2022/06/11

水を奪って固める

関東も昨年より1週間ほど早く梅雨入り。
今のところ「梅雨寒」でむしろ肌寒いくらいだけど、まもなく蒸し暑い、深いな季節がやってくる。
そして、この時期は、においの方も気になる・・・。
汗をかくとどうしてもにおいが気になるよね。
そして、日本人には少ないとはいうものの、両脇に爆弾を抱えている人もいるのだ。
そんなときに活躍するのがミョウバン!
小学校の理科の実験で再結晶を作った思い出があったりするけど、実は何に使うものかよくわからないんだよね(笑)
唯一覚えていたのは、どうも脇のにおいを抑えるのに効果があるらしい、というネット情報。
そこで、少しミョウバンについて調べてみたよ。

ミョウバンは、1価の陽イオンと3価の陽イオンが一緒に硫酸塩になっている複塩の総称。
これだとわかりにくいけど、一般にミョウバンと言われているのは「カリウムミョウバン」というやつで、これは、AlK(SO4)2・12H2Oという化学式で表されるのだ。
最後の12H2Oは12水和物という意味で、硫酸カリウムと硫酸アルミニウムが複合的に結晶構造を作る中に水分子が入り込んでいる、という意味。
12水和物というので、1結晶単位の中に12分子の水があるわけで、相当な量の水を含有している結晶なのだ。
かといって、再結晶実験するとわかるけど、水っぽいかどうかはよくわからなくて、透明な正八面体の大型の結晶が得らるよ。
食塩(塩化ナトリウム)の場合は、温度による溶解度の変化が少ないので、熱水にぎりぎりまで溶かし込んでその食塩水を冷やしても、さほど塩の結晶(通常は立方体の四角い粒)は得られないのだ。
ミョウバンの場合は、温度変化による溶解度の変化が大きく、熱すれば熱するほど多く溶けるので、熱水に大量に溶かし込んで冷やしてやると大量の結晶が得られるんだよね。
ゆっくり冷やすと結晶が大きく成長して面白いのだ。

ちなみに、街中では「焼きミョウバン」というのが売られているけど、これは12水和物の結晶を加熱して水を取り去ったもので、ミョウバンが小粒の結晶で薬局などで売られているのに対し、焼きミョウバンは白い粉状で乾物屋さんなどにあるのだ。
これは食品添加物として使われるから。。
有名なのはウニで、そのままだと時間経過でウニはとろけてしまうのだけど、ミョウバン水で処理するとタンパク質が少し変性してとろけづらくなるのだ。
ただし、ミョウバン独特の苦みなんかも出てきてしまうんだよね。
高級なウニは苦みが少ないとかいうのはこのためで、高級なものは鮮度がよいまま運んでいるのでミョウバン水で処理をしていないのだ。
ナスの漬け物の発色をよくするためにもよく使われているよ。
ナスの独特の紫色はアントシアニン系の色素だけど、この色素を安定化させるので発色がよくなるのだ。
古代ローマでは、質の悪い井戸水にミョウバンを加えることで不純物を沈殿させる、なんてこともやっていて、水の浄化作用もあるんだよ。
いずれにしても、少量くらいなら口にしても問題ない、というところがミソだね。

で、なぜそんな作用が出てくるのか、というところが問題。
ミョウバンの最大の特徴は、水分子を引きつける以下らが強く、まわりから奪ってしまう、という性質。
多くのタンパク質は水素結合で立体構造を支え、水分子をまわりにまとうことで水の中に溶け込んでいる(正確には「分散している」)のだけど、ミョウバンを入れるとミョウバンに水分子を奪われてしまうので、水素結合は崩壊して立体構造が崩れる(=変性する)とともに、水に溶けづらくなって沈殿するのだ。
これがウニを長持ちさせたり、水を浄化させる作用の仕組み。
アントシアニン系色素は水分子と同様に極性のある分子なので、ミョウバン中のアルミニウムイオンと錯体を形成し、安定化するのだ。
もともとアントシアニン系色素はpHの影響で色が変わることが有名だけど(アジサイの花の色が土壌のpHで変わるのとか)、紫色の発色で安定化されるのだ。
下手すると茶色くなって汚くなるので、これは重要なんだよね。

で、最初に戻って、脇の問題になるけど、これは複数の要因でそのような効果が出ていると考えられているよ。
ひとつは、酸性を示すミョウバンの消臭効果。
においのもととなる分子はアンモニアなどをはじめ、弱塩基性のものが多いのだ。
これが酸性のもので中和されるとにおわなくなるんだよね。
いわゆる汗臭いにおいは弱酸性のもので中和できるのだ。
次に、金属イオンによる殺菌効果。
消臭スプレーや殺菌スプレーでは銀イオンがおなじみだけど、アルミニウムイオンでも同じような効果があるんだ。
脇のにおいは、汗の中に含まれるタンパク質などが微生物によって分解されてにおい原因物質が出てくるから。
なので、清潔にするとにおわなくなるんだけど、常にアルコールで拭き続けるわけにもいかないので、金属イオンで雑菌の繁殖を抑えるというわけ。
さらに、最後に聞いてくるのがタンパク質の変性作用(=収れん作用)。
微生物のえさとなるタンパク質を変性させると、水に溶けづらくなるので固形物として析出してくるのだ。
これが物理的に汗腺につまって、汗が出にくくなるんだよね。
これにより、雑菌へのえさの供給も抑えられるわけ。
これらの作用が複合的に働いて消臭・制汗を達成しているようなのだ。
薄めの濃度のミョウバン液をタオルやティッシュにしみこませて拭いたりしたらいいらしい。

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