2015/08/15

宇宙開拓史序章

国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の油井宇宙飛行士が、ISSで育成した「宇宙レタス」を食べたのだ!
米国航空宇宙局(NASA)が持ち込んでいる野菜栽培装置のVEGGIEで栽培されたもの。
仲間の宇宙飛行士と乾杯のような仕草をした後食べる映像が流れていたよね。
今はまだ飲食物は原則として地上から宇宙へ引き上げているけど、将来的な火星探査なんかを想定すると、行くだけで半年もかかるので、どこまで自給自足できるかが鍵となるんだ。
今までは水の再利用はかなり進んでいたんだけど、こうして食べられる植物を栽培するのは画期的な成果だよ。
ちなみに、すでに昨年のうちに1回栽培していて、そのときは食べずに全部地上に持ち帰って検査に回したみたい。
安全性が確認されたので今回の試食に至ったわけだけど、残りは冷凍してやっぱり持ち帰るんだそうだよ。

このニュースを見てすぐに思い出したのが、旧日本海軍が潜水艦の中でもやしを育てていたという話。
大航海時代にはビタミンC欠乏による壊血病が長期航海の難敵で、それを防ぐために柑橘類を載せたりしていたんだよね。
そこで帝国海軍が着目したのがもやし。
もやしは光がなくても育つし、ビタミンCも多く含んでいるのだ!
なかなか頭がいい。

でも、今回はそこからまた格段と進歩している話なんだよ。
すでに野菜工場というのがあって、工場内で人工の光を使って野菜栽培がされているけど(レタスやサラダ菜など)、それを宇宙でやった、ということなのだ。
光合成の主役である葉緑体の中には葉緑素(クロロフィル)という色素があって、これが光合成において光のエネルギーを電気のエネルギーに変換して、二酸化炭素と水から糖を創り出すんだよね。
で、この葉緑素は、特徴として、450nmの波長の青い光と、650~700nmの波長の赤い光をよく吸収する性質があるのだ。
特に赤い光の方をよく吸収するので、その補色である緑色に見えるんだよ。
純粋にクロロフィルを溶かした溶液は緑色に見えるけど、光にかざしながら傾けると、吸収した光をまた放出しているので赤く見えるのだ。

で、光合成の光化学反応では、この赤い光の吸収がきいてくるんだ。
すなわち、人工的に光合成反応を起こそうと思ったら、太陽のようないろんな波長の光がスペクトルで混ざっている白色光である必要はなくて、葉緑素が吸収する赤い光だけでもなんとかなるのだ。
それを利用したのが野菜工場で、これまでは電球を使っていたんだけど、長寿命で省エネなので、光源が発光ダイオード(LED)に置き換わってきているんだよね。
今回も宇宙ではLED光源が使われているのだ。
っていうか、ISS内の照明もだいぶ前から蛍光灯からLEDに替わってきているんだよね。
ガラス管が割れることもないし、何より放射線にも強いので、強い宇宙線にさらされる宇宙空間でも壊れにくいのだ。

今回宇宙空間で育てたのは、リーフレタスの一種であるレッドロメインレタスだって(サニーレタスの近縁種。)。
映像で見る限り赤いなぁ、と思っていたけど、そういう種類だったのだ。
この赤い色はアントシアニンで、見土井色の結球型レタス(いわゆる普通のレタス)に比べてβ-カロチンの含有量が多いみたい。
他にビタミンCやカリウムも含まれるので、ビタミンやミネラルの補給にもよいのかも。
普通のレタスは食物繊維ばかりであまり栄養がないから、多少はましなのかな?
これでも、もやしだけに比べたら大きな進歩だよね(笑)

とりあえず今回はレタスなんだけど、長期の宇宙旅行を考える上では、タンパク源も考えないといけないのだ・・・。
そこで俄然注目が集まっているのが昆虫食。
もともとあまり昆虫を食べない日本人(イナゴや蜂の子を食べる習慣が地方によってはあるんだけど)からするとえっと驚くけど、東南アジアなんかはわりと普通に食材として昆虫を見ているんだよね。
チンパンジーなどの類人猿もよく昆虫を食べるので、「慣れ」の問題なのだ。
で、この昆虫たちは、ほ乳類に比べて少ない飼料で大量に育成できるので、宇宙空間のような限られた空間での貴重なタンパク源と目されているんだ。
ということは、近い将来には、宇宙レタスで育ったイモムシを食べる日が来るのかも・・・。
あ、ボクは地上住まいでいいや(笑)

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