2022/06/23

「上」で待ってるぜ

もうすぐ参議院の普通選挙。
参議院は任期6年で3年ごとに定数(248)の半分が入れ替わる通常選挙が行われるのだ。
さっそく街宣車がうるさい・・・。
ま、2週間程度の話ではあるけど。

日本のように二院制をとっている国では、俗に上院と下院に分けられるんだよね。
日本の場合は衆議院が下院で、参議院が上院。
もともとは独立間もない米国では、当時の暫定種とであるフィラデルフィアにあった連邦議会(現在の独立記念館)の1階が人数の多い代議院(House of Representatives)、2階が人数の少ない元老院(Senate)だったのだ。
これで「上院」と「下院」になったわけ。
どちらが上というわけでもないんだ。
英国の場合は、上院が貴族院(House of Lords)、下院が庶民院(House of Commons)で、仏国の場合は、上院が元老院、下院が国民議会だよ。

英仏が典型的な名だけど、近大民主化の流れの中で、国の意思決定機関として議会が置かれるようになるわけだけど、そのとき、全国民の代表を集める、という建前なのが下院。
原則として人口比ベースで各選挙区に議員定数が割り振られるのだ。
一方で、それまでの体制では、貴族や聖職者たちだけが王の下に国政に参加していて、そういったおハイソな上流階級を代表するのが上院。
英国の貴族院は、戦前日本の貴族院と同じく、貴族や聖職者でないと議員にはなれないのだ・・・。
英国の場合は世襲貴族のほかに、一代限り(=本人限定)ということで叙爵された一代貴族もいて、現在は一代貴族の方が多いみたい。

米国は黎明期は貴族主義があったけど、正式に国として叙爵の制度はないので、あくまでも英国から名前を借りてきたもの。
下院である代議院が国民全体の代表として人口比率で定数が決まるのに対し、上院は各州の代表者ということで、50州に2名ずつの定員になっているのだ。
最も人口の少ないワイオミングと最も人口の多いカリフォルニアで同じ人数。
こうなると、下院と上院の役割分担がけっこう明確にできる気がするよね。
(しかも、米国の下院は任期が2年でそのたびに全定数が入れ替わるので、そこも大きく違うのだ。)
単に人口比のどんぶり勘定ではなく、あくまでも連邦政府として各州の自治に敬意を表している形と言っていいのかな。
例えば、米国政府の政治任用ポストの人事の承認や条約の批准は上院のみに認められた権限。
やはり連邦政府としての方針に各州がどう考えるか、というスタンスなのだ。

この米国の上院の制度なんかも参照にしながら、戦後日本で設立されたのが参議院。
戦前の貴族院と違って一般国民が立候補できるけど、衆議院が25歳から立候補できるのに対し、参議院は30歳からとちょっと年齢を高めに設定しているのだ(といっても、そんな加減ぎりぎりの若手議員なんていないけど・・・。)。
また、衆議院は任期4年で、かつ、解散ありなので、けっこうな頻度で全体構成が変わる=国民全体の代表として世情を反映しやすい、ということになっているわけ。
一方、参議院は任期6年で、かつ、解散なしの半数ずつの入れ替え。
これはその時々の世情を反映するというよりは、安定して国政について議論できる場、ということなのだ。
憲法上も、衆議院が解散して総選挙が終わっていない状況で緊急事態で国会の判断が必要なときは「参議院の緊急集会」という形式で立法府が意思決定できることになっているんだけど、まさにそういうことだね。

とはいえ、よく、参議院不要論というのはあるんだよね・・・。
上で見た米国上院とは違って、参議院だけに認められている権能というのは、まさに「緊急集会」だけで、基本的には衆議院に優越研が認められているのだ。
予算案や条約案は衆議院が先議、法案や内閣総理大臣の指名は、両院の議決が異なり、両院協議会を経ても一致しない場合は最後は衆議院が再議決して決めてよい、など。
これらは憲法上認められている優越性なのだ。
つまり、ねじれ国会で参議院では政権与党が過半数割れしていようと、衆議院さえ過半数をとれていれば、(無理すればだけど、)首相の指名も法案の可決も衆議院だけでもなんとかなるわけ。
例えば、法案については、衆議院の再議決には出席議員の2/3以上の多数での再可決が必要なので、野党主が出席する限りにおいては2/3以上の議席を確保しておくことが求められるのだ(いわゆる「絶対安定多数」)。
また、予算案や首班指名は、両院の議決が異なった場合、又は、衆議院が議決してから一定期間(予算案は30日、首班指名は10日)経過しても参議院が議決しない場合は、衆議院の議決を国会の議決とできるんだけど、予算みたいに年度待ちぎりぎりまで議論していると30日経過するのを待っていると暫定予算を組まざるを得なくなるのだ。
なので、過去の大物政治家も、参議院軽視の風潮に警鐘を鳴らすような発言をしてきたわけ。

効率だけを考えれば一院制でもよいような気がするけど、多数派だけで何でも決めてしまう制度は多様性を目指す社会においてマイノリティを抑圧することにもなりかねないのだ。
あので、こういう上院のような制度が残っているんだよね。
きっと見直しの余地はあるのだろうけど、完全になくしてしまう、というのは違うんじゃないかな、と思うのだ。

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