2013/11/30

放るもんちゃうで!

この季節になってくると宴会メニューでよく出てくるのがもつ鍋。
BSE問題の時に一時下火になったけど、まだまだ根強い人気があるのか、もつ鍋の店は消えないのだ。
一時期はやったけどすぐに姿を消してしまったジンギスカンとは違うね・・・。
肉なのに安価だし、あたたまるし、居酒屋の宴会にはちょうどよいのかも。

「もつ」は、一般に内臓肉のことで、小腸・大腸や、胃、肝臓、心臓、横隔膜なんかがメジャーだよね。
タン(舌)やテールも含めることがあるので、日本畜産副産物協会というところでは、鳥獣肉のうち、正肉を除いた部分の可食部で、臓物や舌、皮、尾、血液などをまとめて「畜産副産物」として定義しているよ。
なんか内臓の名前がそのまま出てくるとあれだけど、ミノ、ハチノス、レバー、ハツ、ハラミなんて言われると焼き肉が食べたくなるよね(笑)
現代ではもつ鍋だけじゃなく、いわゆるホルモン料理がかなり市民権を得て、国民の間に広まっているのだ。

牛肉なんかだと正肉は枝肉としてつるしておいて熟成してから食べるんだけど、内臓部分はいたみが早いのですぐダメになってしまうのだ。
ブタやトリのようなすぐに正肉として流通させるものでも、内臓部分はやはり腐りやすいので、むかしは捨てていたんだよね。
なので、と殺場で手に入れてすぐに下処理をする必要があったのだ。
このため、あまり一般には流通せず、一部の人(主に在日系の肉体労働者と言われているよ。)の食べ物とみなされていたんだ。
ただし、流通経路に乗らずにと殺場からそのまま持ってくるため、極めて安価に入手でき、きちんと処理して臭みを抜けばおいしいので、食べている人の間ではソウルフード的になっていったみたい。
実際、中華料理では普通に内臓肉も使うし、欧州でもイタリアなんかでは内臓肉の料理でメジャーなものがあるよね(トリッパとか。)。

日本でも古代から食べていないわけではなかったんだけど、広く普及するまでには至っていなかったのだ。
明治になって肉食が一般化していっても、内臓肉は安いけど独特のにおいがあるし、外見も悪いので避けられる傾向にあったらしいのだ。
それが、終戦後になって、安いという理由で大衆酒場でもつ煮込みやどて煮などの料理として親しまれるようになったのだ。
もともと焼き鳥の代用品としてもつ焼きなんかもあって、もつ料理がちょっと一般化してくるんだよね。
関西のおでん(関東炊き)に使われるすじ肉も本来は食材として不適格とされてきたものなんだけど、長時間煮込んで柔らかくするとおいしく食べられるので、使われるようになったのだ(ただし、煮ている間にすごいにおいがするよ・・・。)。

一気にもつが食材として広まったのはもつ鍋ブームから。
関東ではもつの味噌煮込み、関西ではどて煮がもつの煮込み料理として親しまれていたんだけど、にんにくをきかせた醤油ベースのスープでニラやキャベツと一緒にもつを煮込んだ鍋が博多からやってきたのだ!
安くておいしい、と一気に広まっていったんだよね。
これに続いて、焼き肉でも、従来はカルビやロースが中心だったのが、ホルモンも注目されるようになり、ミノやレバーだけでなく、ハラミとかタンなどもよく食べられるようになったのだ。
で、こうして一度食べる習慣がつくと、他の場面でも登場するようになるんだよね。
それまで日本ではあまり任期がなかった欧米の内臓肉料理も普通に食べられるようになるんだよね。

もつと言えば、広く「ホルモン」という言葉は「放るもん(=本来捨てるもの)」から来ているという言説が流布しているよね。
でも、どうもこれは正しくないようで、もともとは、「栄養満点な料理」という意味で、本来のホルモンの意味をひっかけていたようなのだ。
そのときの「ホルモン料理」というのは、内臓肉の料理だけでなく、卵、納豆、山芋なども含め、精力を増強する料理ということだったみたい。
「ホルモンがみなぎっている」という言い方のホルモンに近いわけ。

今でももつにはコラーゲンがたっぷり含まれているので美容によい、なんて言われるけど、これはちょっと微妙なんだよね。
確かに大量のコラーゲンは含んでいるけど、経口で摂取した場合、しっかりアミノ酸まで分解されてから吸収されるので、別にコラーゲンとして摂取されるわけではないのだ。
一般に内臓肉系は消化があまりよくなく(よくかまないと飲み込めないしね)、プリン体も多いので、生活習慣病には悪影響があるとの意見も・・・。
肉食獣が獲物を仕留めたときに真っ先に内臓を食べるので、そういう「栄養満点」的なイメージがあるんだろうけど、それはその場で生で食べる場合。
内臓に栄養があるのはそこに大量の血が通っているからで、血液にはビタミンや糖分、脂肪など栄養素がたっぷり入っているのだ。
でも、処理した内臓肉だと、そういうわけにもいかないんだよね。

別に栄養価が低いとかいうわけじゃないけど、いわゆる普通の正肉に比べて格段によい、というものではないのだ。
腸や肝臓なんかだと脂肪分も多いし、それを理解した上で食べる必要があるんだよね。
何はともあれ、おいしく食べられればよいのだけど(笑)
今では甲州もつ煮とか、B級グルメとしても広がりを見せてきているから、さらにおいしいもつ料理を食べる機会は増えるかもね。

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