2022/09/10

やわらか~

昭和の懐かしい給食、という話題でよく出てくるのがソフト麺。
もともと学校給食用に開発された麺類なんだそうだけど、懐かしんで中年層が食べたがるので、スーパーやネット通販で買えるようになっているんだって。
ボクは正直なところおいしかった記憶はないけどなぁ。
懐かしくはあるけど。
で、最近Yahooの特集記事で再びこの名前を目にして、気になったので少し調べてみたのだ。

「ソフト麺」の正式名称は「ソフトスパゲッティ式めん」というそうで、これは景品表示法に基づいて事業者団体が作る公正競争規約である「生めん類の表示に関する公正競争規約」では、「小麦粉に水を加えて練り合わせ、製めんし表面糊化した後加工したもの」と定義されているんだ。
これだとわかりづらいんだけど、簡単に言うと、製麺した後にゆでてから、さらに加工したもの、ということ。
Wikipediaの説明では、蒸した後にゆでる、とあるけど、実際は逆で、ゆでてから袋詰めして「蒸熱殺菌」されたもの。
これはさっきのYahoの特集記事で実際に製麺業者の人がそうしているからそうなのだ(笑)

「表面糊化」というのは、麺の表面付近のデンプンが糊化(アルファ化)すること。
糊化は、デンプンが熱によりまわりの水を巻き込んでゲル状になった状態。
お米を炊くともっちりとやわらかくなるのがまさにそうなのだ。
麺類をゆでると、麺の表面から水分が浸透していくんだけど、パスタではアルデンテなんて言ってshinnが残るくらいでゆであげる、なんてことがあるように、表面から中心に向かって徐々に水分が浸透していくのだ。
なので、表面付近は水分が多く、麺の中心付近は水分が比較的少ない状態なんだ。
これが麺独特のぷつっという適度な歯ごたえを与えているんだよね。
全体に均一に水分が分散しているおもちとは食感が違うのはこのため。

これはゆでることで麺の表面から徐々に水分が浸透していくからなんだけど、蒸した場合はこうはいかないのだ。
蒸して作る麺ってあんまりないので直接比較はできないけど、比較的近いのは小麦デンプンの皮を使った点心類。
蒸し餃子の皮なんかを想像してもらうとよいのだけど、ゆでた麺とはまた違う食感だよね。
これは、ゆでる場合に比べてさらにゆっくりとして水分が浸透していかないので、じっくりと水がしみていく結果、かなり均一に水分が浸透してしまうのだ。
なので、全体としてもっちりするけど、ぷつっという麺類にあるような歯ごたえはないわけ。
なので、蒸し上げた場合は、表面糊化にはならないのだ。
ま、ゆでてから蒸しても、蒸してからゆでても、最終的にできあがるものは同じような気がしなくもないけど。

ソフト麺の場合は、熱湯でゆで水でしめ、パックするのだ。
このパックしたものを高圧蒸気で殺菌することで、日持ちよくするとともに、芯までしっかり水分が浸透し、ぷつっという麺類独特の歯ごたえがなくなり、全体にもっちりした感じの食感の麺になるよ。
蒸す前だとほぼ細いうどんなんだそうだけど、蒸した後にだいぶ様変わりするのだ。
でも、実は、芯までしっかり水分が浸透した状態というのは、麺類が伸びた状態でもあるんだよね。
麺類が伸びるという場合、芯まで水分が浸透して歯ごたえがなくなるとともに、糊化したデンプンが老化して弾力性が失われ、かたくなったことを指すのだ。
通常は冷め切ってかたくなる状態までいくことはそんななくて、まわりのつゆや汁の水分をさらに吸い込んで芯までしっかり水分が浸透してだらっとした状態になると「のびた」って言うよね。
その意味では、ソフト麺ではできあがり時点ですでにのびているのだ。
でも、もともとそういうものなので、それ以上は変化していかないわけ。
つまり、これ以上は「のびない」ので、給食のように食材が配送されてから食べるまでにけっこう時間がかかる場合でも問題ないのだ。
この最初から伸びているような食感が「ソフト」なわけだけど、この食感をあまり好きになれない人もいるわけだよね。

ソフト麺がうどんと違うのはこれだけではないのだ。
なんと、原料の小麦粉が違うんだよね。
最初に塩と水と一緒に小麦粉を練って生地を作る工程はうどんと全く同じなんだけど、使う小麦粉の種類が異なるのだ。
通常うどんに使われるのは中力粉。
でも、ソフト麺に使うのは強力粉。
パンに使う小麦粉だよね。
これには理由があって、もともとはパン用に支給されていた学校配給粉という強力粉にビタミンBが配合された小麦粉を使っていたから。

高度成長期くらいのこと、まだまだ日本全体の栄養状態はよくなかったので、学校給食用のパンに使う小麦粉が配給されていたんだって。
でも、毎回パンだけだとメニューの幅が狭くなる。
当時はまだパン食もそこまで一般的ではないからね。
そこで、パン用に配給されている小麦粉で麺類を作ってみてはどうか、と考案されたのがソフト麺のはじまりのようなのだ。
現在は配給粉はないようなので、独自に強力粉を原料に作っているみたい。
まさに学校給食という枠組みの中で考案され、工夫されてきた麺なのだ。

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