2016/07/09

ホロホロでトロトロ

外食でビーフシチューや豚の角煮、チキンカレーなんかを食べると、ものっすごい柔らかく煮込まれているものがあるよね。
箸でほぐれます、みたいな。
自宅でやろうと思っても、なかなかそこまではいかないのだ・・・。
圧力鍋とかを使えば別なのかもしれないけど。
とにかく、じっくりと熱をかけているみたいなんだよね。

どうやったら肉がそこまで軟らかくなるのか?
原理としては簡単なようなのだ。
それが、肉の中にあるコラーゲンがゼラチン化するとやわらかくなる、というもの!
それだけ。
あのぷるっぷるで、お肌つやっつやのコラーゲンですよ。
それが煮汁に溶け出すくらいになれば、もとの肉はホロホロというわけ。

動物の肉は筋肉と脂肪なのだ。
ここに骨や皮、腱(スジ)なんかがついているわけ。
で、肉を加熱すると、まず固体状だった脂肪が融けるんだよね。
牛肉だったらヘット、豚肉だったらラード、鶏肉だったら鶏油(ちーゆ)だね。
そうすると、脂肪が詰まっていたところに隙間ができるので、その分だけ肉がやわらかくなるのだ。
これは薄肉をしゃぶしゃぶしたり、牛肉を炙ってたたきにしたりしたときの変化だよ。
ねちょっとした生肉の食感ががらっと変わるのだ。

でも、さらに強く加熱すると、筋肉の主要な構成タンパク質であるアクチンとかミオシンが熱変性して、固まるのだ。
この変化では、生肉独特の粘りがなくなって、ぷつっと切れるようになるのだ。
タンパク質の高次構造においても、まわりにたくさん水分があるような状態から、がちっと筋肉繊維が収縮して水分が追い出されて、固まる感じになるよ。

このままだと固いだけなんだけど、コラーゲンを多く含む場合は変わってくるのだ。
コラーゲンの場合は、熱による変化でより水分を集めるようになって、軟化するのだ。
ぞれがゼラチン。
コラーゲンは繊維状のタンパク質が3本よられている構造をとっているんだけど、熱がかかるとこれがまずほぐれるのだ。
さらにそこに水分がまとわりついてきて、ゼリー状になるんだよね。
これが煮汁の中に溶け出すんだけど、コラーゲンはもともと接着剤のように筋肉繊維を結びつけているものなので、これがなくなると筋肉繊維自体がほぐれるのだ。
この溶け出したコラーゲンが肉を煮たときのとろみで、冷やすと固まって「煮こごり」になるのだ。
煮こごりをきれいに精製して取り出したのがゼラチンで、その主要成分がコラーゲンになっているのだ。

コラーゲンは軽く火を通しただけでは少し固くなるんだけど、さらにじっくりと熱をかけると、徐々に解きほぐされてやわらかくなるのだ。
温度で言うと、65度くらいで少し収縮して固くなって、80度前後でほぐれて軟化するようなのだ。
つまり、沸騰手前くらいの熱をずっとかけ続けると、ほぐれていくわけ。
そして、完全にほぐれると、液中に溶け出していくわけ。
この解きほぐすのに時間がかかるので、じっくりと煮る必要があるんだ。
ちなみに、ステーキなんかは、肉の中心がまだ赤いけど、あれは脂肪が溶け出して、アクチンとミオシンが少し熱変性して食感が変わるギリギリくらいの熱の通し方。
これがやはり中心温度で65度くらいなので、コラーゲンが溶け出すことはなく、肉がばらばらになるようなことにはならないのだ。

たいていどんな肉でもコラーゲンは含まれているんだけど、牛のスネやテール、豚の豚足や皮下のバラ肉、鶏の手羽先や皮なんかには特に多く含まれていて、これらはじっくりと煮てやると柔らかくなって、とろみが出てくるよ。
ちょっと前は、こういうコラーゲンを食べるとお肌がつやつやなんてもてはやされたけど、コラーゲンは食事として摂取した場合、しっかりと胃腸で消化・分解され、アミノ酸として吸収されるので、ただの「良質なタンパク質」でしかないのだ(>o<)
肌に直接塗るならまだしも、食べてもすぐに美肌になるわけではないよ。
もちろん、皮膚の上から塗ってもそんなに浸透しないので、気休めレベルなんだけど・・・。
というわけなので、おいしいから食べる、ということでよいのだ(笑)

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