで、まだまだ謎が残るのだ。

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