2016/01/16

蒸気でふっくら

鏡開きも終わって、おもちにも飽きてきた頃?
今年はそんなに食べていないけど。
でも、そろそろパンが食べたくなるんだよね。
日本でパンの朝食と言えば、食パンのトーストなのだ!
最近はクロワッサンとかオサレなパンを食べる人もいるけどね。

食パンがなぜそう呼ばれるようになったのかはよくわからないらしいけど、外国人居留者向けの「主食用パン」が縮まったものとか、美大生が消しゴム代わりに使っていた「消しパン」と区別するためとか、いろんな説があるのだ。
単純にパン食が一般的でなかった時代に、「食事とともに食べるパン」だから「食パン」なのだと思っていたけど。
今ではテーブルロールとかフランスパン(バゲットやバタール)なんかも並ぶけど、むかしはそんなにパンの種類なんかなかったろうし、何より、英国式の四角い箱型に入れて整形して焼成するブレッド型は工場で大量生産できるので、英国の植民地などに広まっていったんだよね。
日本でも軍隊などでまずパン食が導入され、それを家庭に持ち帰って広まっていく、という流れがあるので、一番なじみがあるパンだったはずなのだ。
(すでに木村屋のあんパンなんかはあるけど、食事用ではないからね。)

食べ方としては、ほぼ直方体のパンをスライスして食べるわけだけど、多くの場合は焼いて焦げ目をつけてトーストにされるのだ。
お米もそうだけど、やはりあたたかい方が柔らかくておいしい、というのがあるんだよね。
これは中に含まれるデンプンの構造的変化によるものなのだ。
デンプンは熱を加えられると糊化(アルファ化)されて、もっちりとやわらかい食感になるんだけど、時間的変化で老化(ベータ化)していって、硬くなってくるのだ。
冷や飯が硬くなるのはこのためで、これを再び柔らかくするためには、蒸して「炊き直し」をしたり、温かい汁や茶をかけて「汁かけ飯(ねこまんま)」や「茶漬け」にしたり、さらには、汁で煮て「雑炊」にしたりするのだ。
今では炊飯器に保温機能があるのでこういうことはしないけど、昔は釜で炊いた後はおひつで保存していて、通常は朝食時に炊飯したものを夕食でも食べるので、夜は冷たいごはんだったのだ。

パンの場合は、普通の家にはパン窯などないので、パンを焼くのはもっと低い頻度。
大きなパンを焼いて少しずつ切り分けて食べる必要があって、中世のようなまだ商業流通が発達していない時代にはパン屋で買うこともできないので、地元の領主や修道院が持っているパン窯を借りて一度に多くのパンを焼き、それを少しずつ食べていったようなのだ。
すると、その時間の経ったパンをおいしく食べるための工夫も出てくるよね。
お米ほどじゃないにしても、パンも時間が経つとデンプンが硬くなるので、温めて柔らかくするのだ。
で、単純に言えば、暖炉などで焼くわけで、これがおそらくトーストの始まり。

でも、パンを温める上で重要な点は、パンが硬くなる最大の原因は水分の減少だということ。
焼きたてのパンがやわらかいのはそれだけ水分が多いからで、冷める過程で徐々に水分が失われて硬くなり、つにはかちかちになってしまうのだ・・・。
ごはんもかぴかぴになるけど、もともと水分を多量に含んでいるので、それよりもデンプンの老化で硬くなる方が問題なのだ。
パンは焼成の過程で水分を飛ばすので、デンプンよりも含有水分量が問題になるよ。
なので、パン屋さんで作るパンは、ギリギリまで多くの水分が残るように、ものすごくやわらかい生地を焼き上げているのだ。
過程で作るパンがすぐに硬くなる理由は、生地がまとまりやすくなるように水分が少なめのレシピになっているからだとか。

なので、パンを温めるときは水分量に気をつける必要があるのだ。
日本はもともと湿度が高いので、そこまで気にせずとも、英国式のカリカリに焼いたトーストを食べるのであれば問題はないのだけど、厚みのある、ふっくらしたトーストが食べたい場合は、水分量がキーになるよ。
もちろん、食パンのみならず、他のパンを温めるときも同じなのだ。
普通にオーブントースターで温めると水分が飛んでいくだけなので、ちょっと時間のたったパンはふっくらとはしないよね。
なら、電子レンジでいいかというと、これも難しくて、パンから出る水分で表面がべちゃべちゃになったり、水分が飛びすぎて芯まで硬くなったりするのだ。
重要な点は、湿度を保ちつつ加熱することなんだよね。

ガスや薪のオーブンの場合は、燃料が燃焼するときに同時に水蒸気も出てくるので、そのまま焼いてもOK。
オーブンに数十秒入れて温めると、表面がからっとして、中はふわっと温まるのだ。
欧米のように湿度が低い、乾燥した気候の場合は、水で濡らしたガーゼで包んで温めることもあるみたい。
日本の場合は湿度も高いので、アルミホイルに包んでオーブントースターでじっくり温めると、パンから出てくる水蒸気に囲まれて温められるので、比較的ふっくらするのだ。
電子レンジで温めたい場合は、そのままラップで包んで温めるとべちゃべちゃになる可能性が高いので、深い器に入れて、そこにラップをかけたりするとよいのだ。

すでにかちこちに硬くなって理待っている場合は、表面をさっと水でぬらし、アルミホイルに包んでオーブントースターで温めるといいよ。
ガス式オーブンがあるなら、濡れガーゼでくるんでオーブンで温めるとなおよいのだ。
硬いからといって蒸してしまうとさすがにしわしわになるので注意。
中華まんとは違うのだ。

ちなみに、ヘルシオのようなスチームレンジがあれば、そのまま温めればいいんだよね。
最近は高性能のトースターもあって、焼く前に水を補給して、中で水蒸気を出しつつ、サーモスタットで温度管理しながら焼き上げてくれるものもあるのだ。
これで焼くと相当おいしいらしいけど、値段も値段なので、どこまでパンに愛着を持つかによるね。
ごはんが好きな人は高い炊飯器を買うから、それと同じことだけど。

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