2013/07/06

海藻ペーパー

暑い季節になってきた!
こんなときにはさっぱりしたものが食べたいもの。
で、コンブですよ(笑)
おでんとか昆布巻きじゃなくて、とろろ昆布。
醤油と鰹節を加えてお湯を注げば簡単にお吸い物になるので便利に使っているんだけど、冷たいそばやうどん、そうめんの具としてもさっぱりおいしいよね♪

とろろ昆布に似たものにおぼろ昆布というのがあるけど、この2つの違いは削り方なのだ。
どちらもコンブを酢漬けにして柔らかくした後に削るんだけど、とろろ昆布はコンブを重ねてプレスしてから、側面から糸状に削っていくのだ。
なので、できあがりは細い繊維がからまったようになるわけ。
一方、おぼろ昆布は一本のコンブを延ばし、特殊な包丁を使って表面を面的に削っていくのだ。
刃を当ててすっと引くと鉋のように薄いシート状のおぼろ昆布ができあがるのだ。
こちらは削るのに手間がかかるので、とろろ昆布より高級品なんだって!

関東だとあまり見かけないけど、関西だと海苔の代わりにおにぎりに巻いたり、うどんの具になったりする結構メジャーなものなのだ。
起源はあまり定かでないものの、鍛冶職人が多く、刃物の街でもあった大坂・堺で生まれたと言われているよ。
もともとコンブには少し渋みがあるので、湿気のあるところで貯蔵することで甘みを出していたんだって。
大阪(当時は大坂)はそれに適していたので、大坂にはたくさんのコンブがあったのだ。
ところが、保存状態が必ずしもよくなく、表面がかびてしまうことも・・・。
そこで、酢に漬けて柔らかくしてから表面を削る、なんてことを考え出したみたい。
この手法は北陸地方に伝わり、北陸では郷土料理にも取り入れられるほどコンブの加工が盛んになったんだそうだよ。

酢に漬けると肉でもなんでも柔らかくなるけど、一般的には、酢で漬けると液性が酸性になるので、もともと持っている酵素による加水分解が進むから、と考えられているのだ。
肉なんかは放っておけば徐々にタンパク質の加水分解が進んで柔らかく、というか、どろどろになっていくんだけど、腐敗させずにタンパク質の加水分解を加速しようというのだ=3
これは柑橘系の果物の果汁やヨーグルトで肉を軟らかくするのと同じ。
(パイナップルやパパイヤの場合は、果物側に含まれるタンパク質分解酵素を利用しているので別だよ。)
牛肉なんかは熟成させるといって吊しておくけど、これもゆっくりと自分の酵素でタンパク質の加水分解をさせ、うまみ成分であるアミノ酸を作らせているのだ。

ちなみに、サバやコハダを酢締めにするのは肉質を柔らかくする、というよりは腐敗防止。
酢に含まれる酢酸にはけっこう強力な殺菌作用があるので、塩をして余計な水分を抜いた後に酢に漬けるんだよ。
すると、身の表面は酢のタンパク質凝固作用で少しかたくなり(同時にちょっと白くなるよ)、身の中には酢が染み通って抗菌仕様になるのだ。
青みの魚なんかは足が速くてすぐに腐敗するから、酢で肉質を柔らかく、というより、殺菌作用で保存できるようにする方が重要なんだよね。
なので、しめ鯖なんかは刺身に比べるとむしろ肉質が少しかたくなるというわけ。

肝心のコンブはどうかというと、よくわからないんだけど、おそらく細胞同士を接着しているようなタンパク質が変成て柔らかくなるんじゃないかなぁ?
一度乾燥させているので内在性の酵素が働くとも思えないから、酢のタンパク質凝固作用によってタンパク質の高次構造が失われて、結果として構造が柔らかくなるんじゃないかと思うのだ。
コンブはそのまま煮ても実はなかなか柔らかくならず、弱火でじっくりと長時間煮るか、圧力鍋で煮ないとダメなんだよね。
ところが、酢と一緒にすると一気に柔らかくなるのだ。
食物繊維の本体であるセルロースは酢や熱でそうそう分解しないから、やっぱり間をつないでいるようなタンパク質が関係しているんだろね。
熱分解するのは大変だけど(これは肉を軟らかく煮るのと同じ)、酢の化学作用を使うと早いというわけ。

で、おぼろ昆布に話をもどすと、柔らかくなったコンブを削っていくんだけど、この課程で3種類の加工品ができあがるのだ。
まずは、削りはじめのコンブ表面が薄くなったもの。
色が黒いので黒おぼろと呼ばれるんだけど、ここは酢がよく浸透しているので酸味が強いのだ。
さらに削っていくと白い部分が現れるんだよね。
あんまり酢が染み込んでいないので、酸味はあまりなく、むしろコンブ独特の甘みが強いのだ。
ここが太白おぼろや白おぼろと呼ばれる部分。
高級品だよ。
で、削れないところとして残る芯のの部分が白板昆布。
バッテラなんかに載っているやつだよ。
で、副産品としてコンブの両端(削るときに固定する部分)が残るのだ。
ここは爪昆布と呼ばれ、お菓子として食べられたり、煮込むと出てくる粘り(はやりの「フコイダイン」)であく取りに使われたりするそうだよ。
さすがにむかしの日本人だけあって無駄がない!

というわけで、コンブは出汁をとるだけじゃなく、佃煮にするだけじゃなく、酢コンブとしてしゃぶるだけのものでもないのだ(笑)
とろろ昆布はちょっと酸っぱいにおいがするので苦手な人もいるのかもしれないけど、汁ものの具にするのもよし、削り節のように使うもよしで意外といろん
な料理に使えるのだ。
コンブを愛し、食してきた日本人が生み出した伝統の技術の成果をしっかり味わおう!

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