2010/08/14

Bon Vacation!

世間はすっかりお盆休みシーズンだねぇ。
街中から人は減り、帰省ラッシュのニュースが流れているのだ。
かくいうボクも今回はこのお盆の時期に夏休みを取得しているのだ。
お仕事の相手先もお休みのことが多いから休みやすいんだよね。
なんだかんだでまだ国民的な季節行事なのだ!

お盆というのは仏教で言う盂蘭盆会(うらぼんえ)から来ているもので、祖先の霊がもどってくるので、それを迎え、供養して、また送り出すというのが一連の流れ。
一説には、釈迦の十大弟子の一人、神通第一と言われた目連尊者が夏の修行(夏安吾)の最中に亡き母親の姿を探したところ、餓鬼道に落ちていることを発見したことから始まるのだ。
それをどうしたら救えるかとお釈迦様に相談すると、安吾の最後の日(解夏の日)にすべての比丘(仏教の修行者)に食べ物を施せば母親にも届くだろう、と教えられ、すべての比丘に布施をしたところ、餓鬼道にいた母親の口にも食べ物が届いたんだとか。
これが施餓鬼とも言われる所以だよ。
この話は中国で成立した偽経にあるものなので、中国由来なんだそうで、インドでは盂蘭盆の習慣はないんだって。

もともと中国では初春と夏の盛りに二度祖先の霊をまつる習慣があったようで、その夏の祖霊供養の習慣が仏教とまざってできたのが盂蘭盆なんだと考えられているようだよ。
中国の習慣は広く東アジアに広まるので、これは日本にも入ってきていて、さらに仏教とともに盂蘭盆が入ってくると、日本で独自に進化した夏の祖霊供養の民俗習慣と、仏教とともに入ってきた盂蘭盆が習合して現在のようなお盆になったのだ。
そういう意味で、仏教色が強いけど、純粋な仏教行事とはいえないんだよね。
お墓参りやお経をあげたりするほかにもお盆の行事があるのにはそういう事情があるのだ。
ちなみに、初春の行事は後にお正月の民俗につながっていって、中国では爆竹を鳴らしたり、日本では門松を立てて年神様を迎えたりするけど、それももともとは祖先の霊の供養だったんだって。

お盆が特殊なのは他の夏の行事とも密接に関係していること。
特に夏祭りが行われる地域だと、盆踊りとお祭りは密接不可分だよね。
夏祭り自体は疫病が流行しないように祈ったり、収穫前にしっかり雨が降るよう祈ったり、逆に台風の被害がないように祈ったりするもの。
これももともとは祖先の霊をまつって、感謝の気持ちを表すとともに、そういう祈願をしていたのかもしれないのだ。
もともと日本の神様は祖先的な意味合いもあるから、神仏混淆の世界ではそれでよいのかも。

盆踊りは地獄での受苦を逃れた亡者が喜んで踊る姿を燃したなんてことも言われるけど、むしろ祈願の踊りと考えた方がすっきりするかもね。
雨乞いの踊りのようなものなのだ。
沖縄のエイサーも盆踊りの一種だそうだけど、太鼓や鉦を大音量で打ち鳴らすのは疫病払いのお祭りの特徴だよね。
東北のねぶたも疫病払いと言われるけど、こっちもお盆と大きく関係しているようなのだ。
秋田の竿灯祭りは豊作祈願だけど、やっぱりお盆と関係しているよね。
やっぱり夏祭りとお盆は民俗行事としてつながっていそうなのだ。
ちなみに、これらのお祭りや盆踊りはむかしでは一大イベントでは、田舎の地域では重要な出会いの場だったんだよね(笑)

お盆によく見るのは迎え火や送り火。
これは祖先の霊を迎え、送り出すときのもの。
京都五山の送り火も祖霊を送るものだそうだよ。
灯籠流しや精霊流しも同じ意味があるそうなのだ。
むかしは海の彼方に常世=あの世があるとも考えられていたので、川に流すという発想が出てくるのだ。
そして、お盆の名物と言えばキュウリとナスに割り箸をさした馬と牛。
来るときは馬に乗って早く、帰るときは牛に乗ってゆっくりと、という意味が込められているんだって。
ちなみにこれは精霊馬と呼ばれるのだ。

で、現在はお盆というと8月中旬、終戦記念日と同じ15日に当てられることが多いよね。
この前後がお盆休みシーズンとなるのだ。
でも、もともとは旧暦の7月15日で、それが新暦になると約1ヶ月ずれるわけだけど、そのまま旧暦の日付に合わせ続けると新暦では毎年日が変わってしまうので、そのまま1ヶ月ずらした8月15日固定されるようになったんだ。
今でも旧暦の7月15日に旧盆をやる地域もあるよね。
さらに、新暦の7月15日という地域もあたりするから混乱するのだ。
とは言え、なんとなく、8月中旬、夏休みも折り返しを過ぎて、そろそろ休みも終わるなぁ、と思いをはせるこの時期がお盆っぽいよね。
お盆が終わるとヒグラシも鳴き始めて、夏の終わりを感じるのだ。
やっぱり日本人の季節感と密接に関連した民俗なんだね。

2010/08/07

清濁併せ呑む

最近韓国の濁り酒のマッコリがはやっているよね。
韓国料理屋さんだけじゃなく、普通の焼き肉屋さんでも見かけるようになったし、居酒屋でもときどき見かけるのだ。
特有の香りがあって苦手にしている人もいるみたいだけど、独特の甘みとほのかな酸味で飲みやすいとも言われているのだ。
アルコール度数もビール程度だからぐびぐびっといきがちだけど、濁り酒だけあって悪酔いしやすいので注意が必要なのだ(>_<)

韓国のマッコリと日本酒と同じお米のお酒で、麹でデンプンを糖化させてから酵母でアルコール発酵をさせる並発酵。
このとき、雑菌の繁殖を抑えるために乳酸菌発酵もさせているので、ちょっと酸味が出てくるんだ。
ただし、日本酒とは違って原料に小麦を加えることが多いんだとか。
芋焼酎のようにサツマイモからつくるマッコリもあるみたいだ。

発酵させたそのままを飲む生マッコリは微炭酸状態。
軽く発泡しているのだ。
その方がさわやかな飲み口と言われるけど、発酵が継続していて日持ちがしないので、加熱して発酵を止めたものが広く流通しているようだよ。
夏場に冷やしたものを飲むのが好まれているようだけど、この点はmかしの甘酒の飲み方に近いかも。
マッコリの方が発酵期間が長いのでアルコール度数が高いけど。

このマッコリに似ているのは日本のどぶろく。
どぶろくも甘みとほのかな酸味が特長の濁り酒だけど、すっきりした飲み口のわりにアルコール度数が高いのだ。
普通に上澄みをとって濾過して加熱処理すれば清酒にになるので、アルコール度数は日本酒並みなんだよね。
基本的に材料や起こっている発酵現象は同じなんだけど、作り方に工夫があるんだ。
どぶろくの場合、米と麹を複数回に分けて加えていく複発酵という方式で、これによりアルコール度数が高いお酒が造れるのだ。
一度発酵させたものにさらに麹と米を加えてさらに発酵させ、というのを繰り返すわけ。

マッコリと同じく、発酵途上では二酸化炭素が出てくるので、発泡性なのだ。
密閉した容器で作らないと雑菌が繁殖するおそれがあるけど、適度にガス抜きしないといけないんだ。
さらに、発酵を止めないので、早く消費しないと引用に適さないものになるので注意が必要なんだって。
と言っても、現在は酒税法の関係で勝手にどぶろくを作ると密造酒になるので、自分で作ることはまずないと思うけど。

このどぶろくの状態のものを静置しておくと白い沈殿ができるのだ。
これがもろみで、こしてから乾燥させると酒粕。
さらにこしたものを濾過して、「火入れ」と言われる加熱処理で発酵を止めると清酒になるのだ。
すごいことに、日本ではすでに平安時代には濾過して、火入れしてある程度の透明度を持った日本酒を造っていたようなのだ!
この火入れも難しくて、あまり高い温度で加熱してしまうと風味も飛んでしまうので、風味を極力残すように発酵を止める必要があるんだよね。
それを温度計なんてない時代から技術の伝承で培ってきた技なのだ。
日本は酒造を通じてむかしからすぐれた醸造技術を持っているというけど、本当にすごいんだよね(笑)

2010/07/31

今年は緊縮?

今週、いよいよ民主党政権で始めてとなる国の予算のシーリングが公表されたのだ。
民主党政権は昨年9月に発足したので、概算要求までは自民党政権でやっていたんだよね。
その後に予算案の見直しなんてのをやっていたけど、最初から予算を作るのは今回がはじめてなので注目を集めているという分けなのだ。
で、注目されるのはよいけど、国の予算プロセスってそもそもどうなんだっけ?、というのが気になるところでもあるので、ちょっと勉強してみたのだ。

国の予算は、政府が予算案を作り、それを国会が承認して決まるのだ。
米国なんかだと予算は法律として作られる仕組みなので、大統領が予算教書でプロポーザルはするんだけど、実際の予算編成は、それを踏まえて議会スタッフが作るんだよね。
上下両院で可決したものに大統領が署名すると予算が歳出法という法律としてと成立することになるのだ。
これが米国の予算が政治主導で作られる、と言われるわけ。
ただし、実際には大統領府(ホワイトハウス)内にある行政管理予算局(OMB)が各省から出されている要求を精査して作られている予算教書は細部までよくできているので、そこに議会としての「味付け」をするという感じみたい。
とは言え、大統領直属の部局が予算を作るというのは、これまた日本と違うのだ。

一方の日本はどうかというと、憲法上、予算は法律とは別の扱いを受けていて、憲法第86条で「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とあるので、必ず内閣が案を作成し、国会に諮る必要があるんだ。
法律の場合は議員立法が可能だけど、予算はそうはいかないわけ。
当然、国会の審議で修正はできるんだけど、多くの場合、政府の作った予算案がそのまま承認されるのだ。
ここは米国とはもっとも大きく異なるところだよね。

予算については憲法でもうひとつ規定があって、憲法第60条で衆議院の予算先議と優位性が規定されているのだ。
法案だと衆議院でも参議院でもどちらの議員から審議を始めてもよいのだけど、予算案については必ず衆議院から審議を始めないといけないのだ。
また、衆議院の議決の優先についても、法案と予算は扱いが違うんだよ。
法案だと閉会期間を除き、参議院が衆議院で可決された法案を受け取ってから60日以内に議決をしないと参議院が否決したと見なされ、さらにその後両院協議会でもまとまらなかったときは、衆議院で改めて議決をして、3分の2以上の賛成があれば法案は成立するのだ。
一方、予算はもっと簡便で、参議院が衆議院で可決された予算を受け取ってから閉会期間を除いて30日以内に審議をしないときは、衆議院で可決した予算が成立するのだ。
これは予算がないと国の仕事ができなくなることに配慮した規定と言われているよ。

ちなみに、日本の会計年度は4月から始まるけど、それまでに予算が成立しない場合は前年度予算をベースとした暫定予算が組まれるのだ。
すべての支出が止められると国の仕事がまったくできなくなるので、新しいことは始められないけど、定常的にしなければならないお仕事は前年度予算ベースでできるようにするという制度だよ。
これは経済全体が混乱するということもあって、さすがにここ最近では見なくなったけどね。

以上は政府が年末に予算案をとりまとめて国会に提出してからの話で、その前に政府部内で予算案をとりまとめる作業があるのだ。
その最初がこの前閣議決定された「平成23 年度予算の概算要求組替え基準について」。
いわゆるシーリングで、国が予算案を作るときの基本的な考え方や要求の上限を設定するものだよ。
これがないとみんな青天井で要求してしまって、予算が膨張の一途をたどり、後で調整もしにくくなるので、あらかじめ要求額はここまで、と一定の制限を設けるものなのだ。
自民党政権では「概算要求基準」と呼ばれていて、それが鳩山内閣ではいったん廃止されたんだけど、やっぱり上限を決めないと予算がふくらむ一方だということで、「概算要求組替え基準」という名で復活したのだ。

各省では、春くらいから予算要求に向けて検討をして、シーリングが示されたところから具体的に数字の調整に入るのだ。
で、それを8月いっぱいでまとめ、各省で作った予算要求が財務省でまとめられるのが概算要求。
この時点ではまだ予算の詳細がつめられていないので、あくまでもシーリングの枠内で大まかなところを示している、という意味で「概算」と言われるんだよ。
9月からは、財務省が各省にヒアリングをし、予算要求の査定が始まるのだ。
そうして財務省が調整した結果作られるのが政府予算案。
最近では財務省による調整だけじゃなくて、官邸主導の名の下に「特別枠」が設けられていて、各省が概算要求するときに減要求させて浮いた分を原資として、重点分野に再配分するのだ。
今回は、原則として対前年度1割減という深掘りで、それを原資とした「1兆円を相当程度超える額」を特別枠に設定し、政策コンテストを実施して国として重点的に対応すべき分野に予算を再配分するのだ。
政策コンテストが具体的にどういうものかはまだ決まっていないみたいだけどね(笑)

で、現在はシーリング枠が示されたところで、これから各省が要求の検討を行いい、財務省で概算要求がまとめられるわけ。
年末までの間に「政策コンテスト」があるわけだけど、その前に民主党代表選がはさまるから、けっきょくどうなるのかな?
秋以降の動向に注目なのだ!

2010/07/24

暑中お見舞い申し上げます

昨日は二十四節気の大暑。
梅雨も明けて晴れの日が続き、夏の間でももっとも暑い季節と言われる約2週間が始まるよ。
その後の立秋を過ぎると徐々に暑さも和らぎ、徐々に過ごしやすくなっていくのだ。
で、この時期の名物と言えば暑中見舞い。

暑中見舞いは一つ前の小暑から立秋までの約1ヶ月間の暑中のうち、梅雨明け以降に出すものなのだ。
直接相手を訪問することもあるようだけど、基本的には手紙を出すのが一般的だよね。
年賀状ほど広まってはいないけど、くじ付きの「かもめ~る」なんかも販売されているのだ。
むかしの人は通信手段が限られていたからこういう季節の行事を大事にしていたけど、携帯電話も含めていつでも簡単にコミュニケーションがとれる現代では徐々に失われつつある文化だよね。
だからこそ、大事な人に出したいものでもあるんだけど。

ちなみに、立秋を過ぎてから出すのは残暑見舞い。
一番暑い時期は過ぎたとは言えまだまだ暑いので、ということで相手を見舞うという分けなのだ。
立秋って7月中にあるので意外と早いんだよね。
そういう意味では気をつけないと暑中見舞いと残暑見舞いを間違ってしまうのだ(>_<)

狭義では、ウナギでおなじみの夏の土用の期間、つまり立秋までの約18日間が暑中で、その間に相手の体調を見舞うのだ。
広義の暑中は約1ヶ月だけど、その間でも特に暑いのが夏の土用なんだよね。
梅雨が明けるのもこのころで、本格的に暑さを感じる時期なので、体調を崩しやすいのだ。
いわゆる夏バテというやつで、そうやって体調を崩す人が多いので見舞うのが本来の意味だよ。
で、夏バテにならないように栄養をつけようとこの暑い時期にウナギを食べましょう、となるのだ。
土用自体は、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれの直前の期間のことなので、「土用の丑」と言っても春夏秋冬あるわけだけど、やっぱりウナギを食べるのは夏の暑い時期、暑中の土用というわけなんだよね。

このころに気をつけたいのは夏バテだけでなくて、土用波もそうなのだ。
夏の土用の時期に見られるのでそう呼ばれているんだけど、一見おだやかな海なのに土用波にさらわれて沖まで流されてしまう、なんて事件がよく起こるんだよね。
土用を過ぎてからの海水浴には注意が必要なのだ。
この土用波、むかしから知られていたんだけど、その正体ははるか遠洋にある台風が起こす波のうねりが伝わってきたもの。
三角に波頭がとがっている並みは波長も短く、そんなに遠くまでとどかないのだけど、波頭に丸みがあって、波長が長い波のうねりは減衰しづらくて遠くまで届くのだ。
秋の手前が台風のシーズンだけど、やがってやってくる台風は遠洋ではすでに発生していて、その影響が土用波として先に来ているのだ。
夏の最盛期は太平洋高気圧が発達しているので台風が近づけなくてなかなか上陸しないだけで、南洋では熱帯性低気圧がたくさん発生しているのだ。

いずれにせよ、土用というのは季節の変わり目。
特に夏の土用は、体調を崩したり、気候も大きく代わったりするので、いろいろと気をつけたいのだ。
そういうときに、身の回りのお世話になっている人を気遣うっていうのはよい文化だよね。
すたれさせるにはおしいのだ。

2010/07/17

いかろす君もびっくり?

先日、ソーラーセイルを使って金星に向けて航行中の小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)がガンマ線バーストを観測したのだ。
これは太陽よりもはるかに質量が大きな恒星が爆発してブラックホールになる際に放出されると考えられている放射線で、うまく観測できれば、更なる宇宙の謎の解明につながるんだとか。
で、このニュースを聞いて思い出したのが、ガンマ線とX線の違い。
両方とも波長がとても短い電磁波なんだけど、いまいち違いがよくわからないんだよね。
というわけで、改めて調べてみたよ。

ガンマ線は放射線の一種で、ヘリウム4の原子核のアルファ線、電子のベータ線に続いて見つかったもので、正体は原子核崩壊に伴い出てくる波長の短い電磁波だったのだ。
これは原子核内のエネルギー準位の遷移によるもので、アルファ崩壊で原子番号が小さくなったり、ベータ崩壊で陽子と中性子の比率が変わったりした後、原子核内に残っている余分なエネルギーが電磁波として放射されるものなんだって。
ま、意味不明だよね(笑)
ガンマ線は電磁波だけに放射線の中でも一番遮蔽がしづらくて、完全に遮蔽するには10cm以上の鉛の板がいるのだ。
アルファ線なら紙1枚で遮蔽できるし、ベータ線なら1cmのアクリル板で遮蔽ができるので大きな違いなのだ!
電離作用は弱いけど、透過力が高いのでめんどくさいんだよね。

一方、X線は高速の電子が金属などのターゲットに当たったときに発生する電磁波で、軌道電子の遷移に由来するものなのだ。
一番外側のエネルギーの低い軌道の電子がはじき飛ばされ、そこによりエネルギーの高い軌道にいる電子が落ちてくるとき、エネルギーの差分が電磁波として放出されるわけ。
電磁波を当てて励起した後に基底状態にもどるときのエネルギー準位の遷移で発生するものは相対的にエネルギーの差分が小さいので可視光領域になって、それは「蛍光」と呼ばれているのだ。
外から高速電子を当てたり、X線くらいのエネルギーの大きな電磁波を当てたりする場合はエネルギーの差分が大きくなって、波長の短いX線が出てくるのだ(X線を照射したときに出てくるX線は蛍光X線と呼ばれるよ。)。
このとき出るX線(蛍光X線を含む。)は原子核の種類ごとに波長が決まっているんだけど、特性X線と呼ばれ、未知の物質の同定にも使われるんだよ。
「はやぶさ」のカプセル内で採取された微粒子が小惑星イトカワ由来のものかどうかを確認する際にも蛍光X線分析が使われるみたい。

ちなみに、放射線の遮蔽というとすぐに鉛板が思い浮かぶけど、ベータ線がなまり板に当たるとX線が出てしまうので、先にアクリル板で遮蔽しておく必要があるのだ。
放射線防護をする場合(?)には、まずアクリル板、その次に鉛板の順だよ!
間違えるとガンマ線は遮蔽していても、新たにX線が発生していて被爆してしまうのだ(>_<)

X線の発見者はご存じドイツのレントゲン博士で、その功績でノーベル賞をとったのだ。
未知の電磁波と言うことで「X]線と名付けたんだって。
で、調べてみると波長の短い電磁波だったわけだけど、さらに調べてみると、実はガンマ線と波長領域が重複していたのだ!
これが混乱のもとで、発生機構の違いで定義しているので、電磁波の波長だけを調べてもどっちがどっちかは区別できないんだよね。
ただし、X線よりさらに波長が短いものを便宜的にガンマ線と呼ぶこともあるようなのだ。
こういうことをするから混乱に拍車がかかるんだけど・・・。

X線はレントゲン写真に使われるほか、いわゆる非破壊検査や結晶解析なんかに使われるのだ。
このときは金属製のターゲットに電子線を当てるX線源が使われているんだよね。
ガンマ線の場合は、放射性同位体のコバルトから放射されるものがガンマ線滅菌や放射線医療、放射線育種(放射線を照射して行う品種改良)などに使われるんだ。
工業的なX線写真と呼ばれるものの中にはガンマ線を当てて撮影されているものもあるようだよ(笑)

というわけで、どっちも波長の短い電磁波なわけだけど、出自も違うのできっちり区別してあげたいものなのだ。
他の電磁波の場合は波長又は周波数で一義的に定義されるからややこしいんだよね。
いっそのこと、波長領域で区別するときは「第三の名前」をつけてしまった方がすっきりするのかも。

2010/07/10

電波でさぐれ!

最近は天気が不安定だよねぇ(>_<)
前の日の予報が当たらないことが多いのだ・・・。
さすがに当日予報はそんなにはずれないけど。
で、そんな中でよく耳にするようになったのは雨レーダーだよね。
電磁波を使って雨や雪の位置や密度を観測しているんだそうだよ。
そこで気になったのがレーダーの原理。
というわけで、いつものように少し調べてみることにしたのだ。

レーダーは、電磁波を対象物に向けて発信し、その反射波を測定することで対象物までの距離や方向を調べるもの。
Radio Detection and Ranging(無線探知測距)の略なんだよ。
電波法施行規則という総務省令の第2条第1項第32号では、「決定しようとする位置から反射され、又は再発射される無線信号と基準信号との比較を基礎とする無線測位の設備をいう」と定義されいるんだって。
よくテレビとかで丸い画面を時計回りにまわりながら位置を調べている装置があるよね。
あれがレーダーで測定した位置と方向を画面表示にしたもので、レーダーを全方向に加点させながら照射して、それぞれの方向のどの位置に電磁波を反射するものがあるかどうかを調べているのだ。
大きな船や飛行機の管制塔でくるくる回っているアンテナのやつだよ。

これと同じよな原理が水中で使われるソナー。
こっちは水中で音波を発信して、その反射波を分析して対象物までの位置と距離を測るのだ。
Sound Navigation and Rangingの略でソナーなんだって。
こっちも似ているね(笑)
水中では電磁波が遠くまで届かないので、今でもんぱを使ったソナーが重要なんだよ。
電磁波に比べると波の進む速度が遅いから、レーダーよりはゆっくり探知することになるのだ。
潜水艦の映画でぴ~ん、ぴ~んと音が時々するのはソナーの音だよ。

で、レーダーにもどって、使う電磁波の話。
主に使われるのはマイクロ波とかミリ波と呼ばれる電波。
波長がmm、μmのオーダーなのでそう呼ばれるんだよね。
こたつなんかであたたかい(?)遠赤外線のすぐ外側にある電波だよ。
でも、この波長でけっこう調べられるものが変わってきて、波長が長い(=周波数が低い)と電波の減衰も少なくて遠くまで探知できるんだけど、波長が長いので分解能が低いのだ(分解能はどれだけ離れていれば2つのものが区別できるか、という指標だけどこれは波長に比例するのだ。)。
一方、波長が短い(=周波数が高い)と分解能は上がるけど、空気中の水分や雨粒などに吸収・反射され、減衰が大きいので、遠くまで調べられないのだ。
というわけで、調べる用途ごとに波長を変えて使っているんだよ。

最近の天気予報で出てくる気象レーダーは地上に置いてあるマイクロ波のレーダーで、パルス状のマイクロ波を照射し、雨や雪で散乱される電波を受信するんだ。
で、照射してから散乱波を受信するまでの時間計ると距離がわかるというわけ。
散乱波の強度を調べると雨や雪の密度もわかるので、降水量もわかるんだ。
各地点のデータを地図上に当てはめていくと、いつも見るよな雨レーダーの画像になるよ。
建物などの障害物があるとそれ以上先が調べられないので、通常はビルの上とか何もないところにあるのだ。
富士山レーダーは山の上から遠くまで見わたせるようになっているよ。
ちなみに、より波長が短いミリ波を使うとより小さい粒子を観測できるので、霧も見られるんだって。

さらに、このレーダーを航空機や人工衛星に搭載することもあるのだ。
それが合成開口レーダー(SAR)と言われるもの。
レーダーで分解能をあげようとするとどうしてもアンテナを大きくする必要があるんだよね。
でも、そんな大きなものは空中や宇宙に持って行けないので工夫されたのがこの方法。
移動しながら電波を発信し、反射波を受信するんだけど、ドップラー効果による波長のずれを計算して合成することで、複数のアンテナを並べたよな状態をバーチャルに作り出せるようになるのだ。
小さなアンテナ(開口)を合成して大きなアンテナ(開口)を実現するので合成開口(Synthetic Aperture)と言うのだ。

これもやっぱり電波の波長によって特徴があって、日本の「だいち」に搭載されているものはL波と呼ばれる波長の比較的長い電波を使うSARで、中程度の分解能だけど一度に広範囲を観測することができるのだ。
一方、海外の偵察衛星なんかに搭載されているのは波長の比較的短いX波を使うSARで、こっちは公分解能で細かくわかるけど、一度に狭い範囲しかわからないのだ。
こっちもやっぱり得意不得意があるので、用途によってどの波長のSARを使うのかを変えるんだよ。

というわけで、もっと難しい原理かと思っていたら意外と単純。
でも、最近は使い方も進化していてもっと複雑なものもあるみたい。
よく耳にするものだから、この程度知っておくとよいかもね。

2010/07/03

緑黒い卵

職場の歓送迎会で中華の食べ放題に行ったんだけど、事前にメニューが配られていたので、行く前からみんなで何を食べるのかけっこう盛り上がっていたのだ。
中でも、なぜか人気があったのが皮蛋(ピータン)。
苦手な人も多いけど、好きな人は「絶対食べたい!」っていう意見。
においにくせはあるけど、納豆やくさやと同じように人気があるところには人気があるのだ。
でも、ピータンってなんなんだっけ?、ということがよくわかっていなかったので、ちょっと調べてみたよ。

ピータンがアヒルの卵から作られていることは割と知られているけど(鶏卵に比べて少し大きいよね。)、一般には発酵しているかのように受け取られているように感じるのだ。
ところがどっこい、ピータンは「熟成」させているだけで「発酵」させていないのだ。
微生物の力を借りているわけではないんだよ。
魚の干物やハムなどの熟成に近い感じかな?

ピータンの作り方は変わっていて、石灰を混ぜた泥をアヒルの卵の表面に塗り、卵同士がくっつかないように籾殻をその上にまぶし、冷暗所において2~3ヶ月熟成させるのだ。
泥を落とすと殻も黒くなったピータンができあがっていて、殻をむいても黒いのだ(笑)
うまくいくと、白身(だった部分)の表面には白い針状の結晶が浮き出ているんだけど、それは熟成の過程で出てきたアミノ酸の結晶。
でも、殻をむくと強烈なアンモニア臭と硫化水素臭(いわゆる卵の腐ったにおい)がするので注意!

実際にこの熟成の過程で何が起こっているのかというと、タンパク質の変性と加水分解が進行しているのだ。
石灰中のアルカリ成分が徐々に卵の内部に浸透していくと、卵の中のタンパク質が変性して固化してくるんだよね。
ゆで卵が熱によるタンパク質の変性で固まるのと同じ。
変性の仕方が違うので、ゆで卵に比べて少し過多さが違うのだ(ピータンだと白身の部分がゼリー状だよね。)。
で、編成と同時に加水分解も起きていて、タンパク質がペプチドに、ペプチドがアミノ酸にとどんどん分解されていくよ。
このとき、卵の中の水分が使われるので、少し中身が減ったように(殻から浮いているように)見えるわけ。
ちなみに、ここで溶けきれなくなったアミノ酸が析出したのが殻をむいた時に見られることがある結晶なのだ。

酸性条件下での加水分解だと、ペプチドからアミノ酸になるくらいで止まるんだけど、アルカリ性条件下だとさらに加水分解が進んで、アミノ酸も分解されてアンモニアも発生してくるのだ。
これがにおいの原因その1。
さらに、システインやメチオニンなどの硫黄を含むアミノ酸が加水分解されると硫化水素が出てくるんだ。
これが腐卵臭と言われるもので、においの原因その2だよ。
アンモニアも硫化水素もしばらくすると空気中に拡散していくので、においが苦手な人は殻をむいてしばらく置いてから食べるとよいのだ。

さらに、硫化水素はにおいだけでなくて独特の色の原因にもなっているんだよ。
ピータンの黒い色の主な原因は硫化鉄の色。
ゆで卵もゆですぎると黄身のまわりが緑~黒色に変わることがあるけど、それは熱分解で発生した硫化水素と卵の中の鉄分が反応してしまっているのだ。
それがもっと進んだのがピータンで、白身は主に硫化鉄の色なので黒~褐色、黄身はもともとの黄色と混ざるのでもっと深い色になるというわけ。
微量に含まれている亜鉛や銅の硫化物の色も混ざるので、もっと複雑な色になるんだけどね。

さらに、生の状態ではもう少し黄身は透明感があってつやつやだけど、ピータンの黄身はゆで卵と同じように不透明なくもっと感じになるのだ。
これは、リン脂質のレシチンとタンパク質がうまくまざって乳化して、水の中にきれいに分散していたものが、タンパク質の変性のせいで脂質が分散できなくなって浮き出てしまうため。
マヨネーズを作るのに失敗して油分と水分が分離してしまっているような状態なのだ。
でも、リン脂質や脂肪分がアルカリ性条件下で加水分解されると、いわゆる「けん化」という現象が起こって、界面活性剤ができるんだよね。
すると、この界面活性剤が水と油を結びつけて入荷させるのだ。
なので、ピータンの黄身は固まっている部分ととろとろの部分があるんだよ。
ゆで卵の場合は熱変性が進めないうちに取り出してしまうのが半熟で、ピータンの黄身のとろとろとはちょっと様相が違うのだ。

というわけで、意外とピータンって科学的に考えてみるとおもしろいんだよね。
それと味の好みはまた別だけど(笑)
鶏卵で同じように石灰入りの泥を塗りつけてみて、経時的変化を追ってみるなんていうのも、ピータン好きの家庭では夏休みの自由研究としておもしろいかも。