2013/03/16

Not Kosa but Emmu

1週間前の昼間、東京の空が黄色く染まったのだ!
なんだか外が暗いなぁと思って外を見たらびっくり。
青いはずの空がまっきっきなのじゃ~ん。
すわっ、黄砂が大量に押し寄せてきた、と思ったんだけど、実はこれ黄砂ではなかったんだよね。
気象庁もそう発表しているのだ。
その日はたまたま朝に黄砂が東京でも観測されていたんだけど、昼間の空が暗くなったのは、強風による「煙霧」というものだったのだ。

「煙霧」というのは、固体の微粒子が空気中を漂っていて、視界が不良になることを指す気象現象。
視界が不良になるという意味では霧や靄(もや)もあるけど、これらは液体の微粒子が空中に浮かんでいるのだ。
なので、霧や靄の中を歩くと体が濡れたりするんだよね。
窓越しに見る分には区別がつかないけど、湿度を見れば一目瞭然。
煙霧は多くの場合乾燥している時に発生するのだ。

というのも、煙霧の主な原因のひとつが、強い風で地上のちりやほこりが舞い上げられることだから。
地理が地面から舞い上がるのが「風塵」という現象で、特に程度がひどくて視程がさらにせまくなると「砂塵嵐」と呼ばれるのだ。
一度舞い上がった地理などが漂い続けているのが「塵煙霧」という状況で、中国の砂漠由来の黄色く砂が日本に飛んでくる黄砂はこの一種だよ。
ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠で起きた砂嵐で巻き上げられた砂が偏西風に乗って日本まで届くのだ。
沿岸地域では、海水の飛沫が空中でずいぶんが飛んでできた海塩粒子が漂う煙霧もあるそうなのだ。
なんだか生臭そう・・・。

こういう自然に発生するもののほかにも、山火事や大規模火災、工場の排煙、旧型のディーゼル車の排気、スパイクタイヤにより削られたアスファルトなどの人工的なものもあるよ。
産業革命後の英国では石炭を燃料としていたので工場の黒い排煙が問題になったけど、このときにできた造語が、「煙(smoke)」と「霧(fog)」を合わせた「スモッグ(smog)」という言葉
まさに「煙霧」なんだけど、気象用語的にはスモッグは煙霧の一部なのだ。
古典的なスモッグは「ロンドン型」と呼ばれ、黒いもの。
これは煤煙などが空気中に漂っている状態だよ。
一方で、日本でおなじみなのは「光化学スモッグ」。
こっちはむしろ白いよね。
これは排気ガス中に含まれる窒素酸化物や炭化水素(ベンゼン等)が紫外線によって光化学反応を起こすことでオゾンなどのオキシダント(酸化性物質)が生成して発生するのだ。
目やのどが痛くなったりするので、発生が懸念されるときは注意報が出るんだよね・・・。

それから、火山が噴火するときに空中に舞い上げられる火山灰によって発生することもあるよ。
火山灰の粒子の大きさがある程度大きいとすぐに地上に降ってくるんだけど(降灰)、粒子が小さいと空中で拡散するんだよね。
風に乗って運ばれるし、空が暗くなるのだ。
日本でも江戸時代に浅間山が噴火したとき(1783年)には江戸でも空が暗くなったという記録が残っているよ。
恐竜が絶滅した原因として提唱されているグレートインパクト仮説では、ユカタン半島付近に超巨大な隕石が落下し、そのときに舞い上げられたほこりでひどい煙霧の状態になった、というものなんだ。
それで太陽光線が長期にわたって遮られ、植物が枯れるとともに地上が寒冷化して、恐竜などの大型の動物が絶滅に至った、とされているのだ。

ちなみに、浅間山の噴火のほぼ同時期に有名な天明の大飢饉が発生しているんだけど、長らく浅間山の噴火による影響だと考えられていたんだよね。
ところが、飢饉が始まったのは噴火より前で、実際には、アイスランドにあるラキ火山のラキガギル割れ目の噴火が原因のようなのだ。
この噴火は世界的に農作物の不作をもたらし、フランス革命の原因ともなったと言われているんだよ!
やっぱり煙霧で時代が動いている・・・。

今回の煙霧は、春が近づいて気温が上がり、湿度が下がっていたところに、西からものすごく冷たい低気圧がやってきて、それで冷たい強風が発生したのだ。
その風により北関東の土埃などが舞い上げられた、というのが真相みたい。
もともと塵などは波長の短い青い光を散乱しやすいので、空中に塵が漂っていると太陽光が黄色から赤く見えるのだ(夕方空がオレンジ色に染まるのと基本的には同じ。)。
たまたま黄色く見えたので、黄砂だ、と騒がれたんだよね。
すでに東京でも煙霧は何度か観測されていたらしいけど、あそこまでいくとびっくりするよね。

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