2013/06/22

トロー・ミー

ときどきネットですごいものを目にするのだ。
それは「メシマズ」。
料理が上手でない、という以上に、食べるのが危険なものを作る人たちみたい・・・。
で、その中には、友人や家族の指導でなんとか上達していった、というものがあるんだけど、そういうものは、たいていの原因が、「味見をしない」というのと「レシピどおりに作らず勝手にアレンジする」というものみたい。
もともと味覚音痴の人もいるので、その場合はもう無理なんだけどorz

「レシピどおりに作る」っていうのは意外にできていないもので、あんまり人のことを言えない部分もあるのだ。
よくあるのは、カレーやシチューのルーのレシピで、「ルーはいったん火を止めてから割り入れる」とあるんだけど、たいていの人は弱火のまま入れて溶かしているんじゃないかな?
まさにボクもそうだったんだけど、実は、ここはけっこう重要なポイントのようなのだ!
火を止めてから入れ、十分溶かしてから再加熱する。
これだけでとろみがまろやかになり、ダマにもなりにくいんだって。

カレーなどのとろみはデンプンの糊化によるもの。
吸水したデンプンは加熱すると結晶構造がゆるみ、そこに水分子が入り込むことでゲル状になるのだ。
あんまり加熱しすぎると結晶構造が完全に崩壊してかえって粘度は低下するんだよね。
八宝菜とか麻婆豆腐とかのとろみのある料理を電子レンジで温めすぎるとさらっとなってとろみが消えてしまうのはこのためなのだ。
とろみは二度と復活しないので、もう一度水溶き片栗粉でとろみをつけるほかないよ(>o<)
鍋で温める場合はそこまで急激に加熱しないのでとろみは残るんだけどね。

カレーのルーのとろみの主成分は小麦粉。
ルーが溶けた状態で加熱されると、小麦粉の中のデンプンが糊化してとろみになるのだ。
このとき、火を止めずにルーを入れてしまうと、ルーが溶けきれないままルーの表面の小麦粉デンプンが糊化していてしまうんだ。
すると、ルーはさらに溶けにくくなって、ルーのダマができてしまうのだ(ToT)
これが火を止めてから入れるようにレシピに書いてある理由だよ。
まずは火を止めて加熱をやめ、余熱でルーを完全に分散させることが大事で、その後加熱してあげれば均一に小麦粉デンプンが糊化してなめらかなとろみになるのだ♪
給食のカレーでも、肉かと思ったらルーの溶け残りかよ!、ということがあるけど、きちんとレシピどおりにやればそういう不幸な事故は避けられるのだ。

水溶き片栗粉の場合も、失敗を少なくするためにはいったん火を止めてから加え、よくかき回してから加熱する、というレシピがあるよ。
プロは煮立った中にさっと「の」の字を書くように入れ、さっくり混ぜて作ってしまうんだけど、これはかき回す速度が重要で、もたもたしていると水溶き片栗粉は入ったそばから糊化していくので、ダマになっていくのだ・・・。
あらかじめ水と片栗粉を混ぜて十分に膨潤させておいて、入れる直前によくかき混ぜ、全体に広がるようにさっと入れてそのまますぐかき混ぜる、という手際の良さがあってこその技、ということだよ。
上っ面だけまねしてもなかなかうまくいかないのだ。
実は加熱時間も重要で、とろみが出てきたなぁ、と思ってからさらにしばらく加熱しないとまだデンプンの粒子が残っているので、口当たりがあまりよくない状態なんだって。
そこから完全にデンプン粒子が崩れるまでにはタイムラグがあるので、しっかり熱を入れて方がよいそうだよ(カレーなどの煮込みだとあまり問題にならない部分だけど。)。

ちなみに、とろみをつけることのメリットとしては、炒め物なんかだと表面につやが出て美しいというのがあるよね。
これは日本料理のくず寄せなんかでも同じ。
また、薄味でもしっかり味わえる、とか、冷めにくい、なんてのもあるのだ。
これはとろみの物理的性質によるもので、粘度があるので口の中での移動速度が遅くなるのだ。
すると、とろみがないさらっとしたものと比較してより長い間口の中にあるわけ。
舌の上で味を感じる味蕾にも長い間接するので、味を強く感じるのだ。
熱についても同様で、「のど元過ぎれば・・・」だけど、なかなかのど元を過ぎないのでより熱を感じているというわけ。
冷めるのが遅くなるわけじゃないので注意だよ。
ちなみに、冷めると塩分はより強く感じるので、冷めてしまったとろみがついた料理は塩辛く感じることが多いのだ。

というわけで、ちょっとした料理のこつというのは経験の中から出てきたものだけど、科学的にも妥当なものなんだよね。
レシピの中の工程や材料にはアレンジがきくところもあるけど、逆に絶対に外せない部分もあるので、そこの見極めがポイントってこと!
ここでセンスのあるなしが出てくるわけ(笑)
センスがよろしくないと、果敢な「アレンジャー」としてメシマズ路線に陥ってしまうのだ。
原理的なところまで勉強する必要はないけど、まずはレシピどおりちゃんとい作ってみる、その後ちょっとずつアレンジを加えてみて、失敗したらそれは二度とやらない、ということでしか上達はしないのだ。
メシウマの道は一日にしてならず。

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