2016/01/30

なぞの単位

米国に留学していたとき、スーパーでは牛乳が「ガロン」単位で売られていたのだ。
ハーフ・ガロンとか、クォーター・ガロンとか。
イメージとしては、ハーフ・ガロンだと1升、クォーター・ガロンだと1Lという感覚(笑)
日本だと、ニュースで原油価格の話題になったときくらいにしか聞かない単位だから、正直よくわからないよね。
でも、いまだに米英では広く使われているのだ!

計量の単位というのは古来から重視されていて、世界史でも「度量衡の統一」というのは一つの大きな出来事として紹介されるよね。
古代ローマの広大な帝国支配しかり、秦の始皇帝の中央集権体制の確立しかり。
地域の狭いコミュニティの中で物々交換とかしかしないのであればさほど問題は生じないんだけど、広域に物資を流通させたり、広いエリアを統一の基準で統治したりするのには、その域内の人々が同じ単位で計量することが重要なのだ。
「○○をどれだけ」と言ってもお互いに通じないから、取引ができないし、租税も徴収できないのだ。

大航海時代以降、世界中がつながって、国際的な流通が始まるわけだけど、こうなると、一国ではなく、国際的な単位の統一が必要になってくるんだよね。
そういう流れの中で出てきたのが「メートル法」。
これまで各地域で伝統的に使われていたものとは一線を画し、当時の最先端の科学的知識をもとに設定されたのだ。
これは地球の円周の1/4を1万kmとした単位。
実際には地球は球体ではなく、ちょっとひしゃげているので、現在では光が規程単位時間に進む距離と再定義されているよ。

これは初めてして、現在では国際単位系が基本的には「MKS」単位(メートル・キログラム・秒)で統一されつつあるんだけど、メートル法を採用しない国もあるわけで。
かく言う我が国も、伝統的な尺貫法がずっと使われてきて、メートル法に完全移行したのは戦後なんだよね。
(と言いつつ、今でも家屋とか家具とかは尺貫法をベースにした寸法になっているけど。)
で、いまだに採用をしていないのが英国。
メートル法の発祥が仏国だというのが気に入らないのかもしれないけど、独自にポンド・ヤード法を貫いているのだ。
そもそもEU加盟国でありながらユーロを通貨として導入していないしね。

でも、もっとたちが悪い国もあるのだ・・・。
それが米国。
法律上はメートル法を採用していることになっていて、伝統的なポンド・ヤード法は「慣例的単位」ということで仕様が認められているんだけど、実際にはほとんどの場合においてポンド・ヤード法が使われているのだ。
ステーキの重量はポンドかオンス表示だし、液量の表示はガロンやバレルだし。
自動車の速度計もマイル毎時だよね。
気温も摂氏ではなく華氏で表示するので、日本人からするとあたたかいのか、寒いのかもよくわからないのだ。
(科学分野では絶対温度を使う関係もあって、華氏より摂氏を好むんだけどね。)

さらに、もっとめんどうなのが、英米では微妙にポンド・ヤードの単位がずれていること。
英国では160液量オンスで1ガロンだけど、米国では128液量オンスで1ガロン。
それぞれ4.546Lと3.785Lで、1L近くずれているのだ・・・。
日本国内では、計量法という法律に従って、原則としてメートル法標記をしないといけないんだけど、米国と取引をする関係で、米国ガロンは石油取引などで例外的に認められているのだ。
っていうか、大国である米国と取引するため、日本以外の国もある程度は米国の単位系を受け入れざるを得ないんだよね(>o<)
まったく迷惑な話だけど。
しかも、法律上はメートル法が正式になっているのに!

「ガロン」という単位は、ラテン語でバケツを意味する「gallet」から来ているようなんだけど、英米語特有のバケツ一杯分の水とかそういうイメージなのだ。
なので、バケツのサイズが異なれば単位がずれるのも当たり前と言うこと。
すでにいろんな計量単位がガロンと呼ばれていて、現在ではだいたい三種類に集約されているんだって。
ひとつは英国式ガロン。
後の二つは米国式で、液体の単位である米国式液量ガロンと、穀物なんかの固体を計量する単位である米国式官僚ガロンがあるのだ。
いやあ、ややこしい・・・。

科学の世界ではすでにMKS単位系に統一されているので、実社会でも徐々に変えていけるはずなんだけどね・・・。
っていうか、中学とか高校の理科ではどういう教育をしているのか気になるよ。
英国の場合は、それはそれ、これはこれで、これこそが英国の伝統だ!、と教えてそうだけど(笑)

0 件のコメント: