2024/12/28

現代の口入屋

 「闇バイト」関連で「スキマバイト」紹介業が注目を集めているのだ。
明かにやばいバイト求人が普通に載っていると・・・。
「闇バイト」に応募・従事しているひとたちは、なにもアンダーグラウンドな掲示板などにアクセスしているわけではなく、普通にスマホアプリで単発・短期間バイトを検索していただけ。
で、異様に好条件なものを見つけ、その裏にあるものなどあまり考えずに、ということのようなのだ。
そこまで割の良いバイトがそうそうあるわけじゃないんだけど。

そういうチェック機能が働いていないんじゃないか、という点に加え、このサービスは「雇いたい人」と「働きたい人」を結び付けるだけであって、それ以上でもそれ以下でもないので、雇用者・被雇用者間で何かもめごとがあっても責任を持たない=知らんぷりをする、という問題点があるのだ。
これは食品デリバリーでも同じような話があったけど、雇用者側から雇った人が〇〇みたいなクレームが来ても、今後気を付けますが最終的に選んだのはあなたですよね、こっちはサービスを提供しただけです、となるんだよね。
逆も然りで、バイトに行ったら相手がやばい業者だったんですけど!、っていうクレームについても、紹介しただけで雇用契約を結んだのはあなただから自己責任で、という話になるのだ。

これは、このサービスが職業安定法に基づく「有料職業紹介事業」というカテゴリで行われているものであるため。
無料の「職業紹介事業」は、国が提供している「職業安定所(ハロー枠)」や大学事務局による就職あっせんのようなサービス。
で、有料の方は、もともとは専門スキルは要するような職業であって、常時抱え込まなくてm日常業務は回せるような人材、例えば、エンジニアや法務や財務のエキスパート、通訳などを紹介するようなものだったのだ。
御大尽の生活をのぞき見しちゃう家政婦さんを紹介する「家政婦紹介所」もこれと同じ。
で、この制度を短時間・短期間の単発仕事のマッチングに使い始めたのが、タイミーやシェアフルのようなスキマバイト紹介サービスなんだよね。

俗に「派遣さん」と言われる労働者派遣法に基づく労働者派遣事業においては、派遣会社は派遣する労働者を有機又は向きで雇用していて直接の雇用関係があるんだよね。
なので、その労働者に対して一定の責任を持たなくてはならないのだ。
それは社会保険のような制度もそうだけど、派遣労働者が派遣先で損害を出した場合など、一義的には派遣会社がその責任を取る必要があるよ(ただし、その後、派遣会社からやらかした派遣労働者に求償をするだろうけど。)。
なので、ある程度の身元保証を派遣会社がしてくれる、というところが大きく違うのだ。
雇用を柔軟にしたいけど採用・罷免の自由度は制限されたくない、という雇用者側のわがままに応じるものなのだ。
ただし、派遣労働者の手取りは別として、派遣会社には一人当たり高コストな費用がかかっているわけで、その「マージン」こそがビジネスなのだ。

一方、職業紹介の場合は、マッチングさせるだけなので、派遣先についても、派遣される労働者についても、必要書類等で一定の確認はするけど、身元保証までするわけじゃないんだよね。
さすがに明らかに公序良俗に反するような仕事(ダイレクトに強盗してほしいなど)を掲載することはしないけど、強盗の実行犯を探す「闇バイト」のカモフラージュされた求人ははじけなかったりするみたいなのだ。
で、仮にそれが事後にわかったとしても、もともとマッチングさせることのみが提供すべきサービスなので、最後は知らぬ存ぜぬになってしまう、というわけ。

シフトに入っていたバイトが急病で来られなくなったけど、他のバイトはそのシフトを埋められない!、みたいな事態になったときには非常に便利なサービスではあるんだよね。
また、本当にその日だけ単発で手伝ってほしい、みたいな需要にも合っているのだ。
だからこそこのサービスも広がっていったんだと思うけど、世の中には悪い人もたくさんいるわけで・・・。
甘利にもきつい仕事でどのバイトも長続きしないようなものをこれで埋めたり、なんてもあるらしいし、「闇バイト」的な求人も入ってきたりと荒れてきているのだ。
また、雇用側からすると、働きに来た人に支払う賃金とは別にサービスの利用料がかかっているわけで(通常は給食している側は無料でサービスを使っているので)、他のバイトと比べて上乗せで雇ってこれか、という思いも出てきてしまうし、他のバイトからすれば何もわからないぽっと出の人がいきなりやってきて、という感じだから、通常バイトと混ざるような場合はぎすぎすしやすいのだ。

当たり前の話だけど、サービスは使いようとはいえ、トラブルが頻発するようなら変えていかなきゃいけないよね。
まずは「闇バイト」みたいな求人は載せないか、発覚したら即刻削除することをきちんと義務付ける、みたいな規制を入れるんだろうけど、その判断の線引きは難しいよね。
加えて、間をつなぐだけ、という業態に対して、どこまで雇用者・被雇用者間のトラブルの責任を求めるかも難しいんだよね。
正直、食品デリバリーの方もそこの改善はうまくいってないから、なかなかうまくいかないだろうなぁ、とは思う。

2024/12/21

立ちはだかる壁

 三党幹事長合意というのがあったけど、けっきょく自民党税調は国民民主党の提案「178万円への引き上げ」について渋い回答を出したのだ。
合意がまとまったすぐ後に「目指すだけ」とか「いつまでにとは明言していない」とか日和った発言があったわけだけど、国民目線で見れば、萎えるよねぇ・・・。
もともと税調は「聖域化」していて素人は簡単に手が出せないとかなんとか言うけど、そういう古いやり方が限界に達していて前回の選挙結果になったんだろうから、多少は歩み寄りが必要と思うんだけどなぁ。
で、さんざん選挙の時から聞いている「103万円の壁」だけど、わかっているようでよくわかっていなかったので、自分でも調べてみたよ。

端的に言えば、所得税の控除の問題で、年間で103万円を越える収入があると所得税を支払う必要が出てくるので逆に手取りが減ってしまう、という問題なのだ。
なので、多くの場合は103万円を越えないようにパートやバイトを抑えて働く、ということになるんだよね。
そう聞いただけでも昨今の人手不足問題に影響がありそうだよね。
しかも、この「103万円」という数字はだいぶむかしに決めたきりで、その後の物価上昇率や最低賃金の上昇などの要素が加味されていないんだよね。
すなわち、むかしよりさらに働く時間を抑えないといけない状況になっているのだ!
これが批判される主な理由かな。

この所得税の控除については、所得税法で決まっているよ。
103万円の内訳は、48万円の基礎控除と55万円の給与所得控除に分かれるんだ。
基礎控除については、所得税法第86条第1項で「合計所得金額が二千五百万円以下である居住者については、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を控除する。」とされていて、さらに場合分けで、「その居住者の合計所得金額が二千四百万円以下である場合 四十八万円」(第1号)となっていることに由来するよ。
これは全員がまず最初に控除される部分なので「基礎控除」というのだ。
休止世所得控除については、同じ所得税法の第28条第3項で「前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。」となっていて、さらに場合分けで「前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円)」(第1号)となっていることから来ているのだ。
実際に180万円の収入がある場合の給与所得控除は62万円で、そこから収入が下がると減っていくわけだけど、下限として55万円という数字が規定されているんだ。
103万円の収入だと、103×40/100-10=31.2となって55を下回るので、55万円が給与所得控除の額になるというわけ。

このように、法律の本文で規定されている数字なので、見直そうとすると法律改正が必要という非常にハードルが高いものではあるんだよね。
でも、今回は政治主導の話であり、実際に与党2党と国民民主党との間で合意があって、この3党合わせれば過半数を越えるのだから、普通は実現するものだと思うよね・・・。
けっきょく幹事長同士の合意をなかば反故にするような議論を党内でしていて、結論もそっちに持って行ってしまうのだから(少し引き上げることにしたので中的にはだいぶ譲歩しているつもりかもしれないけど)、さすがにこれ以上は議論できないと席を立たれてしまうわけだ。
これで来年度予算案は無事に国会を通るのか?

で、実際にどのあたりの数字が適正か、という問題もあるよね。
単純に二つの指標で計算してみるよ。
まずは物価上昇率。
総務省統計局の公表している統計データである消費者物価指数(2020年基準、全国平均、総合、年度平均)で見てみると、103万円のかべがせっていされた1995年は95.8で、これを最新のデータである2023年度の106.3と比べると、物価上昇率は11%増くらいになるよ。
そのまま103万円にかけると、114万円ということになるのだ。
でも、国民民主党が主張しているのはこの数字ではなくて、最低賃金なんだよね。
こっちは1995年当時は611円で、今は1,054円なので、73%増、103万円にかけると178万円という数字が出てくるのだ。
確かに、給与所得についてかある税金なので、その給与水準を示す司法である最低賃金で計算するのは妥当性があるよね。

でも、これってさらに政府は1,500円に引き上げたいんだよね・・・。
というこおは、103万円との関係で言うと、2倍以上にする計算になる。
そこまではやらないんだろうなぁ。

2024/12/14

みこみこハウス

 皇位継承順位第二位の悠仁親王が来春から筑波大に進学あそばされることが決まったようなのだ。
新学制下では原則として元官立の学習院ということになっていたんだけど、秋篠宮家ではその慣例には習わず、内親王お二人は大学から国際基督教大学(ICU)に進学されたし、今回の悠仁親王に至ったっては、幼稚園・小学校・中学校はお茶の水女子大付属、高校は筑波大付属で徹底的に学習院を避けているんだよね。
もともと学習院という学校は、幕末に公家の師弟の教育機関として京都に創設されたんだよね。
江戸時代最後の天皇となる孝明天皇より、「学びて時にこれを習う」という論語の一文から「学習院」という勅額が下賜され、学習院と名乗るようになるのだ。
それが御一新後に東京に移ってきて、皇族・家族の教育機関として宮内省管轄の官立学校になるのだ。
宮内省が解体された戦後は私立学校として再出発するんだけど、ずっと皇室との関係は続いてたんだよね。

話はそれたけど、この悠仁親王のお住まいは赤坂御用地内の秋篠宮邸。
本来は皇位継承順位第一位の人物は「皇太子」として呼ばれ、お住まいは「東宮御所」となるんだよね。
今回は今上天皇の弟にあたるので「皇太弟」と呼ばれてもおかしくないんだけど、令和の譲位の際に、そういう呼び方ではなく、「皇嗣」と呼ぶことになったんだよね。
これは皇室典範の規定の中では、第4条で「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」としていて、皇位継承順位第一位は「皇嗣」にしているのだ。
下って第8条前段で「皇嗣たる皇子を皇太子という」として、それが天皇の息子に当たる場合は「皇太子」と呼ぶ、とするとともに、後段では「皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という」として、子世代に皇嗣がいなくて孫世代まで行ってしまった場合は「皇太孫」と呼ぶ、と定めているんだ。
で、ここで問題があって、弟が皇嗣になる場合が法律上は想定されてないんだよね・・・。
むかしからよくあることなので俗に「皇太弟」という呼び名はあるのだけど、法律上定めていないので使えないようなのだ・・・。
珍しくないことだからこの際足したらいいのに、とは思うけど、そうもいかなかったのかな?

これがいろんなところにはねていて、皇太子のことは「東宮」ともいうので、天皇のお世話をする侍従職に対比して、皇太子のお世話をする東宮職というのがあったわけだけど、それもいまは「皇嗣職」となっているのだ。
とはいえ、宮内庁の内部組織を規定している宮内庁法には「東宮職を置く」規定しかなかったので、生前退位の手続きを定めた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」により附則を追加し、「皇嗣職を置く」規定を追加したんだよ。
さらに、皇太子でないから東宮御所とは呼べず、かといって、「皇嗣御所」とかいうのも変なので、皇嗣になる前からの呼称の秋篠宮邸という従前からの呼び方を継続しているのだ。
ただし、お住まいの呼称はけっこう流動的で、譲位後すぐは皇居に移れなかったので、赤坂御用地内の東宮御所を「赤坂御所」と名前を変えて使っていたよね。
今は上皇・上皇后両陛下のお住まいにするためにバリアフリー化などの必要な改修がなされて、「仙洞御所」となっているよ。
ちなみに「仙洞」というのは仙人の住処のことだけど、上皇・法皇の御所のことを「仙洞御所」と呼ぶんだって。

皇太子を東宮と呼ぶのは中国の風習にしたがっているのだけど、伝統的な中国の応急の場合、「君子南面」なので、皇帝の宮殿は南向きに作る、その東側に皇太子の宮殿たる東宮を作る、となっているのだ。
五行思想では「東」は「青龍」であり「春」であるので、「東宮」は「春宮」とも書くのだ。
確かに赤坂御用地は皇居=江戸城から見て東に位置しているよね。
でも、今の御所は実は南向きではなく、東向きに建てられているのだ。
明治になって最初に宮殿を造営したときは伝統にならって南向きで作ったんだけど、今の御所を作る際、無理やり南向きにして設計をゆがめるより、きちんとした宮殿を作りたいという設計者の思いがあり、昭和天皇の了解も得て南向きでない宮殿にしたそうだよ。
さすがに赤坂御用地のほかに新たに皇室のための用地を用意するわけにはいかないから、皇嗣に当たる人の邸宅は皇居から見て東にはあり続けるだろうけどね。

ちなみに、江戸時代は、皇太子も内裏の中に住むことが通例になっていて、御所とは別に東宮御所を設けることはなかったようなのだ。
皇室財政が相当厳しかったというのもあるだろうけど。
で、京都御所では、儀式などに使う正殿の裏手(北側)に天皇の日常の居所である御常御殿というのがあるのだけど、皇太子の住まいはその北西に位置する建屋に住まわ荒れていたようなので、もはや「東宮」ではなかったんだよね。
むしろ、せっかく御所を新たに東京で造営するからしっかり東宮は御所の東に作りたいと思ったのではないかと考えるんだ。
ちょうど江戸城のから見てすぐ東側には旧紀州藩の上屋敷があって用地としても使いやすかったしね。

2024/12/07

えらいこっちゃ

 韓国で大統領が「非常戒厳」を発動して議会ともめて大変な騒ぎになっているようなのだ。
おとなりの国はこれから少し政治が不安定になるみたいだね。
それにしても、議会を止めるとか、街中に軍隊を展開するとかすごいことができるんだね、と改めて思ったよ。
各国でも似たような制度はあるんだけど、どこまで何ができるかはそれぞれ。
で、その中でも日本はかなりマイルドなようなのだ。
ま、それも戦前の体制を反省して、ということなんだろうけど。


戦前の日本では、帝国憲法において「天皇ハ戒厳ヲ宣告ス。戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とされていて、実際にその要件や効力を規定していたのは「戒厳令」という名前の太政官布告だったのだ。
憲法には「別に法律で定める」規定になっているんだけど、帝国憲法に先行していた太政官布告がその効力を有する、という解釈でいたみたい。
この戒厳令は11条しかな短いもので、その内容は第一条の「戒厳令ハ戦時若クハ事変ニ際シ兵備ヲ以テ全国若クハ一地方ヲ警戒スルノ法トス」にすべて語られているんだよね。
戦争や事変のような非常事態が起こったとき、全国又は一部地方で軍隊を展開して警戒に当たれるようにする、ということなのだ。
今回の韓国の例に近いのかも。

帝国憲法の規定にあるとおり、天皇が宣告するものなので、基本的には天皇の親裁事項(天皇が自ら裁定するもの)。
日清・日露両戦争の際は勅令により戒厳の宣告が行われたようなのだ。
時代が下ってからは「公式令」というのが整備されて、「戒厳の宣告」は「詔書」によって行うこととし、天皇の親署に御璽を押印して、内閣総理大臣が年月日を記入したうえで、内閣の前国務大臣が副署する、というように体裁が整えられたんだけど、こうなってからは正式には戒厳の宣告は行われなかったみたい。
でも、そうなると、太平洋戦争中は戒厳体制に入っていないということなんだね・・・。
治安維持法によりかなり締め付けが厳しく、特高なんかも跋扈したわけだけど、内地に軍が展開されたというわけではないのか。

で、戦後になって日本では「戒厳」について定めた法令は一切なくなってしまったんだよね。
当たり前と言えば当たり前なんだけど、新憲法において交戦力を放棄し、軍隊を持たないという整理になったので、軍隊を街中に展開するという事態は想定されないのだ。
その代わり、よりマイルドな統制強化の枠組みとして「非常事態宣言」というのが導入されているのだ。
「非常事態宣言」というとコロナの時を思い出しがちだけど、あちらは「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」のことで、「非常事態宣言」と通称されていただけなのだ。
正式に法律で「緊急事態宣言」を規定しているのは警察法で、第七十一条第一項で「内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる」となっているのだ。
警察法にあることからわかるとおり、ここで緊急事態の対処に当たるのは警察官だよ。

問題は、緊急事態になるとどうなるか、ということだけど、緊急事態宣言が出ると、内閣総理大臣が一時的に警察組織を統制することになっていて、警察庁長官は都道府県警の警視総監及び警察本部長に直接指揮できるようになるんだよね。
平時では、都道府県に置かれる都道府県警察本部は地方の組織になるわけだけど、緊急時だけは、それが国の機関である警察庁を頂点として指揮命令系統が一本化される、ということなのだ。
刑事ドラマではよく見るような都道府県警の縄張り争い(?)みたいなのがなくなるということかな?
でも、逆に言うと、警察法で定めているのはそこまでで、強制力を持って何かをする、というものではないんだよん。
軍隊が展開される瀬愛から、党勢が一本化された警察組織が展開される、というような大転換だよ。

コロナの時に「非常事態宣言」のときも問題視されていたけど、日本の現行法の世界では、強制力を持って国民の権利を侵して何かさせる、というのが最小限になるようになっているのだ。
それあ戦後の民主主義ということなんだろうけど、危険な地域から強制的に移住してもらったりとか、国の重要施設の整備に当たって用地に居座り続ける人たちを排除したり、とかいうのもできないんだよね。
海外では普通に行われるようなことでも。
それがいいのかわるいのかはいろいろと議論があるわけだけど、何か起こったときにちょっと心配ではあるよね。
日本人は災害の避難時にもわりと行儀よく行動するとは言われているけど、それを過信しすぎるのもなぁ、というところ。
乱用されないという大前提はありだけど、もう少し強制力はあってもいいように思うんだよなぁ

2024/11/30

コスパよい飯

 個人的に意外なニュースだったんだけど、ふりかけの売上げが伸びているらしい。
一般に米の消費量は下がっていると言われているけど、ふりかけ業界はずっと右肩上がりなんだそうで。
米の消費量だけで行くと、1962年(昭和37年)のピークで一人当たり年間118.3kg。
1日あたりだと320gくらいで、これは2合ちょっとにあたるのだ。
お茶碗でいうと4杯くらいかな。
これが2022年(令和3年)になると、一人当たり年間51.5kgで半分以下。
それでも、1日に1合、茶碗2杯分くらいは食べている計算なのだ。

というわけで、意外(?)とごはんを食べているんだけど、このごはんを食べる量が減った原因がふたつあって、ひとつはごはん以外の主食の選択肢が増えたこと。
よく言われるのは、給食によるパン食の普及や麺類による代替だよね。
朝や昼だけでも一食分がパン又は麺になればだいぶ消費量は落ちるはずなのだ。
でも、そうは言っても感覚的にはもっと置き換わっているような感じがしながら、実際には最大で半分しか置き換わっていなということンあだよね。
これにはもう一つの理由があるからなのだ。


それは、おかずを多く食べるようになったこと。
昔は塩辛い漬物やらめちゃくちゃしょっぱい塩鮭、濃い味付けの煮物とかで、少しのおかずでたくさんごはんを食べる、というスタイルだったのが、肉や魚を主菜としてきちんと食べるスタイルになって、その分だけご飯を食べる量が減ったというわけなのだ。
これは日本の食事が炭水化物偏重型の途上国スタイルから、主催・副菜が充実した先進国スタイルに切り替わったことを意味するのだ。
もともと日本でも高級な懐石料理とかだとごはんは最後の最後に少し食べるだけだよね。
おかずよりもごはんの方が安価なので、安上がりにおなか一杯にするにはごはんをたくさん食べるのがよいというわけなのだ。

ところが、ここにきてふりかけの需要が伸びているというのは、それにちょっとした反動が起きているということなんだよね。
というのも、ふりかけの売上げが伸びている要因として専門家が指摘しているのが、不況によりおかずが一品減った代わりにふりかけを使っているのでは、というものだから。
ごはんばかりたくさん食べていた時代は、それこそ「ごはんのとも」といわれるようなものがたくさん食卓に常備されていたわけだけど、おかずが充実してきてからはそういうものは徐々に家庭から消えて行っているのだ。
主菜がちょっとしょぼくなった分、他で補う必要が出てくるわけだけど、漬物や佃煮などよりはふりかけの方が安価で保存もきくし、何より味のバリエーションが多い、ということみたい。
こどもがおかずだけ先に食べてご飯が残ったときはのりたま、なんてのがボクが小さいころよくあった光景だけど、最近は大人もいろんな味のふりかけを楽しむようになってきているらしいよ。
確かに、少し高級なラインナップも見かけるような。

こう聞くと、日本の副菜が文化的に消えて行くようで少しさみしい気もするけど、そのかわりにふりかけは進化していっているのだ。
それと、ふりかけはグローバル展開もしているんだよね。
海外の人はごはんといかずを一緒に食べるというのが苦手で、どうしても先におかずだけ食べてごはんが残るという形になってしまうのだとか。
ボクがパリにいたころは、ごはんに甘めのしょうゆをかけているフランス人をけっこう見たけど、そういう不健康そうなことをしなくても、ふりかけがあればおいしく食べられるのだ。
で、ついに海外の人にも気づかれてしまったらしい(笑)
すき焼きふりかけなんかは味的に人気でそうだよね。

というわけで、むかしほど貧相ではないけど、それほど豪華にもできないという微妙なバランスの食糧事情ではふりかけが勢力を伸ばしてきているのだ。
でも、これはごはん食にこだわるからであって、パンや麺ならおかずも少なくすむし、もっと安上がりにできるんじゃないか、と思って、ちょっと調べてみたんだよね。
とりあえず、わかりやすいように、イオンのネットスーパーの商品(ほとんどがトップバリュ製品)で、単位単価あたりの熱量(カロリー)を比較してみたのだ。
それぞれ100円でどれだけの熱量が得られるかで比べたんだけど、
(1)食パン                 861.7kcal
(2-1)生うどん        569.7kcal
(2-2)冷凍うどん     534.2kcal
(2-3)乾麺うどん     906.5kcal
(3-1)米                 778.1kcal
(3-2)パックごはん   277.0kcal
(4)乾麺パスタ         1,437.6kcal
となったのだ、
トップは圧倒的にパスタで、まさに桁違い。
びりはレンジで温めるパックごはんで、ここまでくると貴族の食べ物だ(笑)

よくネット掲示板で最強の貧乏飯はパスタと言われることがあるけど、数字的にはそうみたい。
これにふりかけ的な安いパスタソースをあえるのが最も安上がりだね。
乾麺うどんもそれに近くてなかなかいい感じ。
これらに次ぐのは食パンだけど、さすがに毎食はつらいだろうなぁ。
で、米は4番手で、悪くはない感じ。
バリエーションとかまで考えると、米というのはかなり良い選択肢かもね。

想定外だったのはうどんのスコアの低さ。
業務スーパーのひと玉20円未満とかのうどんまでいくと米に追いつくんだけど、普通にスーパーで売っているようなやつではまだまだ。
コスパの良い自炊はうどんとか言ってるのはにわかということだね。
パスタ最強はそのとおりだったんだけど。

2024/11/23

乾いた氷

 最近は要冷蔵品を買っても楽しみが減ったのだ。
それは、ドライアイスではなく、保冷剤がついてくることが多くなったから。
子供のころはドライアイスに水をかけてスモークごっこをするのが好きだったんだよなぁ。
そんなドライアイスだけど、二酸化炭素がかたまったもの、といこと以外はよく知らなかったので、ちょっと調べてみたよ。


ドライアイスは二酸化炭素の固体状態のものなんだけど、常圧下では液体になることなく、固体から気化するのだ。
昇華というやつだよね。
このとき、まわりの空気がわりと湿っていると、その冷機で空気中の水分が凝固して細かい氷ができるんだけど、それがドライアイスから立ち上る白煙の正体。
水をかけてあげると周りの水分量が増えるので、白煙が出やすくなるのだ。
乾燥地帯にドライアイスを放置しても白煙は出ないよ。
やったことないけど。

ドライアイスの冷却能力は、同重量の氷の2倍、同容積の氷の3倍以上らしいのだ。
かつ、氷のように融けた後に水が残らないので、びしょびしょにならない!
だから「ドライアイス」と呼ばれるわけだけど、使い勝手もよかたんだよね。
逆に、融けていくと炭酸ガスが発生するので、密閉容器の中には入れられないというデメリットはあるのだ。
最近はゲルを使った保冷剤が多いけど、凍らせれば再利用できるし、何より、ドライアイスより「冷やし過ぎない」というメリットがあるのだ。
冷却能力が高すぎるのも困ることがあって、水分が凍結したりすると風味が府しなわれたり、ぱさぱさになったりするんだよね。
なので、ドライアイスを裸で入れるのではなく、不織布に包んだりして直接触れないようにしたりするのだけど。

そんなドライアイス、作り方は僕のイメージとはちょっと違ったのだ。
加圧しながら冷却していくと塊のドライアイスができると思っていたんだけど、そうではないんだよね。
まず、加圧したうえで冷却していって、液体状態の二酸化炭素を作るんだって。
これを常圧状態に戻してあげると断熱膨張により一気に固化してパウダー状のドライアイスができるんだって。
断熱膨張というのは、外界と熱のやり取りをしないで体積が膨らむこと。
液体二酸化炭素が炭酸ガスになる際には気化熱が必要なんだけど、それを周りから熱を奪うんじゃなくて、自分の温度を下げてまかなうことになるんだよね。
で、液体から固体になるわけ。

同じような現象は、密閉容器に水の入ったコップを入れておいて、そこから真空ポンプで減圧していくと、いきなりコップの中の水が沸騰し、その後いきなり氷になる、というのがあるのだ。
よく科学実験で紹介されたりするから有名なもの。
水は蒸発する際にまわりから気化熱を奪うよね。
だから汗をかくと冷却効果が出てくるのだ。
ところが、瞬間的に体積を膨張させると、まわりと熱のやり取りをしている暇がないから、自分の温度が下がってしまうのだ。
スプレー缶でずっと噴射し続けると感が冷たくなってくるのもこれと同じ現象だよ。
で、この方法だとパウダー状のドライアイスができるんだけど、あらかじめ液体の二酸化炭素に水を少しだけ混ぜておくと、さらさらの粉状ドライアイスの周りに氷の粒もできて、それがつなぎのように働いて成形しやすくなるそうな。
なので、それを型に入れて押し固めてあげるとペレット状やブロック状のドライアイスになるんだって。
落雁を作っているようなイメージだね。

ドライアイスの意外な利用方法は、遺体の保存。
腐敗しないようにするエンバーミングという処理もあるけど、ドライアイスは冷やして腐敗を遅らせるだけとはいえ、簡便かつ安価で、さらに、棺に入れっぱなしでもそのまま火葬してしまって問題ないのでよく使われるんだそうだよ。
最近はあんまり人を呼ば核なったとはいえ、通夜・葬式とやる場合はけっこう亡くなってから時間がかかるからね。
そういうのもあって、製造業者は減っているけど需要はそこまで落ち込んでおらず、国内製遺贈だけでは間に合ってなくて一部輸入しているそうなのだ。
そんなに使っているものなんだねぇ。

2024/11/16

塩の力

 ステーキを焼くときに塩をあらかじめふるけど、それって実は、下味をつけるという意味だけではないみたい。
どうも、塩で表面を「ひきしめている」んだとか。
なので、塩を振る量や塩をふってからおいておく時間なんかも大事らしい。
ステーキみたいな料理は焼くというプロセスだけが大事なんだと思っていたけど、どうも、焼く前からもう勝負は始まっているらしい。

科学的にみると、肉の表面に塩をふると、その塩が肉表面の水分でかなり濃い水溶液になるんだよね。
そうなると、浸透圧の差で、肉表面の水分をさらに吸い上げるのだ。
どうもこの効果が大事らしくて、肉表面の水分が吸われていく過程で、肉の表面の筋組織が引き締まるんだとか。
でも、それはあくまでも表面だけの話というのがポイント。
肉の内部の水分まで奪ってしまうと焼いたときにじゅしーさが亡くなってパサついてしまうから。
なので、表面だけ塩に水分を吸われて引き締まっているのだけど、表面以外の内部にはさほど影響がない、という状況に持っていきたいわけ。
この作用を知っていると、どれくらい塩をふればよいのか、焼く前にどれだけの時間をあけて塩をふっておくべきなのかが決まってくるよ。
鉄板焼きなんかにいくと無造作に塩をふっているようにも見えるけど、おそらく長年の経験に基づくノウハウみたいなのがあるはずなのだ。

一方で、そうやって表面に塩をふるだけでなくて、塩水につけて肉を柔らかくする、というのもあるのだ。
それが最近時々ネット見かける「ブライン液」というやつ。
レシピによって濃度は変わるんだけど、塩と砂糖を混ぜた水だよ。
塩と砂糖をそれぞれ重量濃度で5%としているのもあるけど、これは相当あまじょっぱいなのだ。
モデレートなやつだと塩3%、砂糖2%でトータル5%の重量濃度。
生理食塩水は0.9%なので、十分に高張な液なので、長く漬け込んでおくとに気が内部から引き締まるはずなのだ。
ちなみに、海水は約3.4%の濃度なので、このモデレートなものでもそれよりも濃いよ。
人間は味覚的に生理食塩水に近い濃度のものをちょうどよい塩気と感じるので、から辛い液ということになるのだ。

で、なんでこんな甘辛い液につけると肉が柔らかくなるのか?
ネット上ではいろんなことが書かれているんだけど、おそらくこういうことだと思うんだよね。
まず、このブライン液の場合は表面処理ではなくて長時間漬け込むタイプなので、肉中の水分とこのブライン液の間で塩と砂糖の平衡状態になるのだ。
つまり、肉からは余計な水分が出てくる、漬け込み液からは塩と砂糖が浸透していく。
十分に長い時間が経過すると、漬け込み液と肉中の水分の塩・砂糖の濃度がほぼ同じになってバランスするのだ。
この状態を目指しているんだよね。
このとき、おそらく肉の方はもとより水分が抜けていて全体的にちょっと引き締まっているんだけど、一方的に水分を搾り取っているわけではないのでぱさぱさにはならないのだ。
さらに、塩だけでなくて砂糖も入っていて、加熱する過程でこの砂糖が保水効果を発揮して肉から水分が抜けにくくなるので、結果としてぷりぷりに仕上がると考えられるのだ。
これが鶏むね肉のようなパサつきやすい肉でもおいしくふっくらと仕上げられる、と言われている所以ではないかと思うよ。

さらに、筋原線維を構成しているミオシンとアクチンは、塩の存在下ではアクトミオシンという形で一つになって水ぬ溶けやすくなるのだ。
これは、ひき肉を練っていくとき、塩を加えると粘り気が出てくるのと同じ現象。
ハンバーグでも餃子の種でも、塩が存在していないとあの粘り気は出ないのだ。
ブライン液の場合は漬け込むだけなので練ったひき肉のおうに粘り気が出るわけではないけど、筋原線維のいち部は浸透していった塩分の濃い漬け込み液の効果で一部アクトミオシンが形成され、水に溶けやすくなっている状態になっているはず。
これは現象的には、筋原線維の一部が融解して肉が柔らかくなっている、ということにほかならないのだ。
なので、普通は加熱すると肉は固くなっていくけど、この効果で柔らかさがプラスされる、ということだね。
さっきの佐藤による保水効果と合わせると、やわらかくふっくらと仕上げるということなのだ。

考えてみると、漬け込み型のから揚げなんかは実はこういう現象が起きていて、漬け込み液には塩分が含まれているし、砂糖やみりんを入れる場合もあるので糖分もあるのだ。
で、店によってはその漬け込み液に半日程度漬け込むとかいうので、まさにこのブライン液漬け込みとほぼほぼ同じ状況になっているわけ。
で、この唐揚げの漬け込み液は、鶏肉に味をしみこませる、という以上に、火を通してもふっくらジューシーというのにも「貢献していると考えられるのだ。
下味付けずに唐揚げ粉で、というのもあるけど、こういうメカニズムを知ると、じっくり漬け込むタイプのから揚げの魅力が増すね(笑)