2023/04/01

江戸のメディアミックス

 今度のだめカンタービレが舞台化されるんだって。
マンガがアニメになり、実写ドラマ・映画になり、そして舞台へ。
人気コンテンツの王道の流れだよね。
でも、中には「歌舞伎」化されるものもあるんだよね。
ワンピースやナウシカなんかは歌舞伎になっているのだ!

でも、実は歌舞伎はむかしからいろんな流行り物を取り入れてきたんだよね。
そもそも「時代物」と言われる演目は、過去にあった有名な事件をもとにしたもので、幕府の規制があるので舞台を室町時代に移したりはするけど、話の流れを見ると、「あの事件か」とわかるような作り。
興行としてやっている以上は客が入らないといけないわけで、受けるなら何でも取り入れる、という姿勢だったんだよね。
今では伝統芸能になっているけど、そもそも江戸時代においては「現代芸能」なわけだし。
その根底のところは今でも受け継がれていて、伝統的な演目でも時事的なトピックを混ぜ込んだりするんだよね。

そうした流れの中で大きなものが、人形浄瑠璃の人気演目の歌舞伎化、というのがあるのだ。
人形浄瑠璃は、浄瑠璃(三味線を伴走として太夫が物語を歌うように語る演芸)に合わせて人形劇を行うもの。
今では文楽座のみが残っているので文楽とも呼ばれるよね。
徳島や淡路には地域の伝統芸能としての人形浄瑠璃が残ってはいるけど(これは蜂須賀公の庇護によるもの)。
で、人形浄瑠璃の演目で受けたものの一部が、実写化というか、人間の芝居に翻案されて、歌舞伎の演目になっているんだよね。
そういうのを丸本物というのだ(浄瑠璃の全場面を収めた台本を「丸本」と呼ぶことから)。
有名なのは、仮名手本忠臣蔵や菅原伝授手習鑑、義経千本桜など。
義太夫の語りに合わせてストーリーが進行していくのが特徴で、今で言う、ナレーション付のドラマなのだ。
音楽的、様式的演出に富むとか言われるけど、例えば、菅原伝授手習鑑の「車曳」」のような、牛車をぐるぐる回してから藤原時平が登場して場を収めるようなシーンは人形芝居がもとだからこそ。
義経千本桜では、吉野山(道行初音旅)のような所作事、いわゆる踊りを中心とした演出もそう。

逆に言うと、純粋に歌舞伎のために作られた演目、例えば、助六由縁江戸桜や暫みたいなやつは、決めポーズとかはかっこいいし、殺陣も見応えがあるんだけど、はっきり言ってストーリーは荒唐無稽で破綻しているんだよね・・・。
もともとは浄瑠璃というストーリーテリングがもとになっている丸本物との違いがまさにこれ。
もう純粋歌舞伎の方はエンタメに振り切っているのだ。
ある意味潔い(笑)

で、人形浄瑠璃の演目が歌舞伎にもなってまた人気になると、その名場面が浮世絵になったり、そのストーリーが黄表紙(絵付きの物語本)にもなったりするんだ。
つまり、今で言うと、画集が出たり、ノベライズされたり、ということ。
まさにメディアミックス!
伝統芸能とか言われると古くさいようにも思うけど、そのエンタメの展開はツールの差こそあれ今と変わらず、いや、むしろ、もっと貪欲なのだ。

0 件のコメント: