2022/10/08

古代の血

今年のノーベル生理学・医学賞は、スウェーデン出身でドイツのマックス・プランク研究所に籍を置くペーボ博士が受賞したのだ。
単独受賞なんだけど、その受賞につながった成果は、絶滅した古代人類の遺伝情報を解析する技術を確立したこと、だって。
一瞬なんだそれ、と思ったし、どうも本人もまさか自分が受賞するとは思ってなかった、みたいなことを答えているよね。
生理学・医学賞は医療の発展につながるような成果がとることが多いから、確かに意外性はあるんだよね。


で、具体的に何をしたかというと・・・。
ネアンデルタール人の骨(正確には骨髄?)からサンプルを抽出し、そこから読み取れる遺伝情報を詳細に解析したらしいのだ。
当然、現生人類である我々と比較して。
すると、どうも現生人類の中にネアンデルタール人の遺伝情報がほんの少しだけ残っているらしい、と突き止めたのだ。
当初は、旧人であるネアンデルタール人が進化して現生人類になったと考えられていて、その後直接的な系統のつながりはなく、あくまでもホモ属の別種、交雑もできなかったはず、というのが定説になっていたんだ。
でも、このペーボ博士の研究成果から、どうも現生人類とネアンデルタール人の間には交雑があって、その遺伝情報は髪の色や爪などに残っているらしい、とわかったみたい。
しかも、知己差もあるようで、どうもコーカソイド(白人種)にはわりと多く残っていて、現生人類発祥の地と言われるアフリカのネグロイド(黒人種)ではあるけどかなり少ない、ということみたい。
つまり、現生人類がアフリカで誕生し、「出アフリカ」で世界中に広がって行く際、すでにユーラシア大陸に清んでいたネアンデルタール人と遭遇し、交雑が起こって混血が生まれている可能性がある、ということなのだ。

種の定義の仕方にもよるのだけど、これはそれまで定説だった「別種」ではなく、むしろある程度の交雑が可能な「亜種」ということになるんだよね。
なので、現在では、ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス、現生人類は、ホモ・サピエンス・サピエンスという学名を主張しているグループもいるみたい。
すでにネアンデルタール人は絶滅してしまっているので検証はできないけど、それなりの期間、同じような地域に共存していたので、そういうこともあるよね、とは思うのだ。
これまでの考え方はどちらかというと殺伐としていて、現生人類にネアンデルタール人が滅ぼされた、的なものだから、それよりは納得感があるのだ。
(戦って直接的に滅ぼしたというより、その環境においては現生人類の方が生存に有利だったので、現生人類がより反映し、ネアンデルタール人が生存競争に敗れて数を減少していった、ということなんだろうけど。)

そして、さらに砂金になってわかってきたのが、インフルエンザに対する耐性に影響を持つ遺伝子をネアンデルタール人から受け継いでいる人たちがいるらしい、ということ。
これはどうもインフルエンザに弱い、みたいなんだよね
すると、さっきの生存競争の話で言えば、あるときインフルエンザに似た感染症が流行し、より耐性の低いネアンデルタール人が減って、ということも考えられるのだ。
さらに、どうもコロナ売りする野耐性についても違いがあって、それも一部の人はネアンデルタール人から受け継いでいるんじゃないか、という説もあるみたい。
確かに、コロナ所期はどうもコロナ感染の耐性には人種差・地域差がありそうだ、そのファクターXは何だ、みたいな話があったよね。
BCGにより自然免疫が高まっている、なんてのもあったけど、ひょっとすると、ネアンデルタール人の血が濃いかどうかも影響しているのかも。
ネアンデルタール人の遺伝情報の残り具合は地域差があるようだからね。
(ネアンデルタール人と物理的に接触しやすかった地域により国残っている、ということだね。)

こうなると、生理学・医学賞受賞の意味合いも変わってくるのだ。
古代人類との比較を通じて感染症などへの耐性の違いがわかると、なぜ今は現生人類しか生き残っていないのか、という謎にも迫れるし、今のコロナのような新たな感染症の脅威にさらされたときに人種や地域で耐性の差が見られたときのひとつのヒントになるよね。
まさか令和のコロナ感染がネアンデルタール人の血の濃さで影響を受ける、なんてのも予想もつかないよ。
実際にそうかもしれないと言うことを遺伝情報の解析で科学的に示す、というのは確かに人類最高峰の科学的成果だよね。
単純にすごい。

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