2022/10/22

残り物には・・・

 最近年中スーパーで甘酒を見かけるようになったのだ。
暑い時期は冷やし甘酒、寒い時期はむかしながらのあたためるタイプ。
ビタミンB群や必須アミノ酸が豊富で優しい甘さ、とかいって、健康食品的な位置づけなんだよね。
発酵食品全体がはやっているというのもあるけど。
いわゆる「甘酒」には大きく2種類あって、米麹でお米のデンプンを糖化させて作る「一夜酒」とも言われる発酵飲料の甘酒と、清酒の副産物である酒粕をお湯で緩く溶いて甘みをつけた甘酒。
神田明神の名物の甘酒は前者だけど、お祭りなんかで露店で売られているのは簡単に作れる後者なのだ。
僕は割と酒粕の甘酒が好き。
で、今回は酒粕の話。

日本でも伝統的に酒粕は利用されてきていて、三平汁や粕汁のように汁物、魚介類の粕漬け、奈良漬けなどの漬け物、しもつかれのようなあえもののベースになったりするのだ。
健康食品として注目されてきたので、むかしなら砕いて甘酒の原料にする、くらいが一般家庭の使い方だったけど、ネットに酒粕を利用した料理やお菓子のレシピもたくさんあるし、いろんな使い方が広がっているようなのだ。
清酒の副産物である酒粕は、米麹によるデンプンの糖化の後に酵母がルコール発酵をしているので、イクラ搾り取っても微量のアルコールを含んでいるのだ。
これがすがすがしい風味を与えてもいるんだけど。
この酒粕に微量に残っているアルコールを蒸留して取り出して作られるのが「粕取り焼酎」。
戦後は、同じ音の「カストリ」のなでもっと質の悪い、何からできているのか出自がわからない闇酒があったんだけど、九州なんかの清酒を造る地方では、清酒を作った後に酒粕からさらに焼酎を造るのは一般的だった見みたい。
もう少し手間をかけて、酒粕にさらに水と麹を加えて残った糖分をアルコール発酵させる、酒粕焼酎というのもあったみたい。

水や麹を加えずにそのまま熟成させると、メイラード反応で風味が増してくるんだけど、それが奈良漬けをつけるときに使う踏込み粕。
見た目は味噌に近いのだ。
アルコール発酵でなくて、酒粕を酢酸発酵させると粕酢と呼ばれるんだけど、この発酵させた踏込み課すから作ると、高級なお寿司屋さんで出てくる赤酢になるのだ。
江戸時代は米からそのまま作る米酢より安価だったのでファストフードの寿司に使われていたみたいなんだけど、今では逆に御高級なお寿司屋さんでしか見ないのだ。
そして、この酒粕中にいる酵母の発酵力をパンに使うこともあって、有名なのは酒まんじゅう。
木村屋のあんパンは酒種だけど、酒まんじゅうをヒントに作ったんだとか。
ちなみに、今では酒種パンは、酒粕ではなく、日本酒造りに使う酒母(米麹に酵母を繁殖させたもの)を小麦粉に混ぜて作られているよ。

日本酒の酒粕というといやな臭みはないし、むしろ粕漬けや奈良漬けは風味付けに使われているよね。
ところが、同じようなアルコール醸造後の沈殿物を集めたビール酵母だと、ちょっと独特なくさみがあるのだ。
これが英国のマーマイト、豪州のベジマイトのもと。
日本だと、エビオス錠や強力わかもとと言った方がとおりがいいかな。
コメでなくて大麦を麦芽で投下させた後にアルコール発酵させた後に残るものだけど、最初の原料が違うだけで、ずいぶんと最終形が異なるものだよね。
こっちも一時期健康食品として注目を集めていて、そままビール酵母という名のくさい茶色の粉末がサプリコーナーに並んでいたよね。
それを錠剤の形に固めてあげるとエビオス錠。
塩分などを加えてペースト状にしたのがマーマイトだよ。
生物学を専攻した人だと、バクテリアを増殖させる培地を作るときに使うイースト抽出物というのがあるけど、これもビール酵母。
なので、実験でバクテリアを使っていた人は、苦手なにおいなのだ。
バクテリアに過不足なく栄養を与えるために入れているので、栄養面ではとても優れているんだけどね。

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