2022/10/15

はい、解散、解散

 ここのところ、宗教法人のことが世間の大きな関心になっているのだ。
果たして、解散命令ていうものが出せるのかどうか。
っていうか、法律の規定がある以上は理論上は出せるんだろうけど、本当にそういう判断ができるか、という問題なんだよね。
紀藤弁護士なんかは問題なくできるはずだから、司法に訴えるべし、という論調。
現時点では、文化庁が難しいとか言いながらごねているように見える構図で報道されているよね。
で、実際問題、宗教法人の解散ってどうなっているのか、ちょっと法律を調べてみたのだ。

宗教法人は宗教法人法により規定されている法人格。
いわゆる一般社団や一般財団のような民間法人とは少し異なる体型なので、個別に法律があって、この法律の所管が文部科学省(文化庁)なんだよね。
まず、宗教法人の設立なんだけど、これは他の民間法人と同じように、設立登記をもって設立されるのだけど、その設立に当たって特殊な手続が必要なのだ。
それが「規則の認証」というもので、これは法人としての根本的な規則となるもの。
一般社団で言う定款、一般財団で言う寄付行為に当たるもので、法人の目的、名所、事務所の所在地、法人内のガバナンスなんかを定めたもの。
この規則について、設立前に所轄庁の認証を受ける必要があるのだ。
所轄庁というのは、ざっくり言うと、単一の都道府県内でのみ活動する場合はその都道府県庁(知事)、複数の都道府県にまたがって活動する場合は文部科学省(大臣)だよ。
申請に当たっては、自分たちが宗教法人であることを証明する書類を提出する必要があって、宗教団体としての活動実績なんかが必要なわけ。
で、規則がきちんとできているか、他の法令の規定にも適合しているか、そもそも宗教団体として活動しているものか(宗教団体を隠れ蓑にして他のことをしようとしている団体でないか)を確認するのだ。
問題がなければ認証され、その認証の結果の通知を受けて設立登記をすると宗教法人ができあがるよ。

で、こうして設立された宗教法人がどういった場合に換算するのかについても当然法律上規定されているわけ。
自分たちで「もうやんぴ」と任意に解散することもできるけど、自動的に解散するトリガーが法律上規定されていて、それは、①もともと自分たちで規則の中でこうなったら解散しますと定めていている場合はその状況になったとき、②他の宗教精進と合併して吸収されるとき、③破産手続が開始したとき、④所轄庁により規則の認証の取り消しが行われたとき、⑤裁判所から解散命令が出たとき、⑥神社本庁のような包括宗教法人の場合は包括する宗教団体がなくなったとき、の6つだよ。
このうち、今みんなが気にしている、「不埒な宗教団体を解散させたい」という場合は、④か⑤になるわけ。
④は、設立時点では問題がなかったんだけど、その後明らかに認証の基準に合致しなくなった場合取り消しになるのだ。
これは所轄庁側が認証基準に満たないことを証明する必要があるわけで、当然、所轄庁側は慎重にはなるよね。
規則が他の法令の規定に不適合になった、みたいなわかりやすいものがあれば別だろうけど、これは内部告発があってもけっこう判断がしづらいと思うんだよね。
ちなみに、認証の取り消しは不利益処分に当たるので、宗教法人側はその取り消しに対して不服申し立てはできるよ。

もう一つの⑤が紀藤弁護士なんかが指摘している解散命令。

こちらは、法律上あらかじめ規定された解散させるべき事由に該当すると認められる場合、所轄庁や利害関係者、検察の請求により裁判所が解散命令を出す、という仕組み。
その具体的な該当事由というのは、次のもの。
①法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと:つまり、わかるや水冷で言えば、かつてのオウム真理教によるテロ行為みたいなことだよね。
②宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと、又は、1年以上にわたってその目的のための行為をしていないこと:ということで、これは何かの隠れ蓑として宗教法人というものを使っているような場合だね。
③神社やお寺など礼拝施設を有する宗教法人について、その礼拝施設を滅失し、やむを得ない理由がないにもかかわらず2年以上礼拝施設を再整備しないこと:これは礼拝施設が事実上宗教団体としての活動の中心なのにそれがなくてすませてるってことは宗教団体としての活動実績にかかわるよね、という意味。
④1年以上渡って代表役員と代表者がいないこと:これはいわゆる休眠法人状態ということだね。
⑤認証を受けてから1年以上経過している場合で、認証の要件を見た索なっていること:これは認証の取り消しと同じ考え方。
で、この解散命令は、宗教法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄になるよ。
東京に本部があれば東京地裁ということだね。

今回の問題の場合、おそらく①や②に該当するかどうかが争点だと思うんだよね。
霊感商法というのは直感的には①に言う著しく公共の福祉を害する行為と思うし、そもそもその冷感症法自体が違法行為ではあるよね。
②はなかなか難しくて、霊感商法こそが当該法人の主活動になっていて、それ以外はほぼ何もない、ならいいんだけど、宗教的な儀式などをして、そこからもお布施をとる、みたいなスタイルだと、必ずしも宗教活動をしていないとは言えなくなるんだよね。
なので、おそらく解散命令は出せるはず、と言っている有識者は①を想定していると思うんだけど、これって、過去に適用されているのがオウム真理教とかなんだよね・・・。
詐欺商法みたいなものがどこまで「著しい公共の福祉を害する行為」にあたるのかどうかという司法判断がポイントなのだ。
こういうのは社会情勢の変化で判断も変わるものだから、今の世論を踏まえれば、そういう判断はあり得るとは思うけどね。

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