2024/01/13

無敵理論

 今回の能登半島の大地震で、やはりというか、あーあというか、SNSで「人工地震だ」という陰謀説が出回っているようなのだ。
トランプ氏が大統領に返り咲かない限りはDS(ディープステート)によってこういう人工的な災害が世界中で起こされるらしい。
きっと、フリーメーソンとイルミナティも関与していて、ロスチャイルド家がお金を出しているはずなのだ!
SNSが発達してからはよくこういう発言を見かけるようになったよね。
もとからいた人が「見える化」されただけなのか、SNSにより拡大再生産されているのか・・・。
けっこう本気っぽい感じなのでそこが怖い。

この手の陰謀論は社会が不安になってくると活発になってくるらしいんだよね。
陰謀論の特徴の一つは、いろんな不幸なこと、都合の悪いこと、いやなことの原因をすべて外に求めることができること。
そりゃそうだみたいな自業自得なものについても、「実は・・・」とできてしまうのだ。
そして、これに真っ向から反論しても無駄なんだよね。
これこれこういう証拠、事情があるのでそれは違う、と言ってみたところで、それも含めて工作されていて、世の人々は洗脳されている、真実を知っているのは自分だけ、と聞く耳を持たないのだ。
まさに「信じたいものを信じる」スタイル。
でも、そこまで巧妙う王策しているのにSNSとかで情報が駄々洩れのように流れてくるのか、というところには思い至らないのもミソ。
おそらく、「自分だけが真実を知っている」という優越感もくすぐっているからだと思われる。

もともと、人間は「よくわからないこと」っていうものにたいして漠然と不安を持つんだよね。
なので、間違っていてもいいから、何か理屈をつけて納得したがるのだ。
そうやってできてきたのが世界創生神話だったり、神話による物事の起源の説明や現象の理解なんだよね。
特に自然災害のような現代においても人の力ではどうしようもないようなものは「神の御業」で、祈念するしかないわけで、盛大にお祭りをしたり、人身御供をしたりとかしてきたわけ。
それが、現代は陰謀論にすり替わってきているんだよね・・・。

欧州では、古代ギリシアの大哲人たちは現代の科学から見れば間違っているかもしれないけど、理論構築をして世界を一定の法則の中で理解しようと努力していたんだよね。
それが古代ローマでキリスト教が国教化され、世界を理解する軸が聖書に移ったキリスト教世界になると一変するのだ。
すべては聖書に書いてあるとおりと。
イスラム教はもっと厳格にコーランを神聖視しているよね。
で、近代への移行の過程で、ガリレオ・ガリレイやコペルニクスは教会から、社会からたたかれるという憂き目にあうわけだ。
そうは言いながらも、すべてを聖書にゆだねるだけではもうにっちもさっちもいかなくなって、聖書というものが徐々に相対化され、科学という新しい視点で世界を見るようになって近代になるのだ。

それでも、やっぱり聖書が大事と思う勢力もいるわけで、それが米国なんかにはわりと多い、進化論の否定者。
現在ではID(インテリジェント・デザイン)理論という隠れ蓑も用意していたりするけど、この世界は神(或いは人街の領域の極めて知的な存在)により完璧に創造・調整されている、と信じているようなのだ。
そういうように神を信じる、宗教に根差す、というとそうなるんだけど、宗教が相対化されていった結果、宗教以外の軸で同じような考え方を持つ人たちが出てくるんだよね。
人類は宇宙人がクローン技術で想像した、神や天使は古代人類が宇宙人を表現したものだ、みたいな主張もあるよね。
その中で、世の中のよくわからないこと、理解できないことの裏側には、この世界を動かしている団体・組織があって、その意向ですべて動かされている、みたいなのもあるわけ。

世界はロスチャイルド家の財力により支配されているとか、米国政府はフリーメーソンの傀儡だとかそういうやつ。
で、そういう超越団体の中には、世の中の悪いことを一手に引き受けるような、ショッカー的な存在もいるようで、それがイルミナティだったり、DSたったりするみたい。
ま、そういう悪の組織が悪事をたくらんだ結果悪いことが起きている、と単純に考えた方が理不尽さがなくなるのは確かなんだけど、これってただの思考停止ではあるんだよね。
上でみたように、無敵理論で反証可能性もないし。
で、世の中は不安定になってくると、自分のせいではない、或いは、自分のせいとは考えたくないようないやなこと、不都合なことが増えてきて、それを悪の組織に責任転嫁していくのだ。
それでいったんは心の不安は取り除かれるかもしれないけど、それはアルコールで不安を一時忘れるようなもので、よくないんだよなぁ。
全く解決にはつながらないからね。

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