2014/12/27

Let it wet!

最近は傷跡が残らずに早く治る、という絆創膏があるのだ!
商品名で言うと「キズパワーパッド」とかがそう。
これまでのシールにガーゼがついているものとは違って、見た目はのっぺりしたシールなんだよね。
傷口に貼ると、傷口からしみ出てきた体液を吸って、白いふくらみがぽこぽこ現れるのだ。
なんだか不思議な感じのものだよね。

この原理は、20世紀の終わり頃から浸透してきた湿潤療法というもの。
従来の創傷の治療は、とにかく消毒して、傷口をしっかり乾かして、と対処するんだけど、それを根本から否定して、消毒せずに水できれいに洗うだけで、かつ、適度に保湿して決して乾かさない、というもの。
創傷の治癒には繊維が細胞などが増殖して傷口を埋めていくことが大事なんだけど、そもそもそういう細胞の増殖は乾燥しているところではなく、細胞培養と同じように水分があるところでないと起きない、というところが発想の転換点なんだよね。
つまり、傷口に細胞が培養液に浸っているような状況は作り出せれば、そこで増殖が進んで、治癒も加速できるということなのだ。

生体機能としては、傷口には血小板が集まって、それが固まって「かさぶた」の形でふたをし、内部の乾燥を防ぐとともに、外からの雑菌や異物の侵入を防いでいるのだ。
でも、かさぶたの場合は、どうしても傷口に痕が残ってしまうんだよね・・・。
それと、かさぶたの場合は傷口が固く固定されるので、治癒に貢献する細胞の動きが制限されるため、治りも少し遅いのだ。
自然に直すという意味ではなかなか優れたシステムなんだけど。

このかさぶたの代わりに、傷口表面を覆って、その下で保湿した上で自然治癒力を高めるのが湿潤療法。
出血が止まった後、傷口からは薄い黄色の体液(滲出液)が出てくるけど、これが治癒力の鍵で、これが傷口を覆って自由に動けるようにしておくことが大切なのだ。
かさぶたでふたをしない分、滲出液が傷口表面も覆って、傷跡が残りづらく皮膚が再生するのだ。
最初に不純物を除いておけば、白血球などの自然免疫であまり感染症を気にする必要もなく、リジッドに傷口にふたをする必要はなくて、外気に触れず、乾燥させないようにすればいいんだよね。
ただし、動物にかまれた、さびた釘や枯れ枝なんかで深く傷ついた場合は、狂犬病や破傷風のおそれがあるので、しっかりと医師の診断を受けないとダメだよ。

消毒液を使わないのもみそ。
消毒液は雑菌も殺すんだけど、増殖して皮膚を再生しようとしている細胞にも悪影響が出るのだ。
それで治癒が送れる原因にもなるわけ。
自然治癒力でなんとかなる範囲なら、消毒液をつけ続けない方が治りが早くなるんだよ。
しみないし、一石二鳥なのだ。

この湿潤療法を簡便にやるのがラップで包むラップ療法。
傷口をきれいに洗い、色泌尿ラップをまくだけ。
場合によっては乾燥を防ぐためにワセリンを塗ったりすることもあるんだって。
で、適宜ラップを交換しながら、傷口を決して乾かさないように、ラップの下で滲出液が行き渡るようにするのだ。
しばらくすると、薄い皮膚が復活するので、その時点でラップを外すんだよ。
治る直前はかゆみも出てくるけど、がまんがまんで傷口に触れないようにしないと痕が残るのだ。
でも、かゆみがあまりにも強い、かぶれてきた、なんて場合は問題が生じている可能性もあるので、医師の診断を受けた方がよいみたい。
また、化膿した場合もすぐに中止して、きちんと消毒した方がよいよ。

家庭用にもっと気軽に湿潤療法をできるようにしたのが、新しい絆創膏。
この場合は、ポリウレタンのフィルムの下にハイドロポリマーというのがあって、これが滲出液を吸収して膨潤するのだ。
湿った状態のまま傷口にソフトに密着するので、滲出液の治癒力は妨げられないで、保湿できるんだ。
膨潤したポリマーが白いふくらみとして外から見えているんだけど、これが落ち着いてくると治ってきた証拠。
かゆみも治まって、ふくらみも収まってきたら治癒完了なのだ。
これはラップよりもさらに傷口を閉塞環境に置くので、難しい言葉では「閉塞性ドレッシング剤」というのだそうだよ。

この絆創膏は、もともとはスウェーデンの軍隊で使われ始めたんだって。
1985年に足にできたまめや靴擦れの治療に使われ始めたんだとか。
その後開発が進み、まずはスポーツショップでアスリート用の商品として出たのだ。
家庭用で売り出されたのは21世紀に入ってから。
わりと高価なものだけど、けっこう普及しているよね。
毎日お風呂に入るたびに従来の絆創膏を交換していたときより確かに、早く、きれいに治るし。
軍隊での最初の利用のように、いつまでも傷口がじゅくじゅくするような創傷には効果的なのだ。

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