2010/07/17

いかろす君もびっくり?

先日、ソーラーセイルを使って金星に向けて航行中の小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)がガンマ線バーストを観測したのだ。
これは太陽よりもはるかに質量が大きな恒星が爆発してブラックホールになる際に放出されると考えられている放射線で、うまく観測できれば、更なる宇宙の謎の解明につながるんだとか。
で、このニュースを聞いて思い出したのが、ガンマ線とX線の違い。
両方とも波長がとても短い電磁波なんだけど、いまいち違いがよくわからないんだよね。
というわけで、改めて調べてみたよ。

ガンマ線は放射線の一種で、ヘリウム4の原子核のアルファ線、電子のベータ線に続いて見つかったもので、正体は原子核崩壊に伴い出てくる波長の短い電磁波だったのだ。
これは原子核内のエネルギー準位の遷移によるもので、アルファ崩壊で原子番号が小さくなったり、ベータ崩壊で陽子と中性子の比率が変わったりした後、原子核内に残っている余分なエネルギーが電磁波として放射されるものなんだって。
ま、意味不明だよね(笑)
ガンマ線は電磁波だけに放射線の中でも一番遮蔽がしづらくて、完全に遮蔽するには10cm以上の鉛の板がいるのだ。
アルファ線なら紙1枚で遮蔽できるし、ベータ線なら1cmのアクリル板で遮蔽ができるので大きな違いなのだ!
電離作用は弱いけど、透過力が高いのでめんどくさいんだよね。

一方、X線は高速の電子が金属などのターゲットに当たったときに発生する電磁波で、軌道電子の遷移に由来するものなのだ。
一番外側のエネルギーの低い軌道の電子がはじき飛ばされ、そこによりエネルギーの高い軌道にいる電子が落ちてくるとき、エネルギーの差分が電磁波として放出されるわけ。
電磁波を当てて励起した後に基底状態にもどるときのエネルギー準位の遷移で発生するものは相対的にエネルギーの差分が小さいので可視光領域になって、それは「蛍光」と呼ばれているのだ。
外から高速電子を当てたり、X線くらいのエネルギーの大きな電磁波を当てたりする場合はエネルギーの差分が大きくなって、波長の短いX線が出てくるのだ(X線を照射したときに出てくるX線は蛍光X線と呼ばれるよ。)。
このとき出るX線(蛍光X線を含む。)は原子核の種類ごとに波長が決まっているんだけど、特性X線と呼ばれ、未知の物質の同定にも使われるんだよ。
「はやぶさ」のカプセル内で採取された微粒子が小惑星イトカワ由来のものかどうかを確認する際にも蛍光X線分析が使われるみたい。

ちなみに、放射線の遮蔽というとすぐに鉛板が思い浮かぶけど、ベータ線がなまり板に当たるとX線が出てしまうので、先にアクリル板で遮蔽しておく必要があるのだ。
放射線防護をする場合(?)には、まずアクリル板、その次に鉛板の順だよ!
間違えるとガンマ線は遮蔽していても、新たにX線が発生していて被爆してしまうのだ(>_<)

X線の発見者はご存じドイツのレントゲン博士で、その功績でノーベル賞をとったのだ。
未知の電磁波と言うことで「X]線と名付けたんだって。
で、調べてみると波長の短い電磁波だったわけだけど、さらに調べてみると、実はガンマ線と波長領域が重複していたのだ!
これが混乱のもとで、発生機構の違いで定義しているので、電磁波の波長だけを調べてもどっちがどっちかは区別できないんだよね。
ただし、X線よりさらに波長が短いものを便宜的にガンマ線と呼ぶこともあるようなのだ。
こういうことをするから混乱に拍車がかかるんだけど・・・。

X線はレントゲン写真に使われるほか、いわゆる非破壊検査や結晶解析なんかに使われるのだ。
このときは金属製のターゲットに電子線を当てるX線源が使われているんだよね。
ガンマ線の場合は、放射性同位体のコバルトから放射されるものがガンマ線滅菌や放射線医療、放射線育種(放射線を照射して行う品種改良)などに使われるんだ。
工業的なX線写真と呼ばれるものの中にはガンマ線を当てて撮影されているものもあるようだよ(笑)

というわけで、どっちも波長の短い電磁波なわけだけど、出自も違うのできっちり区別してあげたいものなのだ。
他の電磁波の場合は波長又は周波数で一義的に定義されるからややこしいんだよね。
いっそのこと、波長領域で区別するときは「第三の名前」をつけてしまった方がすっきりするのかも。

2010/07/10

電波でさぐれ!

最近は天気が不安定だよねぇ(>_<)
前の日の予報が当たらないことが多いのだ・・・。
さすがに当日予報はそんなにはずれないけど。
で、そんな中でよく耳にするようになったのは雨レーダーだよね。
電磁波を使って雨や雪の位置や密度を観測しているんだそうだよ。
そこで気になったのがレーダーの原理。
というわけで、いつものように少し調べてみることにしたのだ。

レーダーは、電磁波を対象物に向けて発信し、その反射波を測定することで対象物までの距離や方向を調べるもの。
Radio Detection and Ranging(無線探知測距)の略なんだよ。
電波法施行規則という総務省令の第2条第1項第32号では、「決定しようとする位置から反射され、又は再発射される無線信号と基準信号との比較を基礎とする無線測位の設備をいう」と定義されいるんだって。
よくテレビとかで丸い画面を時計回りにまわりながら位置を調べている装置があるよね。
あれがレーダーで測定した位置と方向を画面表示にしたもので、レーダーを全方向に加点させながら照射して、それぞれの方向のどの位置に電磁波を反射するものがあるかどうかを調べているのだ。
大きな船や飛行機の管制塔でくるくる回っているアンテナのやつだよ。

これと同じよな原理が水中で使われるソナー。
こっちは水中で音波を発信して、その反射波を分析して対象物までの位置と距離を測るのだ。
Sound Navigation and Rangingの略でソナーなんだって。
こっちも似ているね(笑)
水中では電磁波が遠くまで届かないので、今でもんぱを使ったソナーが重要なんだよ。
電磁波に比べると波の進む速度が遅いから、レーダーよりはゆっくり探知することになるのだ。
潜水艦の映画でぴ~ん、ぴ~んと音が時々するのはソナーの音だよ。

で、レーダーにもどって、使う電磁波の話。
主に使われるのはマイクロ波とかミリ波と呼ばれる電波。
波長がmm、μmのオーダーなのでそう呼ばれるんだよね。
こたつなんかであたたかい(?)遠赤外線のすぐ外側にある電波だよ。
でも、この波長でけっこう調べられるものが変わってきて、波長が長い(=周波数が低い)と電波の減衰も少なくて遠くまで探知できるんだけど、波長が長いので分解能が低いのだ(分解能はどれだけ離れていれば2つのものが区別できるか、という指標だけどこれは波長に比例するのだ。)。
一方、波長が短い(=周波数が高い)と分解能は上がるけど、空気中の水分や雨粒などに吸収・反射され、減衰が大きいので、遠くまで調べられないのだ。
というわけで、調べる用途ごとに波長を変えて使っているんだよ。

最近の天気予報で出てくる気象レーダーは地上に置いてあるマイクロ波のレーダーで、パルス状のマイクロ波を照射し、雨や雪で散乱される電波を受信するんだ。
で、照射してから散乱波を受信するまでの時間計ると距離がわかるというわけ。
散乱波の強度を調べると雨や雪の密度もわかるので、降水量もわかるんだ。
各地点のデータを地図上に当てはめていくと、いつも見るよな雨レーダーの画像になるよ。
建物などの障害物があるとそれ以上先が調べられないので、通常はビルの上とか何もないところにあるのだ。
富士山レーダーは山の上から遠くまで見わたせるようになっているよ。
ちなみに、より波長が短いミリ波を使うとより小さい粒子を観測できるので、霧も見られるんだって。

さらに、このレーダーを航空機や人工衛星に搭載することもあるのだ。
それが合成開口レーダー(SAR)と言われるもの。
レーダーで分解能をあげようとするとどうしてもアンテナを大きくする必要があるんだよね。
でも、そんな大きなものは空中や宇宙に持って行けないので工夫されたのがこの方法。
移動しながら電波を発信し、反射波を受信するんだけど、ドップラー効果による波長のずれを計算して合成することで、複数のアンテナを並べたよな状態をバーチャルに作り出せるようになるのだ。
小さなアンテナ(開口)を合成して大きなアンテナ(開口)を実現するので合成開口(Synthetic Aperture)と言うのだ。

これもやっぱり電波の波長によって特徴があって、日本の「だいち」に搭載されているものはL波と呼ばれる波長の比較的長い電波を使うSARで、中程度の分解能だけど一度に広範囲を観測することができるのだ。
一方、海外の偵察衛星なんかに搭載されているのは波長の比較的短いX波を使うSARで、こっちは公分解能で細かくわかるけど、一度に狭い範囲しかわからないのだ。
こっちもやっぱり得意不得意があるので、用途によってどの波長のSARを使うのかを変えるんだよ。

というわけで、もっと難しい原理かと思っていたら意外と単純。
でも、最近は使い方も進化していてもっと複雑なものもあるみたい。
よく耳にするものだから、この程度知っておくとよいかもね。

2010/07/03

緑黒い卵

職場の歓送迎会で中華の食べ放題に行ったんだけど、事前にメニューが配られていたので、行く前からみんなで何を食べるのかけっこう盛り上がっていたのだ。
中でも、なぜか人気があったのが皮蛋(ピータン)。
苦手な人も多いけど、好きな人は「絶対食べたい!」っていう意見。
においにくせはあるけど、納豆やくさやと同じように人気があるところには人気があるのだ。
でも、ピータンってなんなんだっけ?、ということがよくわかっていなかったので、ちょっと調べてみたよ。

ピータンがアヒルの卵から作られていることは割と知られているけど(鶏卵に比べて少し大きいよね。)、一般には発酵しているかのように受け取られているように感じるのだ。
ところがどっこい、ピータンは「熟成」させているだけで「発酵」させていないのだ。
微生物の力を借りているわけではないんだよ。
魚の干物やハムなどの熟成に近い感じかな?

ピータンの作り方は変わっていて、石灰を混ぜた泥をアヒルの卵の表面に塗り、卵同士がくっつかないように籾殻をその上にまぶし、冷暗所において2~3ヶ月熟成させるのだ。
泥を落とすと殻も黒くなったピータンができあがっていて、殻をむいても黒いのだ(笑)
うまくいくと、白身(だった部分)の表面には白い針状の結晶が浮き出ているんだけど、それは熟成の過程で出てきたアミノ酸の結晶。
でも、殻をむくと強烈なアンモニア臭と硫化水素臭(いわゆる卵の腐ったにおい)がするので注意!

実際にこの熟成の過程で何が起こっているのかというと、タンパク質の変性と加水分解が進行しているのだ。
石灰中のアルカリ成分が徐々に卵の内部に浸透していくと、卵の中のタンパク質が変性して固化してくるんだよね。
ゆで卵が熱によるタンパク質の変性で固まるのと同じ。
変性の仕方が違うので、ゆで卵に比べて少し過多さが違うのだ(ピータンだと白身の部分がゼリー状だよね。)。
で、編成と同時に加水分解も起きていて、タンパク質がペプチドに、ペプチドがアミノ酸にとどんどん分解されていくよ。
このとき、卵の中の水分が使われるので、少し中身が減ったように(殻から浮いているように)見えるわけ。
ちなみに、ここで溶けきれなくなったアミノ酸が析出したのが殻をむいた時に見られることがある結晶なのだ。

酸性条件下での加水分解だと、ペプチドからアミノ酸になるくらいで止まるんだけど、アルカリ性条件下だとさらに加水分解が進んで、アミノ酸も分解されてアンモニアも発生してくるのだ。
これがにおいの原因その1。
さらに、システインやメチオニンなどの硫黄を含むアミノ酸が加水分解されると硫化水素が出てくるんだ。
これが腐卵臭と言われるもので、においの原因その2だよ。
アンモニアも硫化水素もしばらくすると空気中に拡散していくので、においが苦手な人は殻をむいてしばらく置いてから食べるとよいのだ。

さらに、硫化水素はにおいだけでなくて独特の色の原因にもなっているんだよ。
ピータンの黒い色の主な原因は硫化鉄の色。
ゆで卵もゆですぎると黄身のまわりが緑~黒色に変わることがあるけど、それは熱分解で発生した硫化水素と卵の中の鉄分が反応してしまっているのだ。
それがもっと進んだのがピータンで、白身は主に硫化鉄の色なので黒~褐色、黄身はもともとの黄色と混ざるのでもっと深い色になるというわけ。
微量に含まれている亜鉛や銅の硫化物の色も混ざるので、もっと複雑な色になるんだけどね。

さらに、生の状態ではもう少し黄身は透明感があってつやつやだけど、ピータンの黄身はゆで卵と同じように不透明なくもっと感じになるのだ。
これは、リン脂質のレシチンとタンパク質がうまくまざって乳化して、水の中にきれいに分散していたものが、タンパク質の変性のせいで脂質が分散できなくなって浮き出てしまうため。
マヨネーズを作るのに失敗して油分と水分が分離してしまっているような状態なのだ。
でも、リン脂質や脂肪分がアルカリ性条件下で加水分解されると、いわゆる「けん化」という現象が起こって、界面活性剤ができるんだよね。
すると、この界面活性剤が水と油を結びつけて入荷させるのだ。
なので、ピータンの黄身は固まっている部分ととろとろの部分があるんだよ。
ゆで卵の場合は熱変性が進めないうちに取り出してしまうのが半熟で、ピータンの黄身のとろとろとはちょっと様相が違うのだ。

というわけで、意外とピータンって科学的に考えてみるとおもしろいんだよね。
それと味の好みはまた別だけど(笑)
鶏卵で同じように石灰入りの泥を塗りつけてみて、経時的変化を追ってみるなんていうのも、ピータン好きの家庭では夏休みの自由研究としておもしろいかも。

2010/06/26

吹けば飛ぶような?

最近ちょっと困っているのがゴミ捨て。
ボクの住んでいる地域では、可燃ゴミと資源ゴミがメインで、洗ってもとれないような脂などが付着したプラスチックは可燃ゴミになり、洗ってきれいになるプレスチックは資源ゴミ。
当然、ペットボトルや空き缶、ビンも資源ゴミ。
で、はたと困ったのがスプレー缶。
さすがに空き缶とは扱いが違うんだろうけど、と思っていろいろ見ていると、どうも超レアものの「不燃ゴミ」だったようなのだ。
カテゴリはなくなっていたと思ったんだけど、電池や電球、蛍光灯などと並んで、高性能な焼却炉でも燃やせないゴミとして残っているみたい。

で、このスプレー缶、なんで不燃ゴミになるかというと、中に液化ガスが充填されているからなんだよね。
捨てる前にできるだけ中身を空にして、とは言っても、確実に履行されるわけではないので、中身が残った状態で燃やそうとすると缶が破裂して危険なのだ!
むかしは缶に穴を開けて捨ててください、なんて言われた時期もあったけど、ペットボトルでさえラベルをはがして、軽く水洗いをしてという下処理せずに出す人が多いので、それが実行されることは期待できないのだ(>_<)
というわけで、不燃ゴミになっているみたい。

このスプレー缶に入っている液化ガスについては、一時期フロンが問題になったよね。
一番最初は液化石油ガス(LPG)が使われていたようなんだけど、これは圧力をかけると簡単に液状になるし、石油の副産物として入手もしやすいから。
ところが、可燃性のガスなので扱いがむずかしいのも事実。
むかしは殺虫剤のスプレーなんかに使われていたけど、火気厳禁とはいいながら事故があったりしたのだ。
火が近くにあると火炎放射器のようになるからね・・・。

そこで出てきたのがフロンガス。
簡単に液化し、かつ、不燃性、無味・無臭で、人体にも無害というわけで使い勝手がきわめてよかったので一気に広まったのだ。
ところが、そこにも落とし穴が。
フロンは空気中に拡散した後、徐々に上昇していって、上空のオゾンと反応してしまい、有害な紫外線から地上を守っているオゾン層を破壊する性質があることがわかったのだ。
そこで使用が見直され、もともと気をつけて使われるようなところでは可燃性のLPGにもどり、そうでないところは代替フロンと呼ばれるものが使われ始めたんだよね。
ところが、この代替フロンも強力な温室効果ガスであることが判明したので、やはり使いづらいものになってきたんだよね。
で、最近では、もともと空気中にあるような二酸化炭素や窒素、或いはそのままの圧縮空気が使われているみたいだよ。

スプレーの中には、高圧をかけて液化してあるガスが詰め込まれているんだけど、これはノズルから噴射されると一気に常圧にもどされて気化するのだ。
そのとき爆発的に体積が膨張して拡散していくだけ。
ノズルの形状で前方向にだけ広がるように設計されているので、ぷしゅ~と吹き出してくるのだ。
このとき基本的には断熱膨張となるので、スプレーから出てくるガスは冷たいのだ。
最後にガスを出しきろうとがんばると缶が異様に冷たくなるのもそのせいだよ。

中身の成分は液化されて封入されているガスに溶かし込んであるか、懸濁された状態。
噴射されて液化ガスが気化するときに一緒に膨張しながら細かい粒子となって拡散されるのだ。
もともと液化ガスに溶けているものなのならそのまま噴射してかまわないんだけど、懸濁してあるだけのものだと、「よく振ってから」ということになるわけ。
均一に分散した状態で吹き出させないと缶の中にその成分だけが残っていってしまうのだ。

実は、同じような原理がカフェインの抽出に使われているんだよね。
二酸化炭素に高温で圧力をかけていくと、気体でも液体でもない超臨界流体という状態になるのだ。
気体の拡散性と液体の溶解性を持ち合わせていると言われていて、液体のようにもどを溶かすけど、粘性がなく広がっていくものなのだ。
この二酸化炭素の超臨界流体とコーヒーを混ぜると、コーヒーの中のカフェインが二酸化炭素中に溶け出すんだよね。
で、コーヒーの液体自体は混ざり合わないので、そこからコーヒーを取り出すと脱カフェイン(デカフェ)のコーヒーができるのだ。
これを使っているのがデカフェのインスタントコーヒーだよ。
カフェインが溶け込んだ超臨界流体の二酸化炭素を常温常圧にもどすと二酸化炭素は気体にもどるので、そこにはカフェインの粉末が残されるのだ。

スプレーからはだいぶ外れたけど(笑)、液状化したガスに溶かし込んで、というところは同じだよね。
イメージ的に普通気体だと思っているものに溶かすので不思議な感じがするのだ。
水もちょっと温めればすぐに蒸気になるから、それを考えるとある程度わかる部分もあるんだけどね。

2010/06/19

イオンの力ですいすい

工学実験実証探査機(MUSES-C)の「はやぶさ」が6月13日に地球に再突入し、7年にわたる宇宙の旅を終えたのだ。
機体本体は大気圏突入とともに分解し、燃えてしまったけど、それはきれいなファイヤーボールとして観測されているよ。
多くの流星の下の方でひとつだけ分かれて光っているのが熱シールドに守られた着陸用カプセル。
うまくいけば、試料回収カプセルには小惑星イトカワの砂が入っているかもしれなくて、それを地上に届けるものなんだ。
入っていなくても、7年にわたって約60億kmの宇宙の旅をしただけでもすごいんだけどね。

で、そのたびを支えたのが我が国のNECが開発した電気推進系。
最近有名になったイオンエンジンで、電気の力でイオンを加速して推進力にするものなのだ。
なかなか実用までは道のりが険しいと言われていた技術なんだけど、今回の「はやぶさ」の成果で長時間の運用実績が蓄積し、惑星間航行に使えることが証明されたんだ。
トラブルはいくつもあったけどね(笑)

通常、宇宙探査機の推進力というとヒドラジンなどの化学燃料を燃焼させ、その熱で爆発的に膨張した排気ガスを噴射することで進む化学推進系が一般的なのだ。
でも、宇宙には空気がないから、燃焼させるためには酸化剤を年長と一緒に積んでおく必要があるし、遠くに行くためには燃料もたくさんいるので、どうしても重くなってしまうんだよね。
NASAなんかは原子力電池と言って、放射線を出しながら原子崩壊する放射性同位体(RI)を熱源として積んで、そのエネルギーを推進力に換えている探査機も作っているよ。
外惑星探査のボイジャー・シリーズや木星探査機ガリレオ、土星探査機カッシーニ、冥王星の先まで行っているニュー・ホライズンズなんかはみんなそうで、燃料としてプルトニウムを積んでいるのだ!
熱源となるRIはそんなに大量じゃなくてよいので探査機も小型化できるし、何より、太陽から遠ざかると太陽光発電が使えなくなるので有効な手段なんだ。

でも、今回「はやぶさ」で採用されたのは、イオンエンジン。
火星の手前の小惑星が行き先なので、太陽光発電で発電しつつ、その電気を使ってイオンを加速するのだ。
具体的には、燃料として積んでいる希ガスのキセノン(Xe)にマイクロ波を放射し、電離させるんだって。
で、そこで発生したキセノンの正イオンに電圧をかけ、後方に加速して噴射するのだ。
でも、このときに噴射口付近で同じく電離した電子を中和機から噴射して電気的に中性にしてから噴射する必要があるんだ。
そうしないとどんどん本体が負の電荷を帯びていってしまい、まわりが真空で接地(アース)できない宇宙ではその電荷がそのまま残ってしまうのだ。

さらに、電子を噴射することで全体としてキセノンの噴射方向を絞ることができて、そのままだと正の電荷同士の反発力で広がっていろんな方向で出てしまうものを後方に絞って噴射できるようになるんだよ。
このとき、電気的には中和しているけど、キセノンはプラズマという状態になっているのだ。
プラズマは、正イオンと電子が電離している状態のガスで、よく「はやぶさ」のイオンエンジンの絵で青く光っているものがあるけど、あれがプラズマ発光の色だよ。

この方法だと、加速自体は電気の力なので、後は燃料の質量と加速された速度をかけた運動量の反作用分だけ前に進むのだ。
とは言え、比推力(単位重量当たりの推進剤で単位推力を発生させられる秒数、推進剤の効率の指標だよ。)は高いものの、加速に長時間を要するのだ。
つまり、時間をかけてちょっとずつ加速をしていくというもので、一気に爆発的な推力を産み出す化学エンジンとは大きく特長が異なるのだ。
これを長距離の宇宙航行に使おうという発想こそが「はやぶさ」では斬新だったというわけ。

これまでは静止軌道にある通信衛星の姿勢制御のためのスラスタに使われている例もあったようなんだけど、それも化学エンジンのスラスタが一般的だったみたい。
化学エンジンだとその分燃料をたくさん積んでおく必要があるんだけど、イオンエンジンはまだ動作が不安定で、扱いも難しいというのが原因みたい。
今回も長期間の運転は実現しているけど、途中で止まって、最後は2つの不調になったエンジンの生きている部分を組み合わせて使うという荒技まで使っているんだよね。
そういう意味ではまだまだ課題が残っていそうなのだ。

今回の「はやぶさ」の場合は、イオンエンジンによる加速だけじゃなくて、実際には惑星の重力を活用したスイングバイもやっているので遠くまで行けたんだよ。
何にせよ、頭を使ってより小さい探査機でどこまで遠くに行って帰ってくるか、という発想がよかったのだ。
そこがまさに「工学実証」だったんだけどね。
これである程度実証されたわけで、次はどういう展開になるか、ということなのかな?

2010/06/12

USI

ここのところ口蹄疫の問題が大きくなっていて心配だけど、そこでどうしても気になったのが「エース級種牛」という言葉。
エース級になるには、肉質がよいだけでなく、性格が穏やかで育てやすい、ということも必要なんだって。
なかなか畜産の世界も奥が深いなぁ、と感心したのだ。
そこで、今回は少し牛肉について調べてみたよ。

ボクもそうなんだけど、スーパーで牛肉を買う際にまず目がいくのが国産かどうか。
BSE問題以来国産指向が強まっているよね。
ボクもそんなに量を食べるわけでないので、多少高くても「国産牛」の表示があるものを買っているのだ。
ところが、「国産牛」とあっても、日本生まれの牛じゃないことがあるんだって!

基本的に日本国内で生まれ、肥育された牛は国産牛なんだけど、外国で育った牛でも、日本で3ヶ月以上肥育されると国産牛という表示になるそうだよ。
さらに、日本でと殺・精肉すると国産牛と言われることがあるそうなのだ。
そうすると、外国でのみ育て、外国でと殺・精肉されてから輸入されるのが外国産牛になるのだ(>_<)
これがからくりなんだね。
なので、国産牛というのはそんなにあがめ奉るようなものではないようなのだ。

一方、もっと高級品として見かけるのが和牛。
こっちは牛の品種のことで、黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4種類と、この間の交雑種のことを指すのだ。
品種だけの話で、ホルスタイン種とかジャージー種とかと同じで、どこで育てても和牛なんだけど、実際に流通している和牛のほとんどは国内産。
理論的には外国で育てた和牛も存在するはずだけど、食肉流通業界の自主規制と農林水産省の指導(ガイドラインで国内で飼育されたものであること、という条件があるのだ。)により、日本国内では外国産牛が和牛として流通することはまずないみたい。
なので、和牛と表示されていればほぼ間違いなく日本で育てられた牛。
こっちは安心して帰るわけ、高いけど(笑)

さらに牛肉の表示で書いてあるのは等級。
A3だとかA4だとかあるよね。
アルファベットは歩留まりの等級でA~Cの三段階で、Aが最高級。
歩留まりというのは、冷蔵庫に吊してある枝肉と呼ばれる状態から、各部位を切り出すときの割合で、等級が高いものほど多くとれるというわけ。
早い話が肉付きがよいのだ。
後ろの数字は肉質の等級。
こっちはさし(脂)の入りや光沢、やわらかさ、しまりなどを総合的に判断するみたい。
いわゆる霜降りの特上肉だと5で、赤身に脂が所々はいる固い肉は数字が小さいのだ。
欧米ではそういう赤身肉の方が好まれるんだけどね(笑)

2004年12月からは、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)の施行によって、国産牛肉には10桁の個体識別番号がついているのだ。
これによってその牛がどこで生まれ、どこで育ち、どこで精肉されたかなんていう履歴がわかるようになっているだって。
小間切れや挽肉などの一部の例外を除き、インターネットで調べればわかるそうだよ。
携帯でも見られるそうなので、国産牛表示で疑問に思ったらこういうのを調べてみるのもよいかも。
ボクは面倒なのでやらないけど・・・。

というわけで、牛肉の見方ががよくわかったのだ。
これからはスーパーの食肉売り場でも気をつけて見てみようかな?
とりあえず和牛を飼えば安全そうなので、急いでいてお金に余裕があるときは何も考えずに和牛を買うけど(笑)

2010/06/05

夏期軽装励行の候

うちの職場では6月から「夏期軽装の励行」、いわゆる「クール・ビズ」が始まったのだ。
ノージャケット、ノーネクタイに開襟シャツというラフなスタイルが認められるわけ。
ボクなんかはお仕事中はネクタイをしていないと落ち着かない方なので軽装にならないんだけど、かなりのマイノリティ。
なぜかみんなネクタイを外したがるんだよね(笑)

最近ではかなり浸透してきた感があるクール・ビズだけど、始まったのはつい最近の2005年。
小泉政権下で地球温暖化対策のひとつのシンボルとして開始されたんだ。
小泉元総理から「軽装による冷房の節約」についてアドバイスを受けた時の環境大臣の小池百合子さんが、持ち前のアピール戦術を使ってみごとに認知度を高めたんだよね。
閣議でも閣僚が沖縄の半袖開襟シャツの「かりゆし」を着るなんて慣例もできていて、この前は亀井大臣だけスーツにネクタイと「造反」したのだ。
前からクール・ビズをだらしないと批判していたんだよね。

でもでも、もともとはネクタイを外すことが目的ではなくて、冷房の設定温度は28度に上げる代わりに、その環境下でも快適に過ごせる服装にしましょう、ということ。
必然的に室温が上がるので、開襟シャツでいいよね?、というものなんだよ。
中央官庁なんかでは確かに冷房の設定温度を上げて、それに合わせてクール・ビズにしているんだけど、けっこうネクタイを外すだけ、と思っているところが多いような・・・。
冷房に使う消費電力を減らすことが目的なので、本当はそれでは困るのだ!

これに対してはネクタイ業界からは当然批判が出ていて、スーツの売上げも下がったようなんだよね。
でも、逆に開襟シャツ、特にクール・ビズ用の少しおしゃれな男性ものは売れ行きがよくなっているのも確か。
もともとクール・ビズという言葉自体も服飾メーカーのグンゼが公募で提案したものなんだとか。
どのみちスーツやネクタイは冬に必要だから、開襟シャツの新規需要が伸びた方がよいのかな?
夏用の薄手のスーツは売れなくなるけど。

これが一気に広まったのは小池大臣の手腕もあるんだけど(宣伝上手だからね。)、それ以上に、業界からの支援もあったからなのだ。
グンゼのようなクール・ビズのスタイルを売る服飾メーカーはもとより、電力会社からの賛同も得られていたのだ。
もともと電力会社では夏の電力ピークを抑える取組をやっていて、それにこれが合致したわけ。
電力会社は、夏の最大ピークを満たせるように発電所などの設備を整える必要があるんだけど、ピーク時にしか使わないから余剰な設備でもあるんだよね。
ピークが抑えられれば、設備投資に回す資本が節減できるので、ピークカットにむかしから取り組んでいるのだ。
でんこちゃんも冷房の設定温度を少し高めにしましょう♪って宣伝してたよね。

この差が如実に出たのは、クール・ビズと対照的なウォーム・ビズ。
冬に暖房の設定温度を下げて、その分あたたかい格好をしようということなんだけど、こちらは言葉自体もあまり普及していないのだ。
電力会社からすれば、冬は電力設備に余裕があるので、別に電力消費を抑えてもらう必要がなく、むしろ、電気を使ってもらった方が売上げも伸びるし、発電所の投資効率もよくなるので、このウォーム・ビズには乗ってこなかったのだ。
服飾業界としても、ベストやセーター、ひざかけなんかが売れるにしても、開襟シャツのように毎日変えるものでもないので、そんなに売上げが伸びないんだよね・・・。
というわけで、ウォーム・ビズの方は業界があまり乗ってこないので普及しないというわけ。

コンセプトは同じなのに、おもしろいものだねぇ。
ちなみに、クール・ビズのはるか前に、省エネルックという半袖のスーツを着ましょう、というものもあったのだ。
羽田元総理でおなじみだけど、はっきり言ってかっこわるいということで当時としてもほとんど浸透しなかったんだよね(笑)
そこ行くと、クール・ビズは打ち出しがよくて、おしゃれなものも出てきているので続いているのだ。
やっぱりそういう部分も大事なんだね。
あとは、それに合わせてしっかりと電力消費の節減をしてもらわないと!