2013/03/30

格差社会は違憲?

とうとう広島高裁で先の衆議院選挙を無効とする判決が出たのだ。
これまでも「一票の格差」をめぐっては、「違憲状態である」という判決が出ていたんだけど、合理的な期間内に是正をすることが求められるだけで、すでに終わっている国政選挙を無効とする判決は出ていなかったんだよね・・・。
これはかなりゆゆしきこと。
前回選挙では、一票がもっとも軽いのが千葉4区(野田前首相の選挙区)、もっとも重いのは高知3区で、その差は2.42倍。
ずっと2倍を越える格差が続いているけど、前回、前々回、さらにその前より悪化しているのが問題のようなのだ。

一票の格差問題は常に国会でも話題で、今も「0増5減」の是正案が出ているけど、周知期間の問題や「区割り勧告」との関係もあって、前回選挙までには実現できなかったのだ。
次の選挙には適用されるんだろうけど、それでも大きな改善にはならないんだよねぇ(>o<)
次の選挙がいつになるかがわからないけど、その間にも人口動態が変わるし、なかなか難しい問題なのだ。
ゼロベースで見直しすればいいような気もするけど、国会議員としては自分たちの利害が関係するから、そんなにドラスティックな見直しはしづらいのだ・・・。

衆議院議員選挙の場合は、内閣府に設置されている審議会である「衆議院議員選挙区画定審議会」が、選挙区の区割りに問題があって改定が必要と判断した場合に総理に勧告することになっているのだ(直近では28日に出たばかり!)。
実際には国会で与野党が是正案を議論し、合意したものをかけることになっていて、「○増○減」というのが決まったら、実際にデータを基に選挙区の区割りをしていくんだ。。
ちなみに、委員は7名、任期は5年で、国会同意人事だよ。
この区割りの基準に使っているのはあくまでも人口で、有権者でない子どもも含んでいることに注意なのだ。
衆議院議員選挙区画定審議会設置」第3条において、「前条の規定による改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口(官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口をいう。以下同じ。)のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。」と定めていることに由来するんだ。
で、ここに出てくる「最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本」というのがいわゆる「二倍の壁」というやつで、「一票の格差」が出るのは仕方がないから、せめて2倍以内に納めようよ、という趣旨だよ。
あくまでも「基本とし」で、後に「総合的に考慮して合理的に行」うこととなっているので、努力目標なんだけど。

このときに出てくる「○増○減」というのは選挙区の増減の話で、議員一人当たりの人口が多すぎる地域では新たに選挙区を増やし、逆に少なすぎる地域では選挙区をへらすことで是正を図るんだ。
今回は「0増5減」なので、単純に選挙区が減るだけで、議員定数も減ることになるよ。
なので国会でも抵抗が強かったんだよね。
例えば、次の区割りでは、千葉や神奈川は全体的に議員一人当たりの人口が多いので選挙区を増やし、逆に議員一人当たりの人口が少ない高知や山梨なんかで選挙区を減らすんだ。
選挙区の数は減らなくても、人口の偏りなんかもあるので、他の地域でも区割りの見直しは行われるのだ。

で、平成6年(1994年)の小選挙区導入のときから構造的な問題となっていたのが「一人別枠方式」という配分方法。
衆議院の小選挙区の場合、過疎地域に厚く配慮するとの理念のもとに、300あった小選挙区のうち、まず各都道府県に1ずつ割り当て、残りの253を人口で比例配分していたのだ。
比例配分は最大剰余方式というやつで、標準的な議員一人当たりの人口を基数として定め、都道府県の人口をこの基数で割るのだ。
このとき、商の整数部分はそのまま小選挙区の数として割り当て、残った選挙区は小数点以下が大きい方から割り当てていくんだ。
ただし、この方法だとどうしても限界があって、一票の格差はなくならないんだよねorz
(議席数の増減で割当数が大きく変わるパラドックスも知られているのだ・・・。)

今回の「0増5減」ではこれを廃止されることになっていて、昨年11月に「衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律」が成立して実現されたのだ。
この法律では、公職選挙法を改正して衆議院定数を480から475に減らす(そのうち小選挙区分は300から295に減らす)とともに、衆議院議員選挙区画定審議会設置法も改正しているんだ。
改正前の衆議院議員選挙区画定審議会設置法では、第3条に第2項があって、「前項の改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は、一に、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第四条第一項に規定する衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とする。」と定められていて、これがまさに「一人別枠方式」の法的根拠だったのだ!
これが今回削除されたことにより、一人別枠方式もなくなったんだ。
すると、今後鳥取や島根で人口減少が続いていくと、それぞれ衆議院の選挙区は全県区になり、さらに人口が減れば、両県でひとつの選挙区、なんてことにもなりかねないんだよ。

参議院の場合はこういう仕組みではなく、あくまでも議院の中で議論、処理されていくのだ。
基本的に参議院は都道府県単位の選挙区と全国比例だから、各都道府県に議席をどれだけ配分するかしかないんだけど。
でも、一票の格差ということでは衆議院をはるかに上回る5倍を越える格差が生じているよ。
3年ごとに半分ずつを改選するというのも問題なんだよね・・・。
これを是正するには都道府県単位の選挙区をやめるしかないので、大きな問題なのだ。
ちなみに、米国の上院のように人口にかかわらず、都道府県ごとに一定の議席を割り振ればよい、という意見もあるんだけど、日本国憲法では、第43条で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と定めていて、参議院議員も地方の代表ではなく、全国民の代表という建前なので、憲法改正が必要なのだ・・・。

選挙の違憲判決は、日本国憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」に基づくわけだけど、なかなか難しい問題だね。
今回の是正でどれだけ改善するのかはよくわからないけど、理論的に衆議院の小選挙区制を続ける限りは大きく改善はされないのだ。
それこそ日本全国をひとつの選挙区にして、上位四百数十名を選ぶような選挙なら完全に平等なんだけど、そうなると得票数の少ない下位の方の人は本当に国民の代表かどうかあやしくなるしね(笑)
むかしみたいに中選挙区制を導入すると、けっこう格差は解消できるんだよね。
もともとは二大政党制を目指して小選挙区制を入れたけど、与党に匹敵する大きな野党が育つどころか、むしろ小さな野党が乱立しているような・・・。
さてさて、今度の是正とその後の選挙でどうなることやら。

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