2015/01/17

ダウニング街10番地鼠捕物帖

先日、英国首相官邸である「ダウニング街10番地」の前でキツネが目撃された、というニュースがあったのだ。
普通に官邸の前をキツネがそしらぬ顔で歩いている、おもしろい写真なんだよね。
それにしても、日本の首相官邸のまわりにはキツネが生息するような環境はないけど、英国は違うのかな?
日本でも皇居にはタヌキがいることが確認されているけど・・・。


などと思いながら調べてみると、おもしろい発見があったのだ!
それは、英国首相官邸には公職に就いたネコがいるということ。
その名も、「首相官邸ネズミ捕獲長」(笑)
和名ではちょっとアレだけど、英語では「Chief Mouser to the Cabinet Office」という立派な名前なんだよね。
名前のとおり、ペットとして飼われているのではなく、ネズミを捕るために飼われているので、働きが悪いネコが更迭・降格されたこともあるようなのだ。
日本でもネコが名誉駅長とかになることもあるけど、政府が任命しているって英国らしい、エスプリの効いたやり方だよね。

ダウニング街は日本の永田町・霞が関地区のように、議会や官庁の建ち並ぶウェストミンスター地区にあるんだけど、むかしからネズミが多く住んでいることで知られているんだって。
立憲君主制に移行する名誉革命の前、王政の時代からここには王国の要人の邸宅があって、古くはテューダー朝のイングランド王ヘンリー8世の治世に、大法官だったウルジー枢機卿が自分の飼いネコを傍らに置いたことにまで遡るんだって。
16世紀前半の話だよ。
ネコ好きなのか、ネズミ被害が大きいのか・・・。

正式に役職付で雇用されたのは1924年からで、サッチャー政権まで使えたウィルバーフォースや、その後任になったハンフリーなんてのが有名みたい。
ちなみに、それまでは非公式に観衆でこの役職名が使われていたんだけど、ハンフリーからは正式な役職となったのだ。
キャメロン政権に使えていたラリーは、ねずみ取りをさぼるので、途中で捕獲長から更迭され、捕獲員に降格になったようだよ(笑)
その後任には野外生活経験があって、捕獲能力が高いことが見込まれるフレイヤが就き、現在に至るのだ。
ちなみに、空位だった期間もあるみたいで、必ずいるわけでもないみたい。

すごいことに、この役職のネコにはきちんと給与も支払われていて、現在は年100ポンド。
1929年時点の資料では、日に1ペニーだったんだそうだよ。
100ポンドの経費が実際にどうなっているのかわからないけど、えさ代とかになっているのかな?
今のレートだと1ポンド=180円くらいだから年1,8000円。
えさ代としても高いわけではないよね。
ネコが本当に自分で自由に使えるんだとしたら、大きな額だけど(笑)

ネコが人の社会に入ってきたのは、まさにこのネズミを捕る能力が期待されているところが大きいんだよね。
日本ネコの場合、奈良時代に仏教の経典が伝来した際、その経典をネズミから守るものとしてネコが導入されたという話もあるのだ。
実際には、弥生時代の遺跡からネコの骨が見つかった例もあるそうで、その前から地域によっては飼われていた可能性もあるんだけど。
今では、忠実に飼い主に使える犬とは違って勝手気ままに生きているイメージが強いネコだけど、古代社会では重要な役割を担っていて、それが21世紀の英国首相官邸でも期待されているということだよね(笑)
米国大統領一家の犬があくまでもペットなのに、英国のネコはまだ現役ということなのだ。

英国はこういうのが好きなのもあるんだろうけど、マスコミも、捕獲長が職務に専念しているかどうかを報道することがあって、ラリーが更迭されたのも、最近職務に不熱心という報道があったからみたい。
給与をもらっているからしかたないにしても、官邸のマスコットというだけでなく、ネズミ取りの職責を果たさなければならないというのは大変そうだなぁ。
日本みたいにむしろ飼い主より絵荒そうなネコとは違うよね。

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