2016/01/23

賢く計量

テレビのCMでも電力全面自由化の話が出てきているのだ。
これまでは大口の電気の使用者(電力会社の言う「需要家」)だけが電気の供給事業者を選べたんだけど、4月からは全消費者が選べるようになるんだよね。
で、すでに東京ガスやソフトバンクのようなインフラ系事業者が名乗りを上げているし、なぜかHISのような会社も事業を検討しているのだ。
選択肢がいきなり増えるわけだけど、セット割りとか各社のメニューを比較して賢く選びたいものなのだ。

この電力自由化に当たって必要となるのがスマートメーターという計量器。
これまで一般家庭の場合は、積算計というメーターが使われていて、これは検針日から次の検針日までの間に電力量を送料としてどれだけ使ったか、だけを計量する機械。
円盤がぐるぐる回っているやつだよ。
刑事ドラマとかで、「居留守を使っていても電気のメーターが回っているから中にいるはずだ!」みたいな感じで出てくるよね(笑)
でも、電気の供給事業者を電力会社から変更する場合、このままではまずいのだ。

なぜかというと、電気は使う分だけ常に発電しなくちゃいけない「瞬間消費財」だから。
複数の電気の供給事業者があった場合、ある時点でどの事業者の消費者がどれだけ電気を使っているのかをひもつけておかないと、その時点で必要な発電量がわからないのだ・・・。
これを「同時同量」という言うんだけど、電気の供給量と消費量に差が生じると、電圧が低下したりして、停電に陥るんだよね。
日本の場合、発電所のある地域と、電力の巨大消費地が偏在していて、それを結びネットワーク(送配電網)も太い幹から枝分かれしているような構造なので、少しのずれでもネットワークが落ちやすいのだ。

米国なんかの場合は、日本の10倍の広さの土地に2~3倍の人口しかいないわけで、ニューヨークのような例外を除くと基本的には全地域がそこそこ「田舎」なんだよね。
なので、それを結ぶネットワークはそれこそ蜘蛛の巣状に張り巡らされていて、ある地域で多少ずれが生じても、ネットワーク全体でその影響を吸収できる、丈夫な構造になっているんだよね。
日本の場合、基幹線に近いところでずれが生じるとその影響は全体で吸収できないので、より厳格に同時同量が必要と言われているよ。
実際、各電力会社管内には「中央給電指令所」というのがあって、ネットワーク全体の電力の消費動向をリアルタイムで把握して、どの発電所を動かしてバランスを保つのか、という運用をしているのだ。

携帯電話のように、複数のキャリアがインフラを整備できればまた別だけど、電力ネットワークを別の事業者が新たに作ることは想定されないので、基本的には既存の電力会社のネットワークを使わせてもらうんだよね。
なので、新規事業者は、発電と電力供給をセットで行うことになるのだ。
それで、各消費地点でどれだけ電気が使われているか把握し、その量に見合う発電をする必要が出てくるのだ。
米国の場合は、発電と電力供給が切れていて、消費量に合わせて発電事業者から電気を卸で買ってくる仕組みなんだけど、その場合も、電力の使用状況で卸電力の価格が変わるので、どのみち最終消費地点での使用量をモニターしているのだ。
これまでは電力会社だけが供給していたので、系統全体でどれだけ使っているかを見るというどんぶり勘定で足りたんだけど、複数の電力供給事業者が出てくるとそうもいかないというわけ。

で、一般家庭でも、4月以降に電力会社以外の事業者から電気を買う場合、或いは、電力会社から買うけど、深夜電力メニューなど多様なメニューの中から自分の消費傾向にあったメニューで電気を買う場合は、順次スマートメーターに交換されていくのだ。
日本の場合、ほぼ全国に光回線が敷設されているので、30分とか1時間ごとにどれだけ電気を使ったかを計量器からデータを送ることになるよ。
原理的にはほぼリアルタイムでもできるわけだけど、そうなるとあまりにも情報量が多すぎるので、その単位時間内の誤差は一番多くの消費を抱える電力会社が「帳尻合わせ」をするんだよね。
この調整に必要なコストは、ネットワークの使用量に上乗せなので、電力供給事業者全体で負担することになっているのだ。

スマートメーターになると、どの季節のどの時間にどういう電気の使い方をしているのかがわかるわけ。
今でも東京電力は「電気家計簿」といって、月ごとの消費動向をまとめて教えてくれるサービスがあるんだけど、これがさらに30分ないし1時間ごとの単位でわかるのだ。
そうすると、夏冬に多く消費して春秋は少ないというざっくりとした傾向だけじゃなく、昼間は家に居ないから少ないけど、夕方から夜にかけて家に帰ってくると一気に増える、朝起きるくらいの時間に増える、などの傾向がわかってくるのだ。
で、今度はそれに合わせて料金メニューが選べるようになるんだよね。
電力全体でいうと、昼間に消費のピークがあるので、昼の消費量を減らして、夜の消費量を増やすと、発電量を大きく増減しなくてすむというメリットがあるので、深夜電力は安いんだよね。
なので、平日昼間は家に誰もいない家庭なら、昼間は電力単価が高いけど、夜はその分安くなるというメニューを選ぶとよいのだ。
そういうのが携帯電話のメニューと同様にたくさん出てくるわけ。

正直、そういうのにあまりコストをかけたくない人には面倒なだけだけど、考えて工夫すればかなりお得になるはずなのだ。
とか言いながら、実際に我が家はどうしようかまだ迷っているんだけど(笑)
おそらく、最初はガスや携帯キャリアのセット割りが増えるんだろうなぁ。
そのうち、太陽光発電の自家発電と組み合わせて、とか、いろいろと出てくると思うけど。

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